同作には、東大安田講堂事件が発生した1969年1月からわずか4か月後の5月、学生運動の真っ只中にある東大駒場キャンパスに呼び出された三島由紀夫さんが、1000人を超える学生たちを相手に討論を行った様が収められている。
三島由紀夫さんの没後50年に紐解かれる真実
TBSが保有する三島由紀夫さんと東大生たちの討論の映像を中心に、三島由紀夫さんの後継者とも言われる作家・平野啓一郎さんや内田樹さん、小熊英二さんら文化人たちが当時の状況を分析。
さらに、当日その場に立ち会った元東大全共闘メンバーや元楯の会メンバーたちへのインタビューを通して、討論の裏側が紐解かれていく。
三島フリークの編集長も納得のドキュメンタリー
実は、KAI-YOU Premium編集長の新見も、三島由紀夫さんの最期の地となった駐屯地に一番近いという理由で進学先を決めたほど「三島由紀夫」という人物に思い入れのある1人だ。そういった理由もあり、新見が書いているKAI-YOU公式メルマガには時折三島由紀夫さんのことが登場する。
そしてもちろん、『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』も自粛前最後に観た映画として登場している。 本作を「三島由紀夫を知らない人でも十分すぎるほどスリリングな『当代最高峰の知の応酬』がそこに収められていて、その背景を解説してくれるコメンテーターたちの話も上手く挿入されていて、監督の腕だなーと思った。」と評した新見。
彼は、本作について以下のように綴っている。
奇しくも公開後に新型コロナウイルスの流行や緊急事態宣言の発令があり、気になりつつも見ることができなかった人も多いであろう本作。このドキュメンタリーが浮き彫りにした、2020年に公開される意味性をもっとも強く放っているのは、まさしくその、時の流れ、にある。
三島は死に、当時、東大全共闘との討論の場に潜伏していた楯の会の森田必勝も、三島の切腹を介錯した後に自害した。そして全共闘の面々は、50年後の姿でカメラの前に立っている。
~(中略)~
奇しくも、時の流れを否定した彼らが今もなおその生を生き、時の流れ、歴史の重要さを説いた三島が今はもういない。これはまったくもって皮肉などではなく、その事実をどう受け止めるべきかを考えていきたい。
~(中略)~
元全共闘のメンバーには、現在、老いてなお舌鋒鋭い御仁もいれば、いかにも好好爺になってるメンバーの姿もあった。しかし、全共闘運動は敗北したのかという問いかけに、人の良いおじいちゃんの目の奥に、一瞬の火が宿るのを見逃さないでほしい。
三島フリークも唸らせた貴重な記録を、是非一度見てみてはいかがだろうか。
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