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Novel Core インタビュー 敗戦で知った、ヒップホップが歌う「リアル」の本質

誰も並ばない物販 世間は虚勢を張っていた自分を見抜いていた

第12回「BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」優勝時

──路上でスキルを磨きつつ参加した第11回「高校生RAP選手権」では、初出場で準優勝という成績をおさめましたよね。

Novel Core 今思えば十分すごいことだと思いますけど、当時は本当に悔しかったですよ。噂されていたけど、実際にあの時点ですでにZeebraさんの事務所に所属することが決まっていたんです。

リリースするための曲も用意していたので、「なんとしても優勝を獲って帰らなきゃ」と思っていたから。決勝戦で延長の末に負けてしまい、ZeebraさんにLINEしたときは目がうるうるでしたもん。

──そして、リベンジとなった第12回では優勝をおさめたと。

Novel Core 第11回が終わった時点で、9forくんみたいな先輩達も卒業して、自分も成長していたし、「次の年は獲れる」とは確信していました。でも実際に優勝が決まったときは安心しました。成績を何も残せていない、リリースもしていないという状況で、Zeebraさんに声をかけていただいていたので、プレッシャーはすごかったです。

「俺を拾ったのは間違いじゃなかったよ」って、結果で示せたと思っています。

──ここまでは紆余曲折ながらも順調に活動してきた感じがしますが、優勝してからが一番大変だったそうですね。

Novel Core あのときほど、世間がすべて敵に見えた時期はないです。バトルに出ても、お客さんが全く沸かないんですよ。今までと同じようにラップをして、今までと同じように落ちまで綺麗に決めているのに。

それどころか、物販のときも俺の前だけ列ができなくて。真横にいるMU-TONさんや裂固君のブースでは飛ぶようにグッズが売れていくし、「写真撮ってください」って人が集まってくる。僕の前だけ不自然に空いているんです。本当に露骨に嫌われていました

街中ですれ違っても、「うわ、Core-Boy(かつてのアーティスト名)だ!」みたいな。通りすぎたあとに、(「フリースタイルダンジョン」で対戦した際の)裂固君のラインを引用して「頭いいと思われたいだけのマセガキやん」って吐き捨てられたこともありました

──それは、きつい…。

Novel Core そういうことがしょっちゅうあって、人を信じられなくなったし、人と向き合うのが怖くなっちゃって。

でも今なら、それも自分の弱さが原因だったとも思えるんですけどね。

──その“弱さ”というのは、そういった状況に屈してしまったことですか。

Novel Core 違います。「誰にも隙を見せるまい」と取りつくろっていたんです。あの頃は弱い本当の自分を認めて、勇気を出して「強がっていました、ごめんなさい」って周囲に謝ることができなかったんですよ。

世間からの辛辣な反応は、虚勢を張っていた自分の発言や態度への跳ね返りだと気づいてはいたんです。でも「どうせステージやSNSで見えている部分だけで判断してるだけだ」と開き直っていたところがあって。強がりな性格が生意気に映っていたことが悔しかったんですよね。

──2018年2月からの活動休止期間も、世間からの風当たりが原因だったんですか。

Novel Core それだけではないけれど、全体的にフラストレーションが溜まっていて、精神的に不安定すぎました。制作をしても納得したものがつくれないし、事務所内でも自分のやりたいことを思うように実現できない。

理想が高すぎたのもあって、自分でつくったハードルを越えられない自分にむしゃくしゃしていたんです。

──わかりやすい部分では、Twitterもツイートを全部消去したり、アカウントをつくりなおしたりしていましたよね。

Novel Core あの頃はアカウントやツイートを消せば、過去の発言やイメージを払拭できると思っていたんです。でも、あるとき「やってきたことは変えられないし、自分は自分だ」って気づいた。ちゃんと自分と向き合おうと、切り替えました。

MOGURAとの敗戦を経て気づいた”リアル”の本質

──何がきっかけで「自分と向き合おう」と決意したんですか。

Novel Core カムバック出場した第15回「高校生RAP選手権」で、「人って温かいんだ」って思い出せたんです。

正直、会場ではアウェイでした。久々の出場だったから、「かましてくれるかな」と期待してくれている人も沢山いたけれど、それに比例する形で「Novel Coreがボコボコにされるところを見たいよね」って空気のほうが強くて(笑)。

2回戦目でMOGURA君と当たったときなんて、彼が一言言うたびにオーディエンスがぶちあがるんですよ。「それそれ~! 俺らが思っていたこと!」みたいに。MOGURA君のラップの内容よりも、そういう会場の空気感とか反応がこたえてしまって、勝負は完全にボロ負けしてしまった。

第15回「BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」Novel Core vs MOGURA は大会のベストバウトとなった

Novel Core 最悪の気分だったんですが、判定後には、お客さんたちが「おつかれさま!」って温かい拍手を送ってくださったんです。それを聞いたら「今までなんのために強がっていたんだろう」と急に涙が止まらなくなってしまって──ステージを降りたあとも裏でずっと泣いていました。

その日、家に帰ってから母親に「自分との向き合いかたを変えようと思う」って話をしました。最初は世間も受け入れてくれないかもしれないけど、ありのままの自分を受け入れてもっと等身大に生きてみるって。そうじゃないと、音楽を続けていけなくなる気がしたから。

──それまでつくり上げていたイメージを捨てて、素の自分をさらけ出すことは大変な、勇気のいることだと思います。恐怖や抵抗感はありませんでしたか。

Novel Core 「ない」と言えば、嘘になるかもしれません。でも、虚勢で固められた偽りの自分を守りぬくよりも、ありのままの自分でいるほうが俺にとっては大切でした。

等身大で生きられるようになると心が開放されてポジティブになるし、周りにいる人たちとのコミュニケーションも自然とスムーズになっていく。

時には全部を捨てて「ごめんなさい」することが超大事だって、今ならわかる。

──それはヒップホップでいうところの“リアル”に繋がる考え方でもありますよね。

Novel Core まさしく、そうなんですよ! 以前の僕は「かっこよくあること」や「SWAGを纏うこと」が、ヒップホップの“リアル”だと勘違いしてしまっていた。でも、それは違うんですよね。

ラッパーにとって本当に大切なのは「ヒップホップらしい“リアル”を纏うこと」ではなく、「“リアル”な自分でいること」

例えば、BAD HOPの皆さんがあんなに格好良い理由は、劣悪な環境下でのエピソードを並べているからではなくて、そういった境遇や、人生を生きてきた中で、自分たちが何を得てきたのかが"リアル"にラップされているからだと思うんです。

俺は「俺のリアル」を歌っていく──生まれや境遇は特別めずらしいモノではないし、家族の仲だって良い。けれど、それでも皆と同じように悩んで苦しんで、そして本気で死にたくなった時期もあった。それがNovel Coreのリアルだし、その人生から得て学んだことを音楽にしていくのが、俺にとっては1番ヒップホップなんです

チームで戦って、チームで笑うために

──考え方の変化は、歌詞にも影響ありましたか。

Novel Core ずいぶん変わったと思います。外から見ると抽象的になったんじゃないかな…。以前は自分に対して降り積もるラブやヘイトに、1つ1つリプライを返すくらいのテンションでいましたけど、今は自分と対話するなかで感じたことを大枠で表現するようになりました。

共感を狙ってつくったわけではないけど、以前にも増して自分にとっての”リアル”を表現しているからこそ、結果的に共感してくれる方が増えた気がします。
Novel Core / SOBER ROCK (Prod. SOURCEKEY)
──最後に、2021年の抱負を教えてください。

Novel Core これは決まっていて。「チームで戦ってチームで笑う」で。

最近になって、なんでもかんでも一人でできるからといって、すごいわけじゃないと思うようになったんです。自主制作で『WCMTW』をリリースしたことにより、改めてたくさんの人に支えられてきたんだと実感したというか──実際に1からやってみて、想像していたものが形にならない悔しさも経験したし、関わってくださる方々の一人一人に人生があると気づけた。だからこそ、これからはチームみんなで笑っていきたいんです。

──それは、セルフプロデュースをやめてチームとしてNovel Coreをつくっていくということでしょうか。

Novel Core いや、セルフプロデュース自体は、今後も大事にしていきます。俺にしか見えない俺自身は絶対にあるし、「こうありたい」という自分の軸は絶対にあったほうがいい。

そして何より、"俺のファンの事は俺が一番知っていなきゃいけない”と思うから。

性別やら年齢やら彼らが他によく聴くアーティストやらから傾向を分析して、ファンをグラフ化する事は簡単です。でも、ファンっていうのはそんな薄っぺらいもので括れるものじゃない。

ファンレターは勿論、DMも全て読んで、イベント後に出待ちで並んでくれた数千人全員と写真を撮って、街中で声をかけてくれた子と他愛もない話をして盛り上がって…。そうやって直接彼らの目を見て向き合ってきた俺にしか、 "彼らがどんな人達なのか" は分からない。
Interview: Novel Core 蕎麦屋からGM、そしてSKY-HI新事務所へ
Novel Core どんなに実績のあるベテランのスタッフさん達でも、俺のファンの事を俺より知っている人は絶対にいないですから。ファンの存在を蔑ろにしたくないので、俺が俺自身をプロデュースしなきゃいけない瞬間は必ずあるんです。

一方で僕の視点しかないと、主観だけになってしまい、伝えたいことが結果的に上手く伝わらない事があるのも事実。プロデュースって「こうありたいけど、それは人からどう映っているんだろう」と考えることだと思うんです。それには、スタッフさんたちの視点は必要不可欠だから。世間の需要に合わせて無理をしたり、ファンに媚びたり、間違ったプロデュースをしないためにも、チームとしての意見は尊重していきたいんです。

僕のチームは最強なんで! 全員が最高な人ばかりで、アベンジャーズみたいな感じなんです。こんなに幸せで大丈夫なのかなって本気で思えるくらい、素晴らしいチームです。2021年はたくさんワクワクを届けます!

「SOBER ROCK -Remix- feat. SKY-HI」を聴く

活況を呈すヒップホップシーンと新たな才能たち

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