第7世代とともに、新しい笑いをつくる YouTube放送作家 白武ときお

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第7世代とともに、新しい笑いをつくる YouTube放送作家 白武ときお
第7世代とともに、新しい笑いをつくる YouTube放送作家 白武ときお

YouTube放送作家 白武ときおさんインタビュー

POPなポイントを3行で

  • YouTube放送作家 白武ときお
  • 『ガキ使』の最年少作家
  • 第7世代とYouTubeでつくる新しい笑い
自身初の著書『YouTube放送作家 お笑い第7世代の仕掛け術』(扶桑社)を刊行し、話題を集める放送作家の白武ときお

テレビ番組の放送作家として錚々たる番組に参加しつつ、霜降り明星かが屋Aマッソラランド、また静岡朝日テレビのYouTubeチャンネル「SunSetTV」(現:「LOOK」)など、お笑いファンから注目を集めるYouTubeチャンネルの多くに携わり、注目を集めている。 現在進行系でお笑い第7世代芸人と呼ばれる若手芸人たちとともに笑いをつくっている白武が感じる、映像コンテンツのこれまでとこれからについて話を訊いた。

取材・構成:ヒラギノ游ゴ 構成補助:赤井大祐 撮影:加藤岳 編集:和田拓也

”YouTube放送作家”の仕事

──放送作家というのは、番組制作に置いてどのような役割を果たすものなんでしょうか?

白武 ざっくりとですが、企画を考え、企画書に起こして、企画が採用されたら台本を書く、といった感じです。担当の番組や個々の放送作家の能力によっても変わってきます。言っちゃえばテレビをおもしろくする作業だったら何でもですね。

僕も番組によってはネタ案や企画案を出すだけのときもあるし、ナレーションの台本や再現VTRのコンテを書くこともあります。

──白武さんは放送作家として、テレビだけでなくYouTubeの世界にも早い段階から参入されています。

白武 そうですね、YouTubeに動画をアップすること自体は2012年からやっていたんですが、それは当時手伝っていた芸人が出演するライブの幕間に流す映像で、YouTubeで広く視聴されることを狙った動画ではありませんでした。当時YouTuberという概念もまだ浸透してなかったですね。

YouTube作家としては、2014年に設立された、静岡朝日テレビが運営するYouTubeチャンネル「SunSetTV」(現:「LOOK」)の立ち上げに参加したのが大きかったです。このチャンネルで僕は『Aマッソのゲラニチョビ』『霜降り明星のパパユパユパユ』などの番組を立ち上げました。
#2【Aマッソのゲラニチョビ】 「ニックネーム」
──こうした地方局の動きはおもしろいですよね。

白武 お笑いファンが「地方局が運営するYouTubeチャンネルがおもしろい」と注目し始めてから、常におもしろい番組を公開し続けていますね。

ほかには中京テレビもですね。オドぜひ(『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』)や『太田上田』といった番組をYouTubeでも配信しています。特にオドぜひはYouTube用に内容を細切れにして観やすいサイズに編集されています。
春日が嫌いな5歳児
白武 いまYouTubeを熱心に見ている若い世代は、YouTubeのテンポ感や文法が染み付いているので、動画をテレビっぽくつくられると「全然わかってないな」って冷めちゃうんですよね。その辺の感覚は僕より年上の人だとなかなかわからなかったりもするので、テレビとYouTubeの交差点に立ってる人間として、アドバイスをする役割でお声がけしてもらえることも最近は多くなってきました。

──YouTuberが話題になり始めた当初は、いわゆる”芸能人”と比べ下に見られていた印象がありますが、ここ数年で情勢がかなり変わってきた印象があります。

白武 2017年にヒカルさんが公開した、テキ屋のクジを買い占めて本当に当たりが入ってるのかを検証する、という動画はひとつの大きな契機になっていると思います。テレビ業界の人間からすると「ここまでやっていいのか」という感じでけっこう衝撃を受けたんじゃないかと思います。
当たりはなかった?祭りくじで悪事を働く一部始終をban覚悟で完全公開します
白武 もちろん、それ以前からYouTubeの存在感は世間に少しずつ広まっていったと思います。2014年の「好きなことで、生きていく」キャンペーンなどですね。あの時点ではテレビの人たちは全然取り合ってませんでしたが、その後HIKAKINさんが積極的にテレビに出るなどしたことで、徐々に認知を上げていった。

それと、そのころから徐々にテレビ業界もターゲットの指標が変化しはじめたんですよ。ターゲットを世帯から個人に移して、もっと消費が活発な若いひとにテレビを観てもらった方がビジネス的にいいよね、という認識に移り変わったんです。それがいい具合にYouTubeの隆盛とマッチしたところはあるかもしれません。

──HIKAKINさんも当初はテレビに出る必要性を感じていなかったけれど、YouTuberの地位向上のためにも積極的にテレビに出ていくようになった、といったことを話されていました。

白武 YouTuberがなめられなくなったいまの状況は、HIKAKINさんをはじめとした第1世代のYouTuberの皆さんが先陣きって切り開いていったからですよね。僕個人としても、はじめしゃちょーさんと一緒に番組をつくったこともあるのですが、歳の近いかたがたが世界を変えていく姿を見てわくわくしていました。

霜降り明星、かが屋 第7世代の強さ

──ここからは、関わりのあるYouTubeチャンネルについて伺っていきます。まずは霜降り明星の「しもふりチューブ」ですが、どのような経緯ではじまったのでしょうか?

白武 『霜降り明星のパパユパユパユ』の好評を受けて静岡朝日放送で『霜降り明星のあてみなげ』という冠番組が始まり、そのロケバスの中で2人に「YouTubeチャンネルをやってみませんか」と提案したのがきっかけです。

僕はテレビでいうと総合演出の立ち位置で、企画案と現場でのディレクションを担当して、編集作業は別の人にやってもらっているんですが、上がってきた映像やサムネ、タイトルのチェックもしていて、入り口から出口までの作業をチェックしています。

YouTubeって出演者のテンションがすごく伝わりやすいと思うんですよ。自分の好きなことをやっていい場所だからこそ、嘘がすぐバレる。なので、2人が熱量を持って話せるネタを優先して撮影していってます。
【突撃】せいや宅押しかけたら何の料理ふるまってくれるのか?【霜降り明星】
白武 とはいえ、霜降りの2人は喋っているうちになんでもおもしろくしてしまう人たちなので、さすがだなと感じています。話のテンポもいいので、YouTubeでよくある、話の間を切って繋ぐジャンプカットが必要ない。

──たしかに、しもふりチューブにはジャンプカットがないですね。

白武 あと、2人は興味の引き出しがほとんどかぶらないのに、“何をおもしろいと思うか”の感覚を共有しているのがすごい。

粗品さんはいまどきのネットカルチャーで育ってきた人で、ニコニコ動画を観るだけでなく、自作のボーカロイド曲をアップされています。

一方でせいやさんはちょっとレトロな趣味というか。アグネス・チャンさんをはじめとした昭和の歌謡曲が好きで、ものまねのレパートリーも武田鉄矢さんや桑田佳祐さんなど、ちょっと上の世代のものが中心です。

守備範囲がまったく違う2人だけど、お笑いの感覚は共有している。だから、それぞれ片方の引き出しにしかないニッチな話題でも、2人で一緒におもしろくできるんです。

──しもふりチューブで「1日に30本分の動画を撮る」という企画をやられていましたね。

白武 あれは去年の11月頃、あまりにスケジュールが忙しいので、じゃあ1日で30本撮ってみようということでやったものです。
でも「1日30本で撮ろう」っていって「やりましょう」って普通なかなかいえないじゃないですか。そこで乗ってくれる、そして実際やりきれてしまう。そういうお笑いにかける「やったるぞ」という気合いが彼らの何よりの武器だと思います。
【振り返り】粗品の激アツ1人語りを聞いたせいやの感想は!?オフロケ30本アフタートーク【霜降り明星】
──かが屋についてはいかがでしょうか。

白武 そうですね、僕がいままでお仕事をさせていただいてきた上の世代の芸人さんに見られるようなギラギラした部分、「芸人は女性にモテてなんぼ」みたいなところが彼らにはまったくないんですよ。

僕もそうですが、かが屋の2人は相当な量のコントDVDを観て育ってきています。バナナマンさんの全作品をはじめとして、ラーメンズ・バナナマン・おぎやはぎの『君の席』なんかのユニットのものから、『リチャードホール』『笑う犬』シリーズ、『ダウンタウンのごっつええかんじ』みたいなコント番組のものまで。

2000年代にそういうお笑いのDVDが盛り上がっていた時代があって、かが屋はまさにその次代に思春期を過ごした、本当に本当にお笑いが大好きなひとたち。かが屋に限らず、今第7世代と呼ばれている人たちの中には、そういうお笑いオタクなひとが多いと思います。

──僕も第7世代の方々にはインタビューをさせていただくことがあるのですが、モテたいとか有名になりたいみたいな思いよりも、とにかくお笑いが好きで芸人をやられているというのは強く感じます。

白武 あと、いまはみんなSNSでコメントをくれる人たちと向き合っているので、そういう場所で日々ダイバーシティに対する感覚が磨かれている感じがしていますね。

エゴサーチすると、テレビやラジオでこういう発言をするとこういう反応があるな、こういう発言は傷つくひとがいるんだな、というのを肌で感じながら自然と常にトライアルアンドエラーしている。実力のある人たちは、そういった調整のなかでパンチを失わず、ちゃんと新しいおもしろさに昇華しているなって感じます。

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