範宙遊泳の新作「＃禁じられたた遊び」 “日本人が出演し、日本語のみがしゃべられる演劇”ではない

演劇集団・範宙遊泳の新作公演「＃禁じられたた遊び」が、11月23日から開幕した。11月28日（水）まで、東京・吉祥寺シアターまで行われる。

日本の代表的な戯曲賞である岸田國士戯曲賞の最終候補に過去2度ノミネートされたことがある、範宙遊泳主宰の山本卓卓さんが作・演出。

新作は、“日本人が出演し、日本語のみがしゃべられる演劇”ではない作品となっている。

岸田戯曲賞に2度ノミネートされた範宙遊泳

2007年に活動を開始した範宙遊泳。

劇作家・演出家の山本卓卓さん主宰のもと、東京を拠点にマレーシアやタイなど、国外での滞在制作も行っている。

舞台上の俳優だけではなく、投写された文字や写真、映像、影といった要素を組み合わせた演出と、その時々の様々なモチーフから普遍的なテーマに接続していく脚本が評価されている。

山本卓卓さんが執筆した代表作「幼女X」で、Bangkok Theatre Festival 2014最優秀脚本賞と最優秀作品賞を受賞。「うまれてないからまだしねない」（2014）と「その夜と友達」（2017）で、岸田國士戯曲賞の最終候補にノミネートされてきた。

いくつもの言語が飛び交う新作「＃禁じられたた遊び」

新作「＃禁じられたた遊び」は、現代日本に多く暮らしている外国人に焦点を当てた作品。

そのため、外国語話者を求めてオーディションを行ない、中国、韓国、アメリカ、スウェーデン、日本にルーツを持つ人たちが集った。

“世間からはみだしてしまった人へのまなざし”は、範宙遊泳のこれまでの作品にも通底するものだが、今回はさらに俳優や演劇未経験者、外国語話者ら多様な出演者が「あらゆる"違い"を前提として引き受けながらそれでも等しくそこに居るということ」を舞台上で体現する。

舞台は田舎の農村。そのため方言も一つの多言語として扱い、農業や土着的なお祭り・伝承などもリサーチして山本卓卓さんが執筆した。

ある事件をきっかけに少しづつ狂っていってしまう共同体の中の父親と、崩壊しつつある共同体を巡って揺れ動く人々の営みが描かれている。

マイノリティの声マジョリティの声そんな区別なく声は声。聞く耳を持たない時代の終わり。まずここから。山本卓卓／範宙遊泳公式サイトより

互いの声を聞き合い、とにかく議論を重ねて形にしたという今作。

中国語や韓国語、英語、日本語と、実に様々な言語が飛び交い、一つではない時間軸によって織り上げられていく物語が、時にシリアスに、時にコミカルに、舞台の顔をめまぐるしく変化させている。

演劇だからこそ活きる演出に挑み、多様な生を切り取る野心作は、残り5公演だ。

また、「#禁じられたた遊び」の戯曲の一部は、発売中の『現代詩手帖』11月号（思想社）に掲載されている。公演前に戯曲を公開するという初の試みとなる。