漫画と音楽を同時に奏でる『シアロア』 制作の現場 田口囁一インタビュー

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音楽に関わる人を全部描きたい

──漫画と音楽を同時に展開する『シアロア』。企画はどのように立ち上がったのでしょうか。

田口 2011年、最初に書き始めた頃はVictorからのデビューが決まって、アルバムを出そうとなっていたんです。でも、ただ曲を出しても面白くないし、せっかく漫画が描けるんだったらということで企画が出来上がっていきました。 田口 本当は1曲につき1、2ページくらいの軽い漫画を描ければと思っていたんですが、いざやろうとしたらしっかり読み応えのあるものをつくりたくなって。最終的には1曲に対して10ページ以上の漫画を描いていましたね。

当時は漫画の連載も同時にやっていたので、それに加えてレコーディングをして、読み切り用の漫画を描いてっていうのは本当に大変でした(笑)。

──そんなご自身を代表する作品である『シアロア』を再展開するという今回の企画はどのように決まったのでしょうか

田口 LINEマンガさんに誘われて何かしようとなったんですが、ちょうど自分の漫画家としての活動や音楽方面の活動が一段落つくタイミングだったので、もう一度『シアロア』をスタートさせてみようと思ったんです。

前回は全10話という枠が決まっていたので、全体の構成を決めた上で作品を広げて、最終的に綺麗に畳むというつくり方をしていました。ですが今回は終わりを決めていません。

前回の10話でつくったキャラクターや設定をそのまま広げて、自由に泳がせてみたらどうなるかを試してみたいと思っています。
ボイスドラマ "シアロア" より / 第二話『ストロボライツ』
田口 元々コンセプトとしては「音楽に関わる人をなるべく全部描きたい」というのがありました。

それは音楽をつくる側/聞く側も含めてなんですが、前回の枠ではどうしても描ききれなかった部分があったんです。これから劇中で『シアロア』はライブをしたり、CDをリリースしたりってことになっていくと思うんですが、その中で関わってくる周りの人を描いて、作品の世界をさらに広げていきたいです。

──現在連載を進められている「LINEマンガ」版では読みすすめるとショートムービーが流れるという演出になっていますね。

田口 前回の曲は販売という形式だったので、権利的な問題でやれないこともありましたし、試聴も45秒までしかできないので漫画と一緒に曲を楽しんでもらうには少し短かった。

悔しいところもあったんですが、音楽のプロモーションという企画の性質上仕方ないかなと思っていました。

ですが、今回は漫画と音楽が相互に作用して絡み合って1つのコンテンツになっていくという形式ができています。『シアロア』という作品を表現する上でかなり理想的な形ではないかと感じています。

──2012年のときはセルフメディアミックスという冠がついていましたが、横槍メンゴ先生がコメントされていたように究極の合致が生まれていると思います。

コミカライズじゃ得られない、メディアミックスじゃ得られない、極限の一体感、その理由は「本人が描いている」に尽きるんじゃないでしょうか?
同じ音が、空気が、まったく違う媒体にも流れることを証明した貴重な漫画表現です。必読です。 『シアロア』横槍メンゴさんコメント

田口 漫画と音楽、双方の世界を補完しあうような相乗効果を生み出すには、それぞれの持ち味に共通性を持たせることが重要だと考えています。

自分の音楽は物語性のあるバンド音楽なので、漫画も同じように物語性の強いものでないと絡ませることが難しくなります

漫画としての『シアロア』は物語に重きを置きながらも、その中を生きるキャラクターも大事にしているので、感傷ベクトルとして表現している音楽と持ち味の部分で共通性を持たせることができています。だから製作としてもバランスよく、相乗効果が生まれているんだと思います。
感傷ベクトル / エンリルと13月の少年
田口 欲を言えば自分がもう1人いてくれればと思うんですけどね(笑)。そうすればガンガン曲を書いて、ドシドシ漫画も出せるので。

──音楽は既にストリーミングやダウンロードが当たり前の時代にもなってきていますが、そうした現代において単行本やCDといったパッケージとして作品にする意義も問われてきそうですよね。

田口 原稿をタブレットから紙に戻したいのも同じ理由なんですが「紙はいいぞ……」ってことです(笑)。

愛おしさというか、お気に入りは手元におきたいみたいな感覚ってあると思うんですが、データじゃなくて物として手に入れることでそういう愛着を持ってほしいんですよね。

もちろんそう思ってもらえるようなものをつくっていかないといけないです。たとえば『シアロア』の単行本の話なんですが……カバーのデザインがすごいんです!

なので現物を見てもらいたいですし、電子書籍だとカットされてしまうカバー裏の本体表紙にも2重の仕掛けがあるので、是非!
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感傷ベクトル

漫画家・作曲家

田口囁一(漫画家・作曲家)を中心としたバンド、同人サークル。 2007年より活動開始。 2012年、ビクター・SPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビュー。 音楽と、漫画やイラストレーションを織り交ぜた作品発表や、演奏活動を行う。

1件のコメント

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:1998)

感傷ベクトルって漫画も描いてたんだ!