『Magic: The Gathering』専門店がITベンチャーを設立!? 新会社Sekappyの裏側に迫る

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『Magic: The Gathering』専門店がITベンチャーを設立!? 新会社Sekappyの裏側に迫る
『Magic: The Gathering』専門店がITベンチャーを設立!? 新会社Sekappyの裏側に迫る

新会社・Sekappy

7月10日、世界的人気を誇るトレーディングカードゲーム『Magic: The Gathering』(以下、『Magic』)とITをかけ合わせ、“『Magic』×IT”を掲げた異色の企業「株式会社Sekappy」が発表された(外部リンク)。

Sekappyは、『Magic』の専門店としてプレイヤーにはお馴染みの「株式会社 晴れる屋」の子会社として、今年4月に設立。

公式ホームページによれば、その業務内容は「IT・情報システム分野の自社開発と受託開発、メディアサービスを提供する会社」となっている。

しかし、これだけ見ても”『Magic』×IT”というのはいまいちピンとこない…。ということで、7月頭に行われたSekappyのお披露目パーティに株式会社KAI-YOUのスタッフ陣と共にお邪魔をし、「“『Magic』×IT”とは一体どういうことなのか?」というのを直接うかがってみた!

取材・文:須賀原みち

レセプションパーティでも、やるのは『Magic』!?

そんなわけで、到着したのは東京都港区南青山。明治神宮外苑を眼前に、いくつものオフィスビルが林立する通りを一本中に入ると木立に囲まれたソリッドな建物が目に入る。そんなビルの1フロアに、Sekappyは居を構えている。

お披露目パーティには、晴れる屋のスタッフはもちろんのこと、『Magic』を製作するWizards of the Coast社広報の金子真実氏(公式の記事などでよく見るプレイヤーも多いはず)や晴れる屋がスポンサードするプロチーム「Hareruya Pros」所属の八十岡翔太氏など、『Magic』界の有名人たちがずらりと勢揃い。和気あいあいと『Magic』談義に花を咲かせている。 この日、乾杯の挨拶には、風邪で喉を痛めているというSekappy社長の高桑祥広氏に代わり、同社副社長・高橋将一氏が音頭を取る。

前職は、IT系の広告代理店に勤めていたという高橋氏。

Sekappyの設立の経緯について、「『Magic』のプレイヤーは地頭が良くて、高学歴な方が多い中、知的産業で働いていない方もいらっしゃって、もったいないな、と思っていました。僕は、ITが今後の社会をつくっていく礎になると思っているので、地頭の良い『Magic』プレイヤーの方々にもっとプログラムとかに触れてもらい、一緒にお仕事ができれば…というのがきっかけでした。

まずはメディア事業として、『イゼ速。』をSekappyで運営していくことになりました。今後、(Hareruya Pros以外の)ほかのプロチームの紹介や、将棋業界や他の業界とも手を取り合っていければ、と考えています。ほかにも、日本の『Magic』を強くできるようなITのコンテンツをつくっていきたいです」(高橋氏)とぶち上げた。

高橋氏が述べたように、Sekappyでは今後、プレイヤーから絶大な人気を誇る『Magic』の非公式情報サイト「イゼ速。」の管理・運営を行っていくという。これまでの同サイト管理人・タソガレ氏もSekappyに所属し、これまで以上に『Magic』の情報発信に注力していくとのことだ。 乾杯の音頭が終わると、会場は万雷の拍手で包まれる。

その後、「待ってました」とばかりに始まったのは、参加者同士の『Magic』対戦。机に並んだ豪奢なケータリングもそこそこに、それぞれが持参したデッキやSekappyに置いてあるデッキを使って、自由に対戦を始める。さらには、その場で開けたパックからデッキをつくって戦う「ブースタードラフト」の参加者を呼びかける声も。

レセプションパーティーというのは、業界関係者同士で近況や他愛のない業界の噂などをしながら、お互いの知人を紹介し合ってとりあえず名刺交換、これまた当たり障りのないビジネスの話をして…というのが大方なのだが、『Magic』好きを標榜するSekappyだけあって、レセプション参加者はいずれも「何はなくとも『Magic』!」といった様子だ。

メディア運営から受託開発まで…Sekappyの事業内容とは

賑やかに始まったブースタードラフト大会に後ろ髪を引かれながら、筆者は肝心の「“『Magic』×IT”とは一体どういうことなのか?」という質問をぶつけるべく、Sekappyの親会社である晴れる屋の社長・齋藤友晴氏にお話をうかがった。 「これまで『Magic』を通じた経験から、『Magic』プレイヤーがエンジニアに向いてるということは感覚としてはわかっていました。『Magic』もITも、論理的思考と問題解決能力、そして知的好奇心が大事だという共通性がありますしね。

そこで、晴れる屋では“ゲームが強いやつは仕事もできる!”と掲げ、『マジック面接2017』を実施しました(外部リンク)。数人採用できたら良いな、ってくらいの気持ちだったんですが、想定2倍、50〜60人ほどの応募をいただきました。いち小売店である晴れる屋で大勢を採用するのは難しく、その時採用したのはたった2人だったんですけど、もったいないなって。

応募してくれた方々が“働きたい会社”として晴れる屋を候補にあげてくれたのは、『Magic』に理解があって、仕事を頑張れば『Magic』に貢献できるという側面があったからだと思います。それならば、いち小売店としてのリミッターを解除して、『Magic』とITの組み合わせによって、『Magic』を盛り上げて商売していくことに特化した新しい会社をつくればいいだろう、と。

もともと『Magic』とITの会社という選択肢は持っていたので、『マジック面接2017』を決定打としてSekappyをはじめました」

実際の事業内容として、「イゼ速。」の管理・運営以外にどういったプロジェクトを進めていくのだろうか?

「今後『イゼ速。』では、晴れる屋にとらわれず、イベントやプロチームの紹介など、『Magic』が盛り上がるきっかけになることをやっていけたらいいな、と思います。

また、他社の『Magic』イベントもITの力でサポートしていきたいですね。これまで晴れる屋ではイベントをスムーズに運営するためのアプリケーションを開発、運用していました。今年5月に開催されたホビーステーションさん主催の『GP神戸』(注:大規模な『Magic』の大会)でも、協力として参加させていただきました。

それでも、いち小売店である晴れる屋の場合、競合他社主催のイベントでは会社として頼みづらい部分もあったと思います。こうした状況があったので、Sekappyという会社があることによって、外の世界と手を取り合ってやっていけたらなっていうのは大きいです」(齋藤氏)

『Magic』では、小売店などが主催となって大規模な大会が開催されることがほとんどだ。そのため、大会運営メソッドなどは各企業には蓄積されるものの、なかなか共有しづらいのが現状のようだ。そんな中、Sekappyは『Magic』業界を横断し、手を取り合って業界発展に努めようという。 そんなSekappyの野望について、話を聞くと…

「Sekappyという名前の通り、“『Magic』×IT”の力で、世界をハッピーにしたいです。

僕らは、晴れる屋という会社をやるために商材としての『Magic』を選んだわけじゃなくて、『Magic』というゲームが上にあって、その下に晴れる屋やSekappyという会社がある。僕は18年間『Magic』をやっていて、その世界観だったりプレイヤーのこだわりとかを含めて、すごい格好良いものだと思っているんです。でも、世間にはそれが全然伝わっておらず、まだまだ“オタクのもの”だと思われている。

だから、野望としては『僕らの大好きな「Magic」を世界一の文化にしたい』って言い続けてるんです。Sekappyもいけるところまでいきたいですね」(同)

『Magic』最高額のカード、ブラックロータスの複製原画

Sekappyでは『Magic』の魅力を広く伝えていくことに重点を置き、活動をしていくという。今後は受託開発も行うそうで、「『Magic』業界を発展させるような企業から話が来たら最高ですね」とも語っていた。

『Magic』をより広く伝えるために…

齋藤氏へのインタビューを終え、会場に戻っても参加者はそれぞれ対戦に興じていた。最後に、会場へ遊びに来ていた八十岡氏にもコメントをいただいた。 「僕、ITには疎いほうなんですけど…(笑)。Sekappyは、まだ実態が見えてないところもありますけど、こうした動きは面白いなって思います。

(『イゼ速。』について)これからは、もっといろんな人が『Magic』をプレイしたり見てもらえるような情報サイトになってもらいたいです。今、(『Magic』をめぐる情報は)すでにやっている人たちのためのものばっかりなので。それこそ『Magic』を広げていくために、始めたばかりの人がステップアップするための情報や始めるきっかけとなるものが増えていってもらいたいです。

あとは、面白いことを長くやっていってほしいですね」(八十岡氏)

そんなSekappyでは現在、マジックが好きなITエンジニアを募集している(外部リンク)。考査では『Magic』の腕前も見られるとのことで、腕に自信のあるプレインズウォーカー(注:『Magic』プレイヤーのこと)はぜひ応募してみてはいかがだろうか。Sekappyの雰囲気を知りたいという人には、7月13日〜25日の間、「オフィス無料見学会」も開かれているので、こちらに足を運んで見るのもいいだろう。

“『Magic』×IT”の力で、世界をハッピーにする、というSekappy。『Magic』の可能性を信じる同社のこれからの活躍に期待したい。

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