「ハースストーン」の登場から盛り上がりを見せる、デジタルトレーディングカードゲーム(DCG)。
「ドラゴンクエストライバルズ」や「Faeria(フェアリア)」など、国内外で新たなタイトルが続々と発表されるなか、パブリックベータ期間にも関わらず、すでに多くのプレイヤーによる対戦が行われているのが「グウェント」だ。 正式版のリリース前からここまで注目される理由は、タイトルの成り立ちにある。
本作は、オープンワールド型アクションRPGの人気作『ウィッチャー3 ワイルドハント』(以下、ウィッチャー3)のミニゲームが、単体のタイトルとしてリリースされたもの。「グウェント」単体に興味を持ちゲームを始めた人のほか、『ウィッチャー3』のミニゲームとして楽しんでいたプレイヤーも参戦していることが考えられる。
本作の日本マーケット全般を担当するのは、CD PROJEKT REDのジャパン・カントリー・マネージャーである本間覚さん。前職のスパイク・チュンソフト時代には、『ウィッチャー3』のローカライズを担当したことでも知られている。
本間さんには、「グウェント」の紹介をしてもらいながら、海外ゲームのローカライズ事情についても話をうかがった。
取材、文:杉山大祐 編集:ふじきりょうすけ
本間 「グウェント」は、もともと『ウィッチャー3』に登場するミニゲームでした。ゲームは一人プレイ用のため、プレイヤー同士が対戦することは想定していなかったのですが、一部のファンがデータを抜き取り、有志で「グウェント」の対戦サイトを立ち上げてしまうほどの人気ぶりだったようです。
権利物を勝手に利用しているため、開発元としては当然ながら容認することは難しかったのですが、対戦の需要に応えるために単体でも遊べるようにしたのが本作です。
プレイヤー同士で対戦させるにあたり、e-Sportsも視野に入れてのゲームバランスの調整が必要でした。また基本プレイは無料としながら、カードの入手に課金してもらうべく、コレクション要素を高める必要もありました。
ゲームバランスについては、現在の「パブリックベータ」期間(誰でも参加できるテスト期間)を通じて、プレイヤーの皆様からフィードバックをいただき、調整を続けています。 ──現在さまざまなDCGタイトルが出ているなか、「グウェント」の特徴はどのようなところにあるのでしょうか。
本間 一つ目に挙げられるのは、原作があることです。「ウィッチャー」シリーズは、世界的な人気があるRPGフランチャイズです。
日本での「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」と言えば伝わるでしょうか。シリーズ累計2500万本以上を販売しているので、非常に多くのプレイヤーに知られているのが強みでしょう。
「グウェント」のカードにあるフレーバーテキストやグラフィックは原作の世界観に忠実なので、知っているプレイヤーほどニヤリとできるつくりにもなっています。
──ストーリー背景も重厚ですが、ゲームシステムも既存のカードゲームとは異なる点が多いですね。
本間 既存の多くのカードゲームには、カードを出す際にはコストの概念があります。しかし、「グウェント」にはそれがありません。
1ターンごとに使用できるマナが増え、だんだんとコストの消費がより大きく、より強力なカードが出せるようになるゲームが多いと思いますが、「グウェント」の場合はいきなり強いカードが出せるし、弱いカードも出せるわけです。
そうした古くから続くゲームシステムの概念から脱線できたことは、大きな特徴でしょう。グウェント ウィッチャーカードゲーム | 公式ゲームプレイトレーラー
──なるほど。そのほか「グウェント」ならではのシステムはありますか?
本間 3ラウンド制の採用も、おもしろいゲームシステムだと考えています。3ラウンドのうち、2本先取で勝利する仕組みですが、2連勝できることは珍しく、むしろ「賢く負ける」ことが最終的な勝利をもたらすゲームです。
本作では、試合中に手札を増やす機会があまりないため、相手より1枚でも多くのカードを持っていることが有利になります。
たとえば、1ラウンド目に勝てたら、2ラウンド目は相手にできるだけ多くのカードを出させて手札を少なくし、有利な状態で3ラウンド目に突入させるという考え方がありますが、果たしてそれが最適解なのかというと、そうでもないこともあり、駆け引きがおもしろい作品でもあります。
──能力、もしくはグラフィック面で1番お気に入りのカードは何ですか。
本間 現在はパブリックベータで、たくさんの方に遊んでいただくなか、強すぎたり、弱すぎたりする能力を調整する期間です。そのため、能力の観点でお気に入りをあげるのは難しいですね。 本間 個人的には、愛着があるという意味で、『ウィッチャー3』で非常にフォーカスをあてられたキャラクターの「シリ」が好きです。
本間 今年5月に開催された初の公式大会「GWENT Challenger」で優勝したLifecoach選手に日本のe-Sportsについてうかがったのですが、最初の意見として出たのは「(法規制に関連した環境から)賞金額が少なく、プロゲーマーとして一本立ちするのが難しい」ということでした。
「グウェント」は今後、e-Sportsシーンにも力を入れたいというのが本国の方針です。日本では賞金が出せる・出せないという法整備の問題もあるので調整が必要ですが、成績を重ねた方には、海外の大会に出場していただき、なんとかしてサクセスストーリーを歩んでいただけるような土壌をつくることが大切だと思っています。
本作は多くの日本人ユーザーに遊んでいただいていますので、是非そういった皆様が世界の高みにチャレンジできる環境をそろえたいと思います。GWENT Challenger - ビハインド・ザ・シーン
──日本人ユーザーが多いという話が出ましたが、レートランキングの上位にも日本人がいるそうですね。
本間 はい。しかも、無課金で上位にランクインされている猛者もいらっしゃいます。「グウェント」は、無課金に対して厳しくないゲームだと思います。カードを入手する際、5枚1パックで手に入り、最後の1枚は3枚のうちから選択できる仕組みのため、ダブリがある程度避けられます。
また、現在のところカードの種類が約300枚なので、デッキのコンセプトを決めて、使うカードを絞ってしまえば、そんなにお金をかけなくても、ランキングの上位にいくことは可能でしょう。
──すでに日本人プレイヤーも楽しんでいるグウェントですが、今後の展開を教えていただけますか。
本間 8月に20枚の新規カードを追加するほか、近い将来、大型拡張として100枚以上のカードを追加する予定です。また、カードの能力については、今後も定期的にアップデートします。
「ドラゴンクエストライバルズ」や「Faeria(フェアリア)」など、国内外で新たなタイトルが続々と発表されるなか、パブリックベータ期間にも関わらず、すでに多くのプレイヤーによる対戦が行われているのが「グウェント」だ。 正式版のリリース前からここまで注目される理由は、タイトルの成り立ちにある。
本作は、オープンワールド型アクションRPGの人気作『ウィッチャー3 ワイルドハント』(以下、ウィッチャー3)のミニゲームが、単体のタイトルとしてリリースされたもの。「グウェント」単体に興味を持ちゲームを始めた人のほか、『ウィッチャー3』のミニゲームとして楽しんでいたプレイヤーも参戦していることが考えられる。
本作の日本マーケット全般を担当するのは、CD PROJEKT REDのジャパン・カントリー・マネージャーである本間覚さん。前職のスパイク・チュンソフト時代には、『ウィッチャー3』のローカライズを担当したことでも知られている。
本間さんには、「グウェント」の紹介をしてもらいながら、海外ゲームのローカライズ事情についても話をうかがった。
取材、文:杉山大祐 編集:ふじきりょうすけ
原作の存在とゲームシステムが特徴の「グウェント」
──まずは「グウェント」がどのような経緯で生まれたのか教えていただけますか。本間 「グウェント」は、もともと『ウィッチャー3』に登場するミニゲームでした。ゲームは一人プレイ用のため、プレイヤー同士が対戦することは想定していなかったのですが、一部のファンがデータを抜き取り、有志で「グウェント」の対戦サイトを立ち上げてしまうほどの人気ぶりだったようです。
権利物を勝手に利用しているため、開発元としては当然ながら容認することは難しかったのですが、対戦の需要に応えるために単体でも遊べるようにしたのが本作です。
プレイヤー同士で対戦させるにあたり、e-Sportsも視野に入れてのゲームバランスの調整が必要でした。また基本プレイは無料としながら、カードの入手に課金してもらうべく、コレクション要素を高める必要もありました。
ゲームバランスについては、現在の「パブリックベータ」期間(誰でも参加できるテスト期間)を通じて、プレイヤーの皆様からフィードバックをいただき、調整を続けています。 ──現在さまざまなDCGタイトルが出ているなか、「グウェント」の特徴はどのようなところにあるのでしょうか。
本間 一つ目に挙げられるのは、原作があることです。「ウィッチャー」シリーズは、世界的な人気があるRPGフランチャイズです。
日本での「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」と言えば伝わるでしょうか。シリーズ累計2500万本以上を販売しているので、非常に多くのプレイヤーに知られているのが強みでしょう。
「グウェント」のカードにあるフレーバーテキストやグラフィックは原作の世界観に忠実なので、知っているプレイヤーほどニヤリとできるつくりにもなっています。
──ストーリー背景も重厚ですが、ゲームシステムも既存のカードゲームとは異なる点が多いですね。
本間 既存の多くのカードゲームには、カードを出す際にはコストの概念があります。しかし、「グウェント」にはそれがありません。
1ターンごとに使用できるマナが増え、だんだんとコストの消費がより大きく、より強力なカードが出せるようになるゲームが多いと思いますが、「グウェント」の場合はいきなり強いカードが出せるし、弱いカードも出せるわけです。
そうした古くから続くゲームシステムの概念から脱線できたことは、大きな特徴でしょう。
本間 3ラウンド制の採用も、おもしろいゲームシステムだと考えています。3ラウンドのうち、2本先取で勝利する仕組みですが、2連勝できることは珍しく、むしろ「賢く負ける」ことが最終的な勝利をもたらすゲームです。
本作では、試合中に手札を増やす機会があまりないため、相手より1枚でも多くのカードを持っていることが有利になります。
たとえば、1ラウンド目に勝てたら、2ラウンド目は相手にできるだけ多くのカードを出させて手札を少なくし、有利な状態で3ラウンド目に突入させるという考え方がありますが、果たしてそれが最適解なのかというと、そうでもないこともあり、駆け引きがおもしろい作品でもあります。
──能力、もしくはグラフィック面で1番お気に入りのカードは何ですか。
本間 現在はパブリックベータで、たくさんの方に遊んでいただくなか、強すぎたり、弱すぎたりする能力を調整する期間です。そのため、能力の観点でお気に入りをあげるのは難しいですね。 本間 個人的には、愛着があるという意味で、『ウィッチャー3』で非常にフォーカスをあてられたキャラクターの「シリ」が好きです。
e-Sportsの観点から見た「グウェント」
──DCGといえば、e-Sportsシーンでも注目されるジャンルです。この盛り上がりをさらに高めるためには、何が必要とお考えですか。本間 今年5月に開催された初の公式大会「GWENT Challenger」で優勝したLifecoach選手に日本のe-Sportsについてうかがったのですが、最初の意見として出たのは「(法規制に関連した環境から)賞金額が少なく、プロゲーマーとして一本立ちするのが難しい」ということでした。
本間 そして、海外の大会と隔たりがあるとも。北米や欧州ではある程度、大会の統合が行われており、最終的にはワールドチャンピオンシップに繋がる流れができているなか、日本は国内大会で完結する形が多い。日本での盛り上がりが、海外にはあまり伝わってこないとおっしゃっていました。5/27の放送で海外よりお招きする@Lifecoach1981様は、5/13に行われた初の公式大会「GWENT Challenger」を勝ち抜いた有名カードゲームプレイヤー。彼が『グウェント』に転向した本音に迫ります! https://t.co/EJO3YhWkHj #グウェント pic.twitter.com/bdwua3FB3g
— Gwent JP (@Gwent_JP) 2017年5月18日
「グウェント」は今後、e-Sportsシーンにも力を入れたいというのが本国の方針です。日本では賞金が出せる・出せないという法整備の問題もあるので調整が必要ですが、成績を重ねた方には、海外の大会に出場していただき、なんとかしてサクセスストーリーを歩んでいただけるような土壌をつくることが大切だと思っています。
本作は多くの日本人ユーザーに遊んでいただいていますので、是非そういった皆様が世界の高みにチャレンジできる環境をそろえたいと思います。
本間 はい。しかも、無課金で上位にランクインされている猛者もいらっしゃいます。「グウェント」は、無課金に対して厳しくないゲームだと思います。カードを入手する際、5枚1パックで手に入り、最後の1枚は3枚のうちから選択できる仕組みのため、ダブリがある程度避けられます。
また、現在のところカードの種類が約300枚なので、デッキのコンセプトを決めて、使うカードを絞ってしまえば、そんなにお金をかけなくても、ランキングの上位にいくことは可能でしょう。
──すでに日本人プレイヤーも楽しんでいるグウェントですが、今後の展開を教えていただけますか。
本間 8月に20枚の新規カードを追加するほか、近い将来、大型拡張として100枚以上のカードを追加する予定です。また、カードの能力については、今後も定期的にアップデートします。
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杉山大祐
編集者、ライター
有限会社ノオト所属の編集者、ライター。企業のオウンドメディアの編集や執筆、SNS運用を担当。家庭用ゲーム機からPCゲーム、アーケード、アナログゲームまでをまんべんなく遊ぶ無類のゲーム好き。Twitter ID:@doku_sho
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