「『夜明け告げるルーのうた』と『恋は短し歩けよ乙女』を観て、この監督は『デビルマン』のシュールな世界をつくれると確信しました」
漫画家の永井豪さんは、笑みを浮かべてエールを贈ります。隣には、「この監督」こと、湯浅政明さんの姿がありました。
永井豪さん漫画家デビュー50周年を記念し、2018年に新作アニメとして蘇る『デビルマン』。タイトルを『DEVILMAN crybaby』とする本作は、「Netflix」にて全世界190カ国に、日本語のほか9ヶ国語の吹き替え版と、25ヶ国語の字幕版で配信される予定です。 2017年3月25日(土)に、開催中のイベント「AnimeJapan 2017」のセミナーステージに、永井豪さんと湯浅政明さんが登壇。MCにニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さんを迎え、『DEVILMAN crybaby』についてのトークが行われました。
トレーラーと公式サイトのみで、未だ多くの情報が明かされていない中にあって、『デビルマン』原作者と新作アニメの監督が揃い踏み。製作の経緯や意気込みだけでなく、『デビルマン』創作の源にまで、話は展開しました。
「今日は永井先生がデビルマンカラーのジャケットでしたから、僕も急遽、Tシャツを……(笑)」と湯浅政明さんが明かし、トークは和やかな雰囲気で進行していきました。 MCの吉田尚記さんから、「そもそも『デビルマン』は昭和40年代の連載作品でしたね」と話題を振られると、永井豪さんは当時の創作風景を振り返ります。
永井豪さん 1972年の連載スタートですね。学生運動やベトナム戦争の最中で、殺伐としていました。新聞を見ても、それらの話が目に入る。その空気を感じ、「戦いがエスカレートしたらどこまでいくのか」を危惧しながら、「どこかでストップをしなければ危ない」という気持ちで『デビルマン』を描きました。
さらに、執筆中に起きた不思議な体験も語られます。
永井豪さん 時折、デビルマンに取り憑かれたように、「何でこんなものを描いているのか」と、わからなくなる時がありました。ゲラ(確認用の印刷物)でセリフを読んで、自分で描いたはずなのに記憶が飛んでしまっているという。「こんな言葉がどこから出てきたのだろう」と驚くこともありました。
──“取り憑かれる”。
このキーワードは、まさに『デビルマン』本編のストーリーにも直結しながら、トークイベントの後半で語られた湯浅政明さんの意気込みにも通じていました。
湯浅政明さん 原作をしっかり読み、今は自分が永井豪先生に取り憑かれよう、と意気込んでいます。永井先生が現代で『デビルマン』を描くならどう描くのか。最初に描かれた漫画のスピリットを再現するためにどうするか。あのラストシーンにたどり着くにはどうすればいいかを、最初のシーンから見せていくつもりです。
永井先生が描いた時代とは変わっていても、静かにきな臭かったり、差別的な機運も高まっていたり、「人間ってそんなに変わっていないんだな」という感じはありますね。「表に見えない静かな空気」は今でもある。そこにデビルマンを当てはめてつくっていければと思っています。
湯浅政明さん 『デビルマン』は「後半の展開」に一番の衝撃を受けたのですが、その頃は展開の「奥にあるもの」が、まだわかっていなかった。だからこそ今回のアニメ化は、ラストシーンを中心に作品をつくろうと思いました。
悪魔側のデザインは押山清高くん(※アニメーター。『電脳コイル』などを手がける。『フリップフラッパーズ』で初監督)にお願いしているのですが、人間とはイメージがすこし異なる感じを出してもらっています。
「悪魔」というモチーフを始め、『デビルマン』では刺激的なシーンにも挑戦が試みられてきました。MCの吉田尚記さんは「恐ろしげな作品であり、アニメでは許されない表現もあるのでは?」と問われると、湯浅政明さんの口調は「(テレビではなく)配信だからこそ」と熱を帯びる。
湯浅政明さん 配信作品というのは大きい。永井先生の作品上は必要な部分であり、バイオレンスやエロティックな部分も、限界まで頑張って出せるカタチでアニメ化しています。
湯浅政明さん (本作の)最大のポイントは、了を描く、ということですね。『デビルマン』は(不動)明と了の「バディ物」であると思うんですが、今までにつくられてきた映像作品では了がちゃんと描かれてこなかった。明と了が主人公ではあるのですが、僕は「了の物語である」と捉えてつくっています。
この湯浅政明さんの言葉に、永井豪さんは深く頷きます。
永井豪さん 僕も描いている後半で「主人公は了だった」と気づいた。だから、死なせたのを生き返らせたりしたんですね。……こんな話、(湯浅政明さんとの)打ち合わせでもしてないですけれどね。
永井豪先生に“取り憑かれ”て製作を進めたいと話す、湯浅政明さんの姿勢がうかがえる瞬間でした。MCの吉田尚記さんから「デビルマンのコアな部分をわかってくれているようですね」と聞かれると、永井豪さんは「そうですね」と返しました。
冒頭でも書いたように、湯浅政明さんの近作を観た上で、信頼を置いていると話した永井豪さん。湯浅政明さんには「思い通りにやって」と背中を押します。
永井豪さん 意欲のある人なら、どんな挑戦でも僕はOKです。それで自分の作品と違ったものが出てきても、全く気にしない人間なんです(笑)。
それぞれの個性がありますし、「思い通りにやる」ことで個性は発揮できる。僕に合わせようとか考えなくていいですから、存分にやっていただいて。つくるのを楽しんでもらえたら良い作品になると信じていますから、自分自身でダメを出さずに、やりたいことをやってもらえたらと思います。
このエールに湯浅政明さんは「プレッシャーはかかりますが、期待を裏切らないカタチにできると思います」と決意を新たにしたようでした。
気になる作品の公開時期などについては、「2018年の第1四半期頃」と、ゆとりをもった回答。そのほか、「1クールの予定」であり、「構成の全体は固まりきっていないが、半分以上は脚本が進んでいる」とのことで、メインキャストも決定済み。発表が待たれます。
漫画家の永井豪さんは、笑みを浮かべてエールを贈ります。隣には、「この監督」こと、湯浅政明さんの姿がありました。
永井豪さん漫画家デビュー50周年を記念し、2018年に新作アニメとして蘇る『デビルマン』。タイトルを『DEVILMAN crybaby』とする本作は、「Netflix」にて全世界190カ国に、日本語のほか9ヶ国語の吹き替え版と、25ヶ国語の字幕版で配信される予定です。 2017年3月25日(土)に、開催中のイベント「AnimeJapan 2017」のセミナーステージに、永井豪さんと湯浅政明さんが登壇。MCにニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さんを迎え、『DEVILMAN crybaby』についてのトークが行われました。
トレーラーと公式サイトのみで、未だ多くの情報が明かされていない中にあって、『デビルマン』原作者と新作アニメの監督が揃い踏み。製作の経緯や意気込みだけでなく、『デビルマン』創作の源にまで、話は展開しました。
「取り憑かれた二人」のデビルマン体験
トークイベントは永井豪さんと、手に何かを持った湯浅政明さんが、拍手に迎えられて登場。報道陣に一礼する永井豪さんの横で、湯浅政明さんはごそごそ……。 手にしていたのは、『DEVILMAN crybaby』のTシャツ!(ほしい!)「今日は永井先生がデビルマンカラーのジャケットでしたから、僕も急遽、Tシャツを……(笑)」と湯浅政明さんが明かし、トークは和やかな雰囲気で進行していきました。 MCの吉田尚記さんから、「そもそも『デビルマン』は昭和40年代の連載作品でしたね」と話題を振られると、永井豪さんは当時の創作風景を振り返ります。
永井豪さん 1972年の連載スタートですね。学生運動やベトナム戦争の最中で、殺伐としていました。新聞を見ても、それらの話が目に入る。その空気を感じ、「戦いがエスカレートしたらどこまでいくのか」を危惧しながら、「どこかでストップをしなければ危ない」という気持ちで『デビルマン』を描きました。
さらに、執筆中に起きた不思議な体験も語られます。
永井豪さん 時折、デビルマンに取り憑かれたように、「何でこんなものを描いているのか」と、わからなくなる時がありました。ゲラ(確認用の印刷物)でセリフを読んで、自分で描いたはずなのに記憶が飛んでしまっているという。「こんな言葉がどこから出てきたのだろう」と驚くこともありました。
──“取り憑かれる”。
このキーワードは、まさに『デビルマン』本編のストーリーにも直結しながら、トークイベントの後半で語られた湯浅政明さんの意気込みにも通じていました。
湯浅政明さん 原作をしっかり読み、今は自分が永井豪先生に取り憑かれよう、と意気込んでいます。永井先生が現代で『デビルマン』を描くならどう描くのか。最初に描かれた漫画のスピリットを再現するためにどうするか。あのラストシーンにたどり着くにはどうすればいいかを、最初のシーンから見せていくつもりです。
永井先生が描いた時代とは変わっていても、静かにきな臭かったり、差別的な機運も高まっていたり、「人間ってそんなに変わっていないんだな」という感じはありますね。「表に見えない静かな空気」は今でもある。そこにデビルマンを当てはめてつくっていければと思っています。
バイオレンスやエロティックさも「限界まで」
湯浅政明さんの『デビルマン』体験は高校生の頃。所属していた美術部で、部員たちが漫画やアニメの話をしている中から、永井豪さんの作品や短編集に触れて衝撃を受けたといいます。湯浅政明さん 『デビルマン』は「後半の展開」に一番の衝撃を受けたのですが、その頃は展開の「奥にあるもの」が、まだわかっていなかった。だからこそ今回のアニメ化は、ラストシーンを中心に作品をつくろうと思いました。
悪魔側のデザインは押山清高くん(※アニメーター。『電脳コイル』などを手がける。『フリップフラッパーズ』で初監督)にお願いしているのですが、人間とはイメージがすこし異なる感じを出してもらっています。
「悪魔」というモチーフを始め、『デビルマン』では刺激的なシーンにも挑戦が試みられてきました。MCの吉田尚記さんは「恐ろしげな作品であり、アニメでは許されない表現もあるのでは?」と問われると、湯浅政明さんの口調は「(テレビではなく)配信だからこそ」と熱を帯びる。
湯浅政明さん 配信作品というのは大きい。永井先生の作品上は必要な部分であり、バイオレンスやエロティックな部分も、限界まで頑張って出せるカタチでアニメ化しています。
デビルマンのコアは「飛鳥了の物語」であること
作品の内容にも期待はかかりますが、今回のトークイベントで永井豪さんと湯浅政明さんの見解が、図らずも一致した瞬間があります。それは「飛鳥了こそが『デビルマン』の主人公である」という気づきです。湯浅政明さん (本作の)最大のポイントは、了を描く、ということですね。『デビルマン』は(不動)明と了の「バディ物」であると思うんですが、今までにつくられてきた映像作品では了がちゃんと描かれてこなかった。明と了が主人公ではあるのですが、僕は「了の物語である」と捉えてつくっています。
この湯浅政明さんの言葉に、永井豪さんは深く頷きます。
永井豪さん 僕も描いている後半で「主人公は了だった」と気づいた。だから、死なせたのを生き返らせたりしたんですね。……こんな話、(湯浅政明さんとの)打ち合わせでもしてないですけれどね。
永井豪先生に“取り憑かれ”て製作を進めたいと話す、湯浅政明さんの姿勢がうかがえる瞬間でした。MCの吉田尚記さんから「デビルマンのコアな部分をわかってくれているようですね」と聞かれると、永井豪さんは「そうですね」と返しました。
冒頭でも書いたように、湯浅政明さんの近作を観た上で、信頼を置いていると話した永井豪さん。湯浅政明さんには「思い通りにやって」と背中を押します。
永井豪さん 意欲のある人なら、どんな挑戦でも僕はOKです。それで自分の作品と違ったものが出てきても、全く気にしない人間なんです(笑)。
それぞれの個性がありますし、「思い通りにやる」ことで個性は発揮できる。僕に合わせようとか考えなくていいですから、存分にやっていただいて。つくるのを楽しんでもらえたら良い作品になると信じていますから、自分自身でダメを出さずに、やりたいことをやってもらえたらと思います。
このエールに湯浅政明さんは「プレッシャーはかかりますが、期待を裏切らないカタチにできると思います」と決意を新たにしたようでした。
気になる作品の公開時期などについては、「2018年の第1四半期頃」と、ゆとりをもった回答。そのほか、「1クールの予定」であり、「構成の全体は固まりきっていないが、半分以上は脚本が進んでいる」とのことで、メインキャストも決定済み。発表が待たれます。
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連載
日本最大級のアニメイベント「AnimeJapan 2017」が、東京ビッグサイトにて開催中だ。 新作テレビアニメはもちろん、今後新たな展開を控える劇場版など、多くの作品とそのファンで賑わっている。 KAI-YOU編集部でも現場レポートを行う。
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