NHKの異色番組『ねほりんぱほりん』インタビュー 3月で放送終了、すでに次回作の準備

生活習慣にあるSNSに番組を溶け込ませる

──SNSの話がでましたが、『ねほりんぱほりん』は特にTwitterの使い方がすごくうまいと感じるんですが、何かTwitterにおける戦略があったりするのでしょうか?

萩島 さっきのテレビもSNSもやってる人たちが、たまにテレビを見てくれた時に、「この番組おもしろかった」ってつぶやくと、フォロワーのタイムラインに流れるじゃないですか。

その時に、今までのテレビだと、そのおもしろかった番組がどんな番組なのか、番組の内容を届ける術があんまりなかったんですよ。というのも、これまでのテレビって、番組を見てもらうまでの広報に力を注いできたからです。

だけどテレビって、やっぱり放送した瞬間の反応が一番大きく広がるので、その広がった反応を利用して、どれだけ多くの人に番組の内容を知ってもらえるか、ということをSNSを活用する上で一番大切に考えています

僕がTwitterでリアルタイム実況しているのも、初期のパイロット版を放送した時に、Twitterで「プロ彼女」の「メス感を出す」と発言しているシーンがキャプチャされて、格言のようにたくさん引用リツイートされたりとか、番組中のおもしろい発言を拾ってツイートしてくれているのを見たからです。 萩島 じゃあ、みなさんがわざわざキャプチャしてくれたり、発言をツイートしてくれていることを番組の公式Twitterでつぶやけば、より簡単にシェアしやすくなるんじゃないかと。

で、そのリツイートを見てツイート元の番組アカウントに飛んでくれた人用に、放送直後に番組を5分にまとめた動画をYouTubeに投稿してツイートしてるんです。

直接テレビをつけて番組を見てなくても、スマホをいじっている時に5分動画にたどり着いて、『ねほりんぱほりん』という番組を知ってもらえれば、もしかしたらその人が来週、テレビをつけてくれるかもしれない。 萩島 生活習慣にテレビを見ることがない人とか、そもそもテレビ自体が家にない人ってすごくいると思うんです。以前はそういう人をどうやってテレビに連れ戻すか、いかにテレビの前に座らせるかみたいなことを考えてたんですけど、それだけをめざすと難しい時代なんだと思います。

だからそうじゃなくて、みんなの生活習慣にあるSNSの中に番組を分散して、テレビの前にいなくても、番組の内容を知れる環境を用意したい。で、番組を見てくれた人やSNSで見つけてくれた人たちが、(番組で)いいなって思ったものを気軽にシェアできる、なるべくその人たちの労力を少なくできるような体制で運営しています。

NHKでは、リアルタイム実況とかYouTubeに動画あげたり、名言的なシーンをキャプチャして画像として投稿したりすることは、まだ試験的な試みではあるんですが。

──たとえばツイートや番組の内容について、Twitterやネットの反応を意識している部分があったりはするんですか?

萩島 僕らの取材やツイート、5分のまとめ動画の内容をネットのマナーに合わせてやるってことはしてないです。「ネットの人たちってこういうの好きでしょ?」みたいな偏見を持ったりせず、上から目線でもなく、ニュートラルな目線でやるっていうことは結構気をつけていて。

ツイートする内容も、たとえば「ナンパ教室に通う男」の回で、YOUさんが最後の方で言った言葉をツイートしたらすごくリツイートされたんですけど、それはネットの人たちを意識した言葉でも全然ないし、普遍的に誰の心にも響く言葉だから広がったと思うんですね。 萩島 もちろん、できるだけ多くの人に広めてもらいたいので、みなさんがつぶやいてくれる時間帯のデータをとったら、放送後の5分間が一番ツイートされていたので、できるだけみんなが一番ツイートしてれる5分の間に公式でつぶやくとかは考えてやってますが。

僕含め、スタッフの中にネットやSNSに精通している人間がほとんどいないので、ほんとにみなさんの反応を見ながら運用していて、Twitterで盛り上がってくれてる話題があったら、その画像素材をツイートしたら喜んでもらえるかな? という感覚で探りながらやっています。 萩島 これはまさにNHKでもこれからSNSを積極的に活用していく上での試験的な試みなんですけど、たまたま『ねほりんぱほりん』は出演者が人形なので、画像素材とかがSNSで比較的使用しやすいんです。

結果的に『ねほりんぱほりん』はSNSで拡散しやすい番組でしたね。あとで考えたらそうでした(笑)。はじめから計算していたわけではないです(笑)。

『ねほりんぱほりん』は3月で終了?

左:藤江千紘さん(ディレクター) 右:萩島昌平さん(SNS担当)

──『ねほりんぱほりん』では、電通が企画で関わっているとうかがいましたが、それはよくあることなんでしょうか?

藤江 なんか、あんまりないらしいんですよ。PRとかで関わることはあるらしいんですけど。テロップや毎回のゲストにあう衣装のコーディネートや小道具などのグラフィックなどをつくってくれたり、HPに掲載しているおまけを考えてもらったりしています。

萩島 普通だと、たとえばオープニングタイトルのロゴとか、PRプランを電通さんに部分的に発注するという感じなんですけど、『ねほりんぱほりん』の場合は番組を好きになってくれた電通の人たちが、パイロット版の時から一緒になってやってますね。

──そもそもなんで電通が入ったんですか?

藤江 局からネット住民に刺さる番組をつくってと言われて、『ねほりんぱほりん』の企画を練ってる時に、元NHKの今は電通で働いてる同期がすごくネットの有名人に詳しかったので、ちょっと教えてよ! みたいな感じで雑談しているうちに、今こういうサイトが流行っているよ、とか、こういう人がいるよとか教えてくれたり、今番組に関わって下さっているアートディレクターさんを紹介してくれたりしたんです。

番組ブログでは、不定期でカルタやキラキラ女子メーカーなど、番組にまつわるおまけコンテンツを用意している。藤江さんいわく、サイトに来たユーザーへの感謝の気持ちで更新しているとのことだ

藤江 「バズらせたいから、電通さんお願いします!」って感じではなくて、いつの間にかチームの一員として、どうしたら番組がより面白く、より届くものになるか一緒に考えてくれるようになりました。

ロゴやグラフィックをつくってくれている電通のアートディレクターさんは20代の女性で、SNSとかネットに対する感度が高くて、ブログのネタや運用、ときにはこんなゲストを呼んだらいいんじゃないか、とか提案してくれたりもしますね。

──「ネット住民」ではなく、実際にはもう少し広い、スマホを使ってたりするような今時の人たちに向けてつくられているということですが、その人たちに刺さってるという実感はありますか?

藤江 30分の深夜番組では今までにないツイート数だったり、いつも23時台にはNHKを見ていないような30代、40代の方がふだんよりEテレを見てくれてたり、オンデマンドサービスでは、20代女性がたくさん見にきてくれているので、それはありがたいし、すごくうれしいなって。刺さっている人が少しずつ増えているような気はしますね。

──でも番組は3月で終わってしまうんですよね?

萩島 一回終わるんですけど、NHK的にもこんなにSNSでつぶやいてくれる番組は珍しいので、まだちょっとわからないですけど、何かの形にできたらいいとは思って、準備は・・・

藤江 ・・・しようかなって(笑)。

──復活の可能性は高そうですね。

萩島 山ちゃんとYOUさんも、年末年始の『あけまして、ねほりんぱほりん』の収録の時に、「なんか無理して続けてるとみんな疲れちゃうから一旦休もうぜ」っておっしゃっていて。

藤江 リサーチにすごい時間がかかるのもあって、コンスタントにつくり続けられないんですよね。去年の10月から放送してるんですけど、去年の1月くらいから30テーマくらい一気に走らせてリサーチして、うまくいい人が見つかったら順番に取材、収録している感じなので、本当にギリギリで・・・(笑)。
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番組情報

『ねほりんぱほりん』 今後のラインナップ

放送日時
NHK Eテレ 毎週水曜日23時〜
2017年3月1日(水)
「整形する女」
2017年3月8日(水)
「アンコール・ナンパ教室に通う男」
2017年3月15日(水)
「アンコール・占い師」
2017年3月22日(水)
「最終回!?その後を知りたい&新たに見たいリクエストSP」

関連キーフレーズ

ねほりんぱほりん

NHK Eテレ

「顔出しNGの訳ありゲストはブタに、聞き手の山里亮太とYOUはモグラの人形にふんすることで「そんなこと聞いちゃっていいの~?」という話を“ねほりはほり”聞き出す新感覚のトークショー。
作りに作り込んだEテレお得意の人形劇と、聞いたこともないような人生の“裏話”が合体した人形劇×赤裸々トークをお楽しみください!

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