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Annabel×照井順政×蓮尾理之が語る「siraph」 同人音楽とポストロックの邂逅

siraph

どこか懐かしさを感じる強靱なビートとアンニュイで存在感あふれる透明な歌声。

これまでテレビアニメや同人音楽シーンで活躍してきたAnnabelさんが、ポストロックシーンを牽引してきたハイスイノナサの照井順政さんと、元school food punishmentの蓮尾理之さんら六人のアーティストと新しい音楽シーンを開拓しはじめた。そのバンドの名前はsiraph(シラフ)

5月18日にリリースされたミニアルバム『siraph』に続き、6月14日には、自身のネット番組「siraphTV」を初配信。6月28日には第2回の配信行われた。普通のバンド活動に留まらないフットワークの軽さで、アニメ音楽のファンとポストロックのフォロワーたちを巻き込み、これまで交差することが少なかった異なる音楽シーンを生み出している。

4月の同人音楽即売会M3でもシングルを頒布するなど、場所を選ばないハイクオリティな楽曲でファンを魅了し続けている。

ポストロックとアニメソング、そしてVJを含む映像表現。ゆるやかで確かな信頼感が紡ぎ出すクリエイションで、彼らが見通す新時代の音楽像とは?

記事の最後にはサイン入りミニアルバム『siraph』のプレゼント企画も!

取材/文:安倉儀たたた

それぞれの出会いと、siraph結成のきっかけ

──それぞれファーストコンタクトはいつ頃だったのでしょうか。

照井 蓮尾くんとは、school food punishmentの1stCDが出たときの対バンで出会いました。第一印象は……長髪で、髪の毛サラサラだなって(笑)。ふつう、鍵盤で華のあるプレイができる人は少ないんですが蓮尾くんは違った。アグレッシブだけど力が抜けた所があって、それがすごくかっこよかった。

蓮尾 二子玉川pink noiseという、今はもうなくなってしまったライブハウスでリリースツアーをやったときですね。pink noiseは、ポストロックと呼ばれるようなバンドが大量に出ていて、日によっては自分たち以外は全部インストだったりするようなコアな箱で(笑)。バンドマン同士がやたら刺激しあうライブでした。その中でも、ハイスイノナサはすごい曲ばっかりで聞いていて単純に悔しかったです。

照井 それが2007年の3月ぐらいですから、それからもう9〜10年経つんですね。

──Annabelさんとの出会いは?

Annabel 2014年に『TALK』というアルバムを出す時に、お二人に作曲のオファーを出したんですが、照井さんとこはそこがはじめてでした。私は当時からお二人の大ファンだったから、いつか機会があれば曲を作っていただきたいと思ってたので、叶ってよかったです。

蓮尾 打ち合わせで下北沢のカフェであったのが最初でしたね。

──お2人はAnnabelさんの事は依頼がきてはじめて知った?

照井 そうです。Annabelさんはアニメの曲を歌ってる方と聞いていたので、最初は、もっとキャピッて感じの方を想像していたのですが、すごくディープな方で。

蓮尾 僕は、一番最初は自主制作盤の『caracol』の一曲目、導入になる楽曲をという依頼を受けたんです。それで、アルバムの他の曲を聴かせてもらったんですけど、アンニュイな感じで僕が好きな曲がいっぱいあった。これなら自分の得意なものが出せるんじゃないかなって思いましたね。

Annabel 蓮尾さんにオファーしたときは、すでにアルバム10曲中の9曲はできていたんですけど、あと1曲がどうしても決まらなかったんです。そうしたら、事務所の人から「school food panishmentっていうバンドをやってた蓮尾さんって知ってる?」って連絡がきて。スケジュールが空いたんでどうかな、みたいな感じだったんですけど、「そりゃ知ってますよーー! すぐにお願いします!!」って即答しました。

──そこから、siraph結成へ向かったんですね。

Annabel その後蓮尾さんにも『TALK』というアルバムへ楽曲提供していただいたのですが、そのレコ発ワンマンライブのサポートミュージシャンとしてお二人と、同アルバムに奏者として参加していただいたベースの山崎さん、そしてVJの斎藤雄磨さんにも参加していただきました。その日のドラマーは山下くんではなかったのですがsiraph結成のきっかっけはこの日のライブだと思います。その後、一夜限りでは勿体ないねという事でドラムが今の山下くんに代わり、引き続きサポートをお願いする事になりました。その中でこのメンバーで新しい曲を作りたいつくっていきたいと思うようになっていきました。

照井 それぞれバンドシーンで活躍してきたメンバーが集まったので、サポートだけじゃなくてライブパフォーマンスを良くしていきたいし、録音もしたいし、もっとバンドらしい活動をしていきたかったんです。

──照井さんや蓮尾さんは、Annabelさんが主に活動されていたアニソンや同人音楽に触れたことはありましたか。

蓮尾 同人音楽の方は正直、Annabelさんに会うまで知りませんでしたね。

照井 僕はアニメも観るし、音楽も菅野よう子さんとかが好きでよく聞いてました。でも、同人音楽はボカロとかのシーンが、盛り上がってるらしいよって感じでちょいちょい聞くという感じだったかな。

出自でいえば、Annabelさんは、漫画家のオノ・ナツメさんみたいだなと思いました。

マスタリングのその先、Annabelさんライブに出会う

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Annabelさん

──以前、Annabelさんはライブは苦手だということをおっしゃっていたと思いますが、2014年ぐらいから楽しそうにライブをされることが増えたように思います。

Annabel そうですね。完全にバンドのおかげです。

──いままでライブが苦手だったというのは、Annabelさんが同人音楽出身だった事と関係するんでしょうか。

Annabel 同人音楽出身が関係するかどうかはわかりませんが、それまで私にとっての音楽活動というのは商業/同人関係なく音源を作り上げることだったんです。なのでマスタリングが終わるまでは神経を注ぎ込みますが、完成したらもう終わりで、その楽曲と関わることはありませんでした。時々、昔のCDを聞き返すと今ならもっと違う表現ができるかもしれないと思うこともありましたが、それよりも新しい曲を作ることへの興味のほうが強かったんですね。

2014年の『TALK』のレコ発ワンマンライブで、昔の曲を歌ってる時に「あ、レコーディングのときより曲への理解が深まったかも」と思うような瞬間がありました。それから、ライブをやる事の意味がわかってきたような気がします。とはいえ人前が苦手なのは今も変わっていませんね。いつも楽しさと胃痛との闘いです。

──以前より明るい曲を歌われることも多くなったように思います。

Annabel それはバンドはじめる前、2012年ぐらいに、「シグナルグラフ」というそれまでの自分にはなかった世界観に挑戦する機会をいただいて、そこから元気な曲も歌えるようになったんです。でも、バンドでやる時はテンポを落してアンニュイな感じでやっています。

照井 アメリカのミュージシャンのトロ・イ・モアみたいにしようってね。無理しない感じです。

──siraphは無理していないんですね(笑)

Annabel そうですね。全体的に無理してない。お仕事ではないです

蓮尾 仕事ではない(笑)。でも本当、Annabelさんはバンドはじめたての学生みたいな感じがありますよね。

照井 よく「ライブ終わってからラーメン屋にいって音楽性の違いで殴り合いをしたい」ってバンド少年みたいな事を言ってましたよね。それでさらに絆を深めると(笑)

蓮尾 僕らが最初にサポートで入った時も「あ、意外と殴り合いとかしないんですね」と(笑)

Annabel バンドって、みんなそれぞれ強い意志を持ってて、意見の食い違いで殴り合いとかをするんだろうなって……。でも、みんな大人だったんですよね。それに、今はみんなと喧嘩したくない(笑) 

──以前からバンドに対する憧れがあったんでしょうか?

Annabel バンドは聖域でした。兄がストイックなバンドマンで、そのライブを幼い頃からみていたので、私なんかが入り込める世界ではないなってずっと思っていたから。

蓮尾 それは、見ていたバンドがすごすぎたんです(笑)。僕、お兄さんのバンド、大ファンなんですけど、Annabelさんからは「あれ、兄を知ってるんですか」ってメールが来た時に「知ってるもなにも、大スターなんですけど」って。

Annabel 兄も周りの人に「うちの妹は違う世界の人だからあんまりいじらないで」とか言っていたぐらいですから。同じ音楽をやっている人でも全然違うタイプです。

──同人音楽で活動するの人たちとバンドをやろうという話はでなかったんでしょうか。

Annabel 実はバンド的なものを同人音楽界隈でやったんですけれども、一回リハスタ入って解散しました。ラーメンだけは食べたけど(笑)。

アルバム『siraph』の温度

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5月にリリースされたアルバム『siraph』

──今回のアルバムで苦労した曲はありますか。

Annabel 強いていえば5曲目の「linotype」かな。最初は拍子が理解できなかったんですけれど、歌入れではあまり苦労しませんでしたよ!

──照井さんと蓮尾さんは、これは歌いづらくないかなって思った曲はありますか?

照井 僕はけっこうありますね。

Annabel ピッチが高い曲が多かったんですよね。

照井 そうかもしれない。曲をつくった時は、Annabelさんに最高に適した音域ではできなかった。でも、だんだんAnnabelさんの歌いまわしや音域感が分かってきて、最終的にはいい曲になったかなと。

Annabel 照井さんの曲は、難しかったけれど自分でもいいと思えました。

蓮尾 うん、今回の曲は、照井カラーに繋がると思うんですよ。通常よりも低いベースの低域とボーカルの高域の歌声は照井くんの特徴で、それが曲に冷たさを添えている。ハイスイノナサはベース六弦ですもんね。

照井 ベースが低いのが好きなんですよね。

──蓮尾さんの楽曲ではどうでしたか。

蓮尾 4曲目「カーテンフォール」は僕もAnnabelさんとお互いに悩みながら作った曲でした。曲調の温度感と、歌詞の温度感が合わなくて。

Annabel そう。歌詞に何を書いても自分の中でヒットしなくて、ギリギリまでかかってしまいました。

バンドの強さ、2人のコンポーザーの存在

蓮尾さん、照井さん

左・蓮尾理之さん 右・照井順政さん

──お二人は、Annabelさんの歌い方の特徴や魅力はどこにあると思いますか。

照井 ブレスの使いですね。Annabelさん自身も、ブレスをすごく意識されていると言ってましたよね。息を吸うとか吐くといった呼吸をパーカッシブに、音の一つとして使っている。

Annabel 息をどこまで入れるかの調整はこだわっているかもしれません。ブレスも歌の一部として、ゆったりした曲は歌いだしに無理にないブレスを、切迫した感じを出したいときはわざと多めに入れたりしてますね。

蓮尾 今のお話聞いていて「なるほどなーっ」って思いました。Annabelさんとは長いこと一緒にやってきているんですけど、僕は何回聴いても「Annabelさんかっけえなあー」って程度の感想しかでてこない(笑)。でも、本当にAnnabelさんの歌声には絶妙の温度感があるんですよね。

──他のバンドにはないsiraphの強みを感じることはありますか?

Annabel バンドでコンポーザーが2人いるのは珍しいんじゃないかな。メロもアレンジもできる人が二人もいるのは心強いです!

──今回のアルバム『siraph』では照井さんと蓮尾さんがそれぞれ3曲ずつ作曲されていますが、2人の音楽性がよく出ている?

照井 最初はもっとポップなアルバムになるんじゃないかと思っていたんですが、想像していたよりずっとコアになりました。特に、3曲目の「thor」がsiraphを決定づけている。ちょっと懐かしさがある少し前のグランジ感が、現代的にアップデートされていて、こういう曲は他のバンドにはには中々ない雰囲気じゃないかなと思います。

蓮尾 照井くんとか俺が青春時代を過ごした音楽が出ていますよね。

照井 僕はハイスイノナサでは一人で構築したものをみんなに伝えてやってもらっていたんです。でも、siraphは信頼できるメンバーがそろっているバンドだから、各個人の個性が出てくるような曲がやりたい。

蓮尾 僕はいままでAnnabelさんに5曲ぐらい楽曲提供をしてきたんですが、siraphではそれとは明確に変えようと思っています。Annabelさんの名義で出す時には、僕はまずメジャーであることを意識して、きっちりつくり込んで、いろいろな人とやりとりしながら緻密に作っていくんですけれど、siraphはそうじゃない。まず自分の感覚で曲をつくってみて、メンバーに、これはどうかなって聞けるのがすごくいい。

──siraphでは制約が少ないということでしょうか。

蓮尾 制約がないというか、その時の気分でなんでもできるバンドであってほしい。変拍子やポストロック的なサウンドはどうしても出てきちゃうから、その音楽性に加えて、ミニマルなセットで演奏したり、ライブ録音したり、いろんな活動を流動的にできるような、ゆるさがあったらいいな、と思いますね。

照井 それぞれのキャリアが似てるような違うようなメンバーだから、コアな部分もポップな部分も独特の形でまとまっている。それがsiraph独自のバランス感覚をつくっていますね。

ボーカルが中心じゃなくてもいい?

──照井さんにうかがいたいのですが、以前ボーカルが中心にいるバンドは嫌だと別のインタビューで答えていましたね。

照井 いやいや。たとえば、ハイスイノナサでも、アー写で女の子のボーカルが真ん中にいて、その後ろにピントがボケた四人が横向いて立ってるみたいなのは嫌だから、バンドなら一人一人、全員が主役の方が良いとずっと思っていたんです。だから、全部の楽器が主役になれるように曲をつくってきたんですけれど、それだと、中心がなくなって抑揚がなくなってしまう弊害も感じた。それから、ボーカルが中心にあるやり方でも納得のいく曲はできるってことが分かってきた。

──それは音楽的なアプローチが変ったということですか。

照井 根本的には変ってなくて、広がった感じですね。ハイスイノナサでは、ライブでもボーカルが真ん中じゃなかったり、アー写でもあえて端にしたりしていたんです。MVも、本人達が直接写っているMVは一つもないですよ。でも、siraphはもっとバンド然としていてもいい。siraphに関しては、Annabelさんが中心にいてほしいと思っています。

蓮尾 siraphは、メンバー同士、お互いのセンスや技量を信頼して尊敬しています。だから、このメンバーであれば、どういう形であれおかしいということはないでしょうね。

──siraphのアー写はまだですよね。

Annabel まだなんです。悩みどころですよね。今の話を聞いたら真ん中に立ちづらくなっちゃった(笑)

配信番組とバンド/音楽の未来

IMG_0105 ──つい先日siraphTVというストリーミングでのライブを行われました。バンドとして配信番組を始めたのは何故なのでしょうか。


Annabel ライブはどうしても関東中心になってしまうので、どこに住んでいる人でも同じ時間に同じ体験を共有できる場所が欲しかったんです。

照井 たぶんみなさんが思っている以上に、僕らはsiraphTVに気持ちを入れてる。

配信だとシビアな聞かれ方をすると思うんです。とりあえず爆音出して誤魔化すみたいなことはできないし、構成や聞き所をちゃんと考えていかなくちゃいけない。そこが楽しそうだし、自分たちも成長できる感じがします。あと、AnnabelさんがOPやEDを歌っているアニメから知って、siraphにたどり着いた方もいると思うんです。そういう方たちの中には、ライブハウスには行かないって方もいるかもしれない。そういう人にも、配信なら幅広く楽しんでもらえるかなというのもあります。

──では、現在のバンドシーンに介入していくというような意思はあまりない?

照井 もちろんあります! でも、今はそこまで積極的な意思はないですね。でも、siraphTVだけじゃなくて、制作と普通のライブとの三本柱でいこうと考えています。

──それでも、やはりsiraphTVの活動はライブだけに限定されないバンド活動を志向しているように思います。近年では、以前のようにライブハウスにお客さんがこないという話も聞きます。同時にAnnabelさんは同人音楽という普通のバンドとは違う販路がある場所で活躍されている。そういうバンドや音楽をめぐる状況の中で、配信に活路を見いだしているのかなとも思えるのですが。

照井 その質問でいえば、言いたいことはたくさんあって(笑)。五反田に批評家の東浩紀さんがやっているゲンロンカフェという場所がありますよね。そこでは場所を固定してイベントを開催して配信する。そこでは話している内容やテーマだけではなく、出演する人自体を好きになっていくという仕組みがあるように思うんです。 照井 siraphも音楽はもちろん、バンドメンバーその人も好きになってもらいたいんです。トークイベントと組み合わせたり、会場に来てお酒を飲んでくれたり、応援するっていう意味でCDを買ってもらったり。そういう形で回していくのが大事だと思っています。

──ゲンロンカフェのイベントは毎回テーマがありますよね。siraphTVもそういうテーマごとのイベントを企画していたり。

照井 そうですね。ハードコアの生き字引みたいな人を呼んでみんなでハードコアについて学ぼう! みたいな企画をやってもいいなと(笑)

Annabel いいですね! 私も、ライブはもちろんだけど、それに限らず面白いことはなんでもやってみたい。あと、なんとかお酒のタイアップを取りたいですね……。私たち、siraph(シラフ)ですし。

──siraphってそういう由来だったんですね。

蓮尾 漢字だとハードコアバンドみたいだから、表記はみんなで話し合って決めました。

Annabel siraphTVで「曲にあうお酒探し」なんてやりたいですね。

照井 菊地成孔さんみたい(笑)

──siraphTVをやろうと思った経緯、理由ってあるんですか。

照井 僕がハイスイノナサでやってきたことは、とにかく真面目に良い作品をつくるという作品主義のつもりだったんです。それは自分で守りたい部分ではあるけれども、開放感があるsiraphっていうバンドを組んだので、もうすこし幅広くやってみたいという気持ちが生まれたんですね。あとは、Annabelさんや蓮尾君はもともとの知名度やキャラの良さもあるので、それはもっと生かしたほうがいい。そうすれば音楽自体もより広く聞いてもらえるようになると思うんです。

──ハイスイノナサではなぜそんなに頑なだったんでしょうか?

照井 いや、これが自分の本質なんですよ。今でもそういう場所はつくらないと精神のバランスが崩れるなって思う。

融和したポストロックというジャンル

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「ポストロックなんて言葉はもう存在しない」と語る照井さんのパーカー

──今後、siraphではタイアップなども予定されているんですか?

Annabel 親和性があるんじゃないかなと個人的には思っているので積極的にやれたらいいなあと思ってます。

照井 アニメでも、この感じならAnnabelさんでしょ、みたいな雰囲気がはっきりあったように思いますね。

──タイアップの話でいうと、最近だとアニメでもポストロックやプログレッシヴ的なサウンドを聴くことが増えたように思います。もうポストロックという言葉自体がなくなってきたぐらい自然になったというか、普及してきたように思うのですが。

照井 ポストロックなんて言葉はすでにないですね(笑) 2000年に入ったぐらいで僕の中ではもうなくなりました。

蓮尾 もうないですよねー。

照井 蓮尾くんも僕も、TortoiseとかMogwaiとかがポストロックだと思っていて。toeもそうです。日本ではtoeによってポストロックという音楽が固まってきたと思うんですが、でもその後の僕らの下ぐらいの世代から、ポストロック的なエッセンスが自然と取り込まれているように思います。

──それは、ポストロックという音楽性を共有していた世代の後に、ポストロックというジャンル自体が溶けていろんなところに波及したということでしょうか。 hasuo 蓮尾 いろんな場所でポストロックの定義はされていたんですよ。

照井 本当はポストロックって音楽性ではなく、形態だったんです。ボーカルがいて、ギターがいて、ベースがいて、ドラムがいるというロックバンドの形態で、既知のロックではない音楽をやるという。

蓮尾 でもポストロックだと定義されていたバンドの音楽に影響を受けて活動しているバンドが、さらにポストロックだと呼ばれていくんですよね。そうした中で僕らもポストロックと呼ばれるシーンで活動していたんでしょうね。

照井 音楽性でいえば同人音楽シーンもポストロックを広める上で一役買っているように思います。ニコニコ動画の「弾いてみた」文化とかも含めて、いわゆる「テクい」事が人気で、難しい演奏をすると「神」といわれて盛り上がっちゃうみたいな。

蓮尾 そういう「弾いてみた」が、昔のフュージョンとかをカッコよく昇華しているような感じを受けますね。

照井 そうだね。新しいポップなセンスが生まれている。

──視聴者の耳が肥えて、演奏技術が注目されるようになったということでしょうか。

照井 そうですね。俺はそれよくわかんないところあるんだけど。

──曲も転調がすごく多いものが好まれるとか(笑)。

照井 ただ、転調が自己目的化してしまうのはダメだと思う。転調をすることで音楽が良くなったかが本質ですよね。たとえばアニメなんかは場面転換が多いし、OPの1分30秒という短い時間にドラマをつくらないといけないから転調が合う。でも、それを上手くやっていた人たちの上澄みだけを見て、転調すればいいやというのは安易。

──もし、照井さんがアニソンをつくるならそうはしない?

照井 いやあ、それはいろいろありますけどね(笑)。でも、単純に転調ばっかりみたいなことはしたくないし、俺の作曲技術を見てくれ! っていうのはダメだと思います。それは80年代のギターの早弾き競争みたいなもので、たしかに面白いし変なものを生んだりもするけど、もはやスポーツの領域で。基本的には音楽的ではない。それを分かった上でクレバーに扱うがことができるかが問題だと思います。

──そうはいうものの、ハイスイノナサもまた演奏技術が高いバンドだという印象があります。

照井 いや、でも僕らは難しいことをやろうとかは全く思ってないんですよ。表現したいものをやったときに複雑と言われているだけで、難しいという事で評価されるのが嬉しいわけじゃないんですよね。

Annabel そう。siraphの曲も、自然とこういう形になっちゃったんですよね。

ポストロック、同人音楽と出会う。

──ということは、今後はもっと緩やかで叙情的な曲も。

照井 ぜひやりたいですね。実は先日、牧歌的な曲とポップス寄りの曲が入ったシングルをつくったんです。

Annabel それを突発的に今年4月のM3で出したんです。アルバム自体は去年の2月に制作していたから、今の気分とアルバムの温度が違っていて。だから、今の気分を表現したくて突発的にCDを制作しました。

──siraph名義でもコミケやM3のような同人音楽の場にでられるんですか?

Annabel そうですね。私が同人音楽の出身なので機会はあると思いますしsiraphのメンバーも、あの独特の空間へ連れて行きたいと思っています。私も初めてコミケ行ったときはすれ違う人全員とハイタッチしたいくらいテンションあがりましたもん。この人たち全員同じような目的で集まっているんだーって。

蓮尾 俺たちがかつて二子玉川pink noiseで感じた共有感みたいなものですね。

照井 それはまた違う気がする(笑)

──同じ趣味の仲間たちがいるって感覚はわかります。Annabelさんはバンドシーンも見てみて、同人音楽の場につれていったらこう思うかなっていう事はありますか。

Annabel そうですね。こんなにCDを買いたい人たちがいるってことにまずびっくりすると思います。世の中、CDが売れなくなって来たと言っていますが、買いたいCDのリストを作っておっきなリュックサックいっぱいにCDを詰めて帰っていく人が大勢いるんです。その情熱が……すごく好きなんですよね。

──それぞれにお聞きしたいのですが、音楽の魅力ってなんだと思いますか。

照井 でかいなあ(笑)。なんだろう。音楽の特徴的な魅力は、他ジャンルと交ざった時の相乗効果だと思います。自分でも映像と音楽のコラボレーションがすごく好きですし、さっきも言ったように音楽の需要が減っているとはまったく思わない。むしろもっとこれからいろんな結びつき方が生まれて、音楽が面白くなっていくと思っています。だから、siraphもその一端を担えれば。

蓮尾 音楽の魅力を感じている人はもう音楽にハマッてるから、なんとなく音楽を聴いている人に音楽こんなに凄いんだよって言っても伝わらないと思う。でも、人生のどこかで音楽だったり映画だったり漫画だったり、何かにハマることがあって、それが僕の場合は音楽だったんですよね。

Annabel 深い・・・・・・。

照井 Annabelさんしゃべらないで終わらせようとしていません?(笑) 

Annabel 音楽の魅力・・・・・・。

──音楽をやってなかったらこれは経験しなかったな、という話でも。

Annabel 音楽やっていてよかったなって、日常的には思わないんですけれども、色んなことが上手く行かなくて「このCDを出したらもう辞めよう」って思い詰めた時期があったんです。そんな気持ちのまま無理してあるライブに行ってみたら、音が鳴り出した途端もうめちゃくちゃ楽しくて帰り道では作りたい音楽で頭がいっぱになっちゃった事がありました、siraphも、そんな風に人の感情を動かせるアルバムや曲を作りたいです。

照井 siraphも本当にそれぐらいすごい曲を作りたいですね!

siraph // シラフ

バンド

元・school food punishmentの蓮尾理之、山崎英明、ハイスイノナサの照井順政、Mop of HeadやAlaska Jamで活動する山下賢、ソロアーティストのAnnabelによって結成されたバンド。確かな演奏スキルに裏打ちされた緻密なアレンジによる楽曲達に、ライブでは映像投影を交えて独特の世界観を演出している。

Vocal / Annabel
Keyboard / 蓮尾理之
guiter / 照井順政
bass / 山崎英明
drums / 山下賢
VJ / 齊藤雄磨

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