「プリティーリズム」シリーズは、新しい競技「プリズムショー」をめぐり、「プリズムスタァ」を目指す女の子たちの物語。
2011年から2014年にかけて放送されたTVアニメ『プリティーリズム・オーロラドリーム』『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』『プリティーリズム・レインボーライブ』では、毎年メインキャラクターを変更しながら、アーケードをプレイする女児に向けて制作されてきた。 しかし、『KING OF PRISM』(通称『キンプリ』)は明らかに違う。メインキャラクターは全員男子。舞台設定は「プリズムショー」をめぐる物語であり、『レインボーライブ』のキャラクターは登場するものの、ほとんどのキャラは新規キャラ。そしてなによりターゲット層が、どうやら女児ではなく、大人の視聴者のようだ。 女児向けアニメのスピンオフというと、シリーズ未見な人はちょっと尻込みしてしまうだろう。私もその1人だった。「プリティーリズム」という言葉は聞いたことがあるものの、見たことがない。
それでも劇場に見に行った。なぜなら「ニンジャスレイヤー」や「戦慄怪奇ファイルコワすぎ!」といった「ネットで局地的に話題になりやすい」作品を好きな知人がこぞって『KING OF PRISM』を絶賛していたから。『キンプリ』からも同じ匂いを察知した。
文/青柳美帆子 企画・編集/吉田雄弥
始まって数分でスクリーンに全裸
劇場版「KING OF PRISM by PrettyRhythm」トレーラー(本編ver.)
そもそもこちらは「プリズムショー」を知らない。なのにまったく説明なしで始まるプリズムショー。正統派イケメンの氷上のプリンス・速水ヒロ、大人の色気漂う天才アーティスト・神浜コウジ、やんちゃな少年のようなストリートのカリスマ・仁科カヅキが、王子様のような衣装を身にまとい、ステージに立っている。
3Dモデルで描かれる激しいダンスにポップな曲調の歌。そして、フィギュアスケートのジャンプ!
ステージで歌って踊り、観客を魅了するこのパフォーマンスは「プリズムショー」と言うらしい。
「KING OF PRISM by PrettyRhythm」特報
ただ歌って踊るだけではなく、まるでフィギュアスケートのジャンプのように見えるのは「プリズムジャンプ」。これをキメると画面いっぱいがキラキラするなど、ついつい心がきらめきそうになる演出が盛り沢山だ。プリズムショーをやっている男子3人組は「Over The Rainbow」(通称「オバレ」)というユニットで、プリズムスタァと言われている。大勢の人から応援されていて、プリズムスタァ候補生たちの憧れの存在だ。
彼らが歌って踊るのはキャッチーな楽曲。配給がエイベックス・ピクチャーズなこともあり、小室哲哉作詞作曲のTRFの代表曲も登場する。90年代を象徴している小室サウンドは、今の20代や30代にとっては馴染みがある。そういうところも『キンプリ』は大人向けの作品だ。
90秒でわかる!Over The Rainbow
そんな彼らのショーを見に来たのが今作の主人公・一条シン。観客の黄色い声に包まれながら、彼もオバレのプリズムショーに魅了される。そして、感極まったシンは精神世界でいきなり全裸に! 頬をぽっと染めた全裸のまま、Over The Rainbowのメンバーに愛をこめてハグされる。
頭がクラクラした。意味がわからない……。
しかもこの映画……やたらと脱ぐ!
序盤でシンが精神世界で全裸になることからはじまり、お風呂シーンがあったり、ダンスバトルでダメージを受けるとどんどん服が破けていったり、最後はプリズムショーで愛を全裸で届けたりと、全裸のオンパレードだ。
そもそも、前売鑑賞券のイラストも全裸だった。 よっぽど監督が全裸好きなのだろう……と思ったのだが、公式パンフレットのインタビューでは「(服が破けるのは)そういう仕様なだけです」とつれない。ちなみに非常に女性的な男性キャラクターのお風呂のシーンでは、「ユキノジョウもレオも(注※女性的な登場人物2人。もちろん男性)脱いだらキレイだろうなって(笑)」とコメントしている。
脳をトロトロにする電子ドラッグ
そんな全裸尽くしの『キンプリ』。ノンストップで情報が氾濫して、映画というより脳をトロトロにする電子ドラッグのようだった。序盤から「!?」の連発。乙女ゲームのような一幕があったと思えば、ギリシャ風の衣装でシリアスにキメたりもする。キャラクターたちは全員大真面目だが、見ているこっちはときめいていいのか爆笑していいのかわからない。
そもそも「プリティーリズム」シリーズをずっと追っているファンも、「シリーズ全部見てても、キンプリは意味不明ですよ(笑)」と言っていた。シリーズファンでもわからないものが、新規ファンにわかるわけがなかった。
突然男子が脱ぎだしたり、説明もなしに唐突に始まる「プリズムショー」や「ダンスバトル」だったり、「プリティーリズム」シリーズは、そして『キンプリ』はこの意味不明さが魅力なのだ。
公式で公開されている「プリズムスタァ応援上映の模様」の動画を見れば、その電子ドラッグぶりの一端が伝わるだろう。この応援上映は、ペンライト持ち込み可、声援可、熱唱可、アテレコ可の上映で、まるでアイドルのライブビューイングの様相を呈している。ものすごい盛り上がりっぷりだ。
劇場版「KING OF PRISM by PrettyRhythm」プリズムスタァ応援上映の模様
ちなみに筆者が見たのは通常の上映会だったが、それでも映画の内容があまりにぶっ飛びすぎていて楽しむことができた。ツッコミどころしかない映画なの? 答えは否
じゃあ、『キンプリ』はツッコミどころしかない、盛り上がりだけを重視した作品なのか?もちろんそうではない。ストーリーは超王道。大きな軸が2つある。
1つは一条シンがプリズムショーの魅力に目覚め、プリズムスタァ候補生たちが切磋琢磨する学校「エーデルローズ」に入学、そこで仲間や先輩に出会う物語。
そしてもう1つは、プリズムスタァであるOver The Rainbowのメンバーの前に立ちふさがる困難。アニメ『レインボーライブ』から続く確執が更に過熱し、彼らに襲いかかる。
「プリズムショー」のことを何も知らない主人公の一条シンは、いわば「プリティーリズム」シリーズ未見の観客と同じ。シンを演じる寺島淳太も「初めて観る視聴者の方も、同じ目線で楽しめるのではないかと思っています」とパンフレットで語っている。
急いで『キンプリ』を体験!
そんな彼が伝える「プリズムショーとは、プリズムスタァとは、プリズムスタァの輝きとはなんなのか?」が映画のクライマックス。あまりにもまっすぐなメッセージに、なぜかちょっとウルッときてしまった。『キンプリ』は、シリーズを未見でも「大丈夫」なのか? その答えはイエス。ただ「プリズムショーとは、ダンススケートとおしゃれコーデと歌を組み合わせた競技である」という基礎知識だけは抑えておいたほうが動揺が少ないかもしれない(なお、劇中にもパンフレットにも説明はない)。
ちなみに、本編の最後には次回予告が。続編の公開日や制作状況はまだ明かされていないが、『KING OF PRISM』のタイトル通り、プリズムスタァの最高峰・プリズムキングを目指す戦い——プリズムキングカップをめぐる物語になるようだ。
映画館に行くと、次世代キャラ(今作初登場キャラ)もプリズムキングカップに出場できるファン投票「次世代プリズムスタァ総選挙」の投票券も渡される。推しキャラを60分の中で見つけることができたなら、貴重な一票を投じてみよう。
劇場上映は、基本的に1月29日(金)までとなっているようだ。29日以降も、地方では追加劇場として公開される地域もある。ちなみに今行くと、もれなく「名シーンフィルム風しおり」がもらえる。急いで『キンプリ』を体験しよう!
上映期間延長&劇場追加中!
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作品情報
劇場版『KING OF PRISM by PrettyRhythm』
- 公開日
- 2016年1月9日(土)新宿バルト9他 全国ロードショー
【スタッフ】
原作:タカラトミーアーツ/シンソフィア
監督:菱田正和
脚本:青葉 譲
CGディレクター:乙部善弘
キャラクター原案&デザイン:松浦麻衣
プリズムショー演出:京極尚彦
制作:タツノコプロ:
配給:エイベックス・ピクチャーズ株式会社
製作:キングオブプリズム製作委員会
【ストーリー】
華々しくデビューを果たしたOver The Rainbow。
彼らを目指して、エーデルローズには続々と新入生が入学した。
4年に一度の「プリズムキングカップ」へ向けて練習を重ねるヒロ達だったが、
突如「シュワルツローズ」という対立勢力が現れて・・・
“最も女の子の心をトキめかせた男子“ だけが得られるプリズムキングになるのは、誰だ!?
関連リンク
青柳美帆子
フリーライター
フリーライター。1990年(平成2年)生まれ。オタクカルチャー・イベントレポ・明るいエロス・少女革命ウテナ・月村了衛などを中心に執筆しています。
https://twitter.com/ao8l22
1件のコメント
退会したユーザー
わりとぶっ飛んでた