ニンテンドー3DS向けタイトルとして、11月28日に発売された『モンスターハンタークロス』(MHX)。「狩技」や「狩猟スタイル」、4頭のメインモンスターといった新要素に加え、往年の村やフィールド、モンスターが再登場。11年目を迎えたモンスターハンター(モンハン)シリーズにおいて、新機軸のタイトルになっている。
今回は、大のモンハン好きとして知られ、漫画『夜桜四重奏 〜ヨザクラカルテット』や『デュラララ!!』イラストを代表作に持ち漫画家/イラストレーター/デザイナーとして活躍するヤスダスズヒトさんを迎え、本作のプロデューサー・小嶋慎太郎さん、ディレクター・一瀬泰範さんとともに、これまでのモンハンにはない「MHX」の魅力に迫った。
構成:恩田雄多 撮影:Yosuke Mochizuki
ヤスダ そうです。最初、ゲーム雑誌の初報を見て、「狩猟生活をするゲーム」くらいしかよくわからなかったけれど、どんなゲームなのか興味を持って。
一瀬 僕、初代はオフ専(オフライン専門)で楽しんでいました。
ヤスダ 初代のオフラインって、本当に難しかったですよね。
小嶋 もともとソロプレイのない、オンラインオンリーのゲームになる予定だったんですよ。でも、さすがにハードルを上げすぎだろうということで、制作期間は短かったけれど、村クエ(ソロ用のクエスト)を用意しました。
一瀬 村は自分自身との戦いだったりしましたよ。月曜は大タル爆弾の素材、火曜はハチミツ、水曜日は肉を焼きにいくという風に準備のサイクルを決めて、土日で大型モンスターに挑む。そういった狩猟生活のスタイルをつくりつつ3、4週目くらいにようやく討伐できた、みたいなペースが当たり前でした。
小嶋 一瀬のプレイスタイルは本当にマタギみたいな生活サイクルだよね。
ヤスダ でも、自分もそれくらいかかっていました。インターネットの交流がそんなにあった時代じゃなかったですが、レウスの尻尾が切れるらしいっていう噂が都市伝説みたいに流れていたり。
かなり手ごわかった『MH2』のストイックさも好きでしたが、あまりにストイックだったため、ゲーム好きには勧められるけど初心者に気軽に勧められなかったんですよね。
『MHP2』になって仕事場でみんなでやるようになって、顔を突き合わせてプレイする楽しさに触れられたし、1つあたりのクエスト時間も短くなったりと、ライトユーザーも楽しめるようになっていきましたよね。
──『MHX』を担当されている小嶋さん・一瀬さんのタッグは、『MHP2』が最初ですよね。
小嶋 『P2』で一層普及していった手応えはあります。
一瀬 そうですね。もともと据え置き機として展開されていたモンハンでしたが、携帯機のサイクルに組み込む上で、据え置きでどっしり構えるのとスタンスが全然違ってくるので、携帯機としての遊びやすさ、テンポ感を優先してつくりました。
ヤスダ ハマってます! 個人的に『MHX』は、発売前のワクワク感がシリーズで一番だったので、発売日になってすぐにダウンロード購入したんです。 漫画を手伝ってくれているアシスタントと仕事場でマルチプレイしたり、ソロプレイでも期待に違わぬハンターライフを味わっているところです。昨日も「ディノバルド」を討伐しました。
小嶋 ありがとうございます! ちなみに、これまでで一番ワクワクした理由って何ですか?
ヤスダ いつも新登場するモンスターを楽しみにしていて、『MHX』はメインのモンスターが4頭いるのでテンションが上がりました。
あとは「ホロロホルル」。以前、体験会で試遊したときに、まったく動きが読めなかったのが悔しくて、「製品版でリベンジを!」と心に決めていました。体験版もダウンロードしたけれど、楽しみは取っておこうと思って一切やっていません(笑)。最大限に集中力を高めながら発売日を待ちました。
一瀬 実際にプレイしてみてどうでした?
ヤスダ 「ギルド」「ストライカー」「エリアル」「ブシドー」という、4つの狩猟スタイルの出来がすごくいいですね。従来通りに遊びたい人には「ギルド」スタイルを用意しつつ、それ以外の3つがきちんと尖っていて、デメリットを補うメリット(個性)を持っている。
下手をすれば「ブシドー」が圧倒的に強くなりそうなのに、抜群のさじ加減で調整している。それを14武器種すべてで行なっていて、素晴らしいと思いました。
一瀬 『MHX』独自の新しい試みを楽しんでもらえているみたいで、ありがたいです。 ヤスダ 村クエもいつになく充実しているので、やりがいがあります。これまでのシリーズで「こうしてほしい!」と思っていたところが、ほぼその通りになっているので、夢中でやってますよ。
正直、ゲームとしての面白さ、手応えと面倒さってまったく別物なのですが、そういう面倒な要素が徹底的につぶされていて、感動しました。「こんなハートフルなゲームがあるのか!」って(笑)。
──具体的にどういう部分のことですか?
ヤスダ 装飾品を一度にすべて外せたり、これまで「ちょっとめんどくさいな」と思っていた部分が解消されて、優しさがつまっていました。
小嶋 今回は色々入ってますね、一瀬の優しさが(笑)。
一瀬 開発チームのメンバーとも、できるだけハートフルなつくりにと意識していました。
アクションゲームとして、本来は、ユーザーが自分で“ボタンを押すことによって、アクションが行われる”という、一連の流れ「肉体感」のある操作感覚を大事にしないといけないんです。
けれど、今回ナンバリングではない『MHX』というタイトルだからこそ省くことができたこと、割り切れたことがあって、特にモンスターの討伐以外では、できる範囲でプレイのストレスを軽減したかったんです。
小嶋 これまでに積み重ねてきたシリーズとしての土台があるので、『MHX』はより挑戦的というか、ゲーム設計においても『MHX』ならではの取捨選択ができたと思います。
そこで、『MHX』で登場した「ニャンター」が最適なんじゃないかと。自分がガチガチの装備だとクエストはすぐ終わってしまって、初心者の装備は強くなるけど上達しないし醍醐味を味わえなくなってしまう。その点、ニャンターであれば、あえて弱い装備でいく必要もなく、かつ鍛えればすごく強くなるので本気感もある。
モンハンを初めてやる人はもちろん、熟練者が初心者とマルチプレイするときのプレイヤーとしても優秀なんですよ。情報が出た当時はオマケ程度のイメージだったんですけど、ガッツリつくり込まれていて、かわいいだけじゃないなと(笑)。
一瀬 開発サイドが意識した点ばかりで、本当にやりこまれているのが伝わってきて、感無量です(笑)。 ヤスダ 攻撃の派生がかなりしっかりしてますよね?
一瀬 初心者に向けて、ボタン連打でもコンボができて遊べるようにしています。とはいえ、それだけで終わってしまうと、今まで遊んできたコアなユーザーさんが、100%満足できないものになってしまうかもしれません。
せっかく遊んでもらうのであれば、いろいろな人が遊べて満足できるものにしたかったので、ニャンターのコンボルートは、だいぶ細かくつくりこんでいます。
ヤスダ モーションも相当こだわっていると感じました。あの独特の移動感というか、特にダッシュは従来のハンターと比べるとまったく別物の動きに見えてしまうんですけど、ただまっすぐ走ってるだけなんですよね?
一瀬 そうですね。ただ、モーションも、アイルーそのままではなく、プレイヤーキャラにするにあたって、いろいろ変更しています。当初の動きのままだと、ブレが激しすぎて気持ち悪くなってしまうので、結局ほぼすべてつくり直しました。
小嶋 小さいキャラが頑張って武器を振り回しているような雰囲気は表現できたと思います。
一瀬 身体が小さいのに動きも小さいと目立たなくなってしまうので、ある程度、動きのダイナミズムは意識してつくっていますね。カメラもニャンター専用のカメラなので、各モンスターがいつも以上に大きく見えたりします。
ヤスダ やっぱりカメラも寄ってるんですね。ニャンターから他のハンターを見ると、「あれ、みんなこんなに大きかったかな?」って。
──Twitterでも、ニャンターのよさについてひたすらツイートする「ニャンター布教おじさん」という人が一部で話題になっていました。
一瀬 ニャンター担当が泣いて喜びます。もうね、15種目の武器って言ってもいいくらいつくり込みましたので。
今回は、大のモンハン好きとして知られ、漫画『夜桜四重奏 〜ヨザクラカルテット』や『デュラララ!!』イラストを代表作に持ち漫画家/イラストレーター/デザイナーとして活躍するヤスダスズヒトさんを迎え、本作のプロデューサー・小嶋慎太郎さん、ディレクター・一瀬泰範さんとともに、これまでのモンハンにはない「MHX」の魅力に迫った。
構成:恩田雄多 撮影:Yosuke Mochizuki
モンハンで送る「マタギみたいな生活サイクル」
──大のモンハン好きとして知られているヤスダさんですが、初代からプレイされているんですか?ヤスダ そうです。最初、ゲーム雑誌の初報を見て、「狩猟生活をするゲーム」くらいしかよくわからなかったけれど、どんなゲームなのか興味を持って。
一瀬 僕、初代はオフ専(オフライン専門)で楽しんでいました。
ヤスダ 初代のオフラインって、本当に難しかったですよね。
小嶋 もともとソロプレイのない、オンラインオンリーのゲームになる予定だったんですよ。でも、さすがにハードルを上げすぎだろうということで、制作期間は短かったけれど、村クエ(ソロ用のクエスト)を用意しました。
一瀬 村は自分自身との戦いだったりしましたよ。月曜は大タル爆弾の素材、火曜はハチミツ、水曜日は肉を焼きにいくという風に準備のサイクルを決めて、土日で大型モンスターに挑む。そういった狩猟生活のスタイルをつくりつつ3、4週目くらいにようやく討伐できた、みたいなペースが当たり前でした。
小嶋 一瀬のプレイスタイルは本当にマタギみたいな生活サイクルだよね。
ヤスダ でも、自分もそれくらいかかっていました。インターネットの交流がそんなにあった時代じゃなかったですが、レウスの尻尾が切れるらしいっていう噂が都市伝説みたいに流れていたり。
かなり手ごわかった『MH2』のストイックさも好きでしたが、あまりにストイックだったため、ゲーム好きには勧められるけど初心者に気軽に勧められなかったんですよね。
『MHP2』になって仕事場でみんなでやるようになって、顔を突き合わせてプレイする楽しさに触れられたし、1つあたりのクエスト時間も短くなったりと、ライトユーザーも楽しめるようになっていきましたよね。
──『MHX』を担当されている小嶋さん・一瀬さんのタッグは、『MHP2』が最初ですよね。
小嶋 『P2』で一層普及していった手応えはあります。
一瀬 そうですね。もともと据え置き機として展開されていたモンハンでしたが、携帯機のサイクルに組み込む上で、据え置きでどっしり構えるのとスタンスが全然違ってくるので、携帯機としての遊びやすさ、テンポ感を優先してつくりました。
『MHX』はハートフルなゲーム!?
──その『MHX』発売からおよそ2週間、まずは率直にプレイの感想をお聞きしたいと思います。ヤスダ ハマってます! 個人的に『MHX』は、発売前のワクワク感がシリーズで一番だったので、発売日になってすぐにダウンロード購入したんです。 漫画を手伝ってくれているアシスタントと仕事場でマルチプレイしたり、ソロプレイでも期待に違わぬハンターライフを味わっているところです。昨日も「ディノバルド」を討伐しました。
小嶋 ありがとうございます! ちなみに、これまでで一番ワクワクした理由って何ですか?
ヤスダ いつも新登場するモンスターを楽しみにしていて、『MHX』はメインのモンスターが4頭いるのでテンションが上がりました。
あとは「ホロロホルル」。以前、体験会で試遊したときに、まったく動きが読めなかったのが悔しくて、「製品版でリベンジを!」と心に決めていました。体験版もダウンロードしたけれど、楽しみは取っておこうと思って一切やっていません(笑)。最大限に集中力を高めながら発売日を待ちました。
一瀬 実際にプレイしてみてどうでした?
ヤスダ 「ギルド」「ストライカー」「エリアル」「ブシドー」という、4つの狩猟スタイルの出来がすごくいいですね。従来通りに遊びたい人には「ギルド」スタイルを用意しつつ、それ以外の3つがきちんと尖っていて、デメリットを補うメリット(個性)を持っている。
下手をすれば「ブシドー」が圧倒的に強くなりそうなのに、抜群のさじ加減で調整している。それを14武器種すべてで行なっていて、素晴らしいと思いました。
一瀬 『MHX』独自の新しい試みを楽しんでもらえているみたいで、ありがたいです。 ヤスダ 村クエもいつになく充実しているので、やりがいがあります。これまでのシリーズで「こうしてほしい!」と思っていたところが、ほぼその通りになっているので、夢中でやってますよ。
正直、ゲームとしての面白さ、手応えと面倒さってまったく別物なのですが、そういう面倒な要素が徹底的につぶされていて、感動しました。「こんなハートフルなゲームがあるのか!」って(笑)。
──具体的にどういう部分のことですか?
ヤスダ 装飾品を一度にすべて外せたり、これまで「ちょっとめんどくさいな」と思っていた部分が解消されて、優しさがつまっていました。
小嶋 今回は色々入ってますね、一瀬の優しさが(笑)。
一瀬 開発チームのメンバーとも、できるだけハートフルなつくりにと意識していました。
アクションゲームとして、本来は、ユーザーが自分で“ボタンを押すことによって、アクションが行われる”という、一連の流れ「肉体感」のある操作感覚を大事にしないといけないんです。
けれど、今回ナンバリングではない『MHX』というタイトルだからこそ省くことができたこと、割り切れたことがあって、特にモンスターの討伐以外では、できる範囲でプレイのストレスを軽減したかったんです。
小嶋 これまでに積み重ねてきたシリーズとしての土台があるので、『MHX』はより挑戦的というか、ゲーム設計においても『MHX』ならではの取捨選択ができたと思います。
『MHX』に新登場した「ニャンター」の存在感
『モンスターハンタークロス』 プロモーション映像3
ヤスダ モンハン好きにとって、「初心者と一緒に狩りに行く時、自分がどう立ち回るか」というのが永遠のテーマとしてあるじゃないですか。そこで、『MHX』で登場した「ニャンター」が最適なんじゃないかと。自分がガチガチの装備だとクエストはすぐ終わってしまって、初心者の装備は強くなるけど上達しないし醍醐味を味わえなくなってしまう。その点、ニャンターであれば、あえて弱い装備でいく必要もなく、かつ鍛えればすごく強くなるので本気感もある。
モンハンを初めてやる人はもちろん、熟練者が初心者とマルチプレイするときのプレイヤーとしても優秀なんですよ。情報が出た当時はオマケ程度のイメージだったんですけど、ガッツリつくり込まれていて、かわいいだけじゃないなと(笑)。
一瀬 開発サイドが意識した点ばかりで、本当にやりこまれているのが伝わってきて、感無量です(笑)。 ヤスダ 攻撃の派生がかなりしっかりしてますよね?
一瀬 初心者に向けて、ボタン連打でもコンボができて遊べるようにしています。とはいえ、それだけで終わってしまうと、今まで遊んできたコアなユーザーさんが、100%満足できないものになってしまうかもしれません。
せっかく遊んでもらうのであれば、いろいろな人が遊べて満足できるものにしたかったので、ニャンターのコンボルートは、だいぶ細かくつくりこんでいます。
ヤスダ モーションも相当こだわっていると感じました。あの独特の移動感というか、特にダッシュは従来のハンターと比べるとまったく別物の動きに見えてしまうんですけど、ただまっすぐ走ってるだけなんですよね?
一瀬 そうですね。ただ、モーションも、アイルーそのままではなく、プレイヤーキャラにするにあたって、いろいろ変更しています。当初の動きのままだと、ブレが激しすぎて気持ち悪くなってしまうので、結局ほぼすべてつくり直しました。
小嶋 小さいキャラが頑張って武器を振り回しているような雰囲気は表現できたと思います。
一瀬 身体が小さいのに動きも小さいと目立たなくなってしまうので、ある程度、動きのダイナミズムは意識してつくっていますね。カメラもニャンター専用のカメラなので、各モンスターがいつも以上に大きく見えたりします。
ヤスダ やっぱりカメラも寄ってるんですね。ニャンターから他のハンターを見ると、「あれ、みんなこんなに大きかったかな?」って。
──Twitterでも、ニャンターのよさについてひたすらツイートする「ニャンター布教おじさん」という人が一部で話題になっていました。
一瀬 ニャンター担当が泣いて喜びます。もうね、15種目の武器って言ってもいいくらいつくり込みましたので。
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ヤスダスズヒト
漫画家・イラストレーター
漫画家・イラストレーター・デザイナー。アニメ化もされた『夜桜四重奏』を連載中。『デュラララ!!』シリーズのイラストやキャラクターデザインなど、代表作は多数。『モンハン』のシリーズ累計プレイ時間は3000時間以上。
小嶋慎太郎
『モンスターハンタークロス』プロデューサー
株式会社カプコンに所属。『モンハン』シリーズの企画を第一作から手がけてきた。
一瀬泰範
『モンスターハンタークロス』ディレクター
株式会社カプコンに所属。『モンスターハンターポータブル』シリーズのディレクターをつとめてきた。
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