突如会場に流れ出したニコ生のコメント その時会場に広がった無音の世界
その後、メドレーコーナーをはさみ、次はアコースティックコーナーへ。ここでは、200万枚を売り上げた楽曲「おもいで酒」に出会うまでの15年の間にキャバレーやナイトクラブで歌っていたというジャズを披露。さらには「もしかして」のジャズVer.まで披露され、会場はこれまでの歌謡曲で魅せた小林さんとはまた違う、甘く、セクシーな歌で気持ちよく酔いしれる。
こうしてジャズのこじゃれた空気が武道館に漂う中、それは突然起きた。 「みなさん、ニコニコ動画は知ってますかー?」、「え?知らなーい?」というアニメのキャラクターのような声が流れると、映像に突如世界初のアニメちっくアイドルこと、桃知みなみさんが出現したのだ。
映像では「歌ってみた」や「踊ってみた」などのニコニコ動画の人気コンテンツが紹介されていたのだが、会場ではあまりに唐突にはじまったせいか、一体何が起きているのか状況を把握できないおじいちゃんおばあちゃんたちの姿が。筆者の隣にいた年配の女性も、それまでは笑顔だったのだが、その顔に笑みは1つもこぼれていなかった。 さらに武道館正面の左右のスクリーンには、ニコニコ生放送のコメントが突然流れ出す。
筆者は2階にいたが、会場はざわざわしているどころか、何が何なのかわからない状態を飛び越えた人がほとんどで、大体の人が無反応だったように思える。少なくとも周りにいるおじいちゃんおばあちゃんたちは、全員終止真顔だった。一言で言うならば、カオスだった。
コメントにはそんな会場の空気を察知したのか「申し訳ない」、「会場の人ごめんなさい」という謝罪がスクリーンを埋め尽くす。それは逆に笑えてくるような、異様な光景だった。 会場にいる6,500人の頭の中に「?」マークが浮かんでいるかのような、何とも言えない無音の世界がそこには広がっていた。この武道館公演の中で無音になったのは、後にも先にもこの瞬間だけだ。
武道館とニコニコをつなぐためにやってきた 救世主登場
「え、これどうなるんだろう……」と思いながら、映像でニコニコ動画やニコニコ生放送、そしてニコニコでの小林さんの紹介が終わると、ステージに大人気ニコニコユーザーの百花繚乱さんが登場!「武道館とニコニコをつなぐためにやってきた」と頼もしい一言を発すると、ニコ生の視聴者に向けて「みなさま、一体どちらの地域からご覧になってるでしょうか?」と質問。すると、多数の地域のコメントが流れ、会場には笑いが起きる。
そして武道館とニコ生視聴者を「こんばんは」という言葉とコメントでつなげると、それまでの何とも言えない世界に光明が指し始めた。さらに百花繚乱さんは会場にピンクのサイリウムの振り方を教え、一緒に練習を始める。すると、それまでかけ離れていたニコニコと武道館に、徐々に一体感が…!
そして、小林さんがボーカロイド曲「紅一葉」のカバーを投下。会場にいるお客さんは、段々と体がほぐれてきたのか、サイリウムを振るペースが早くなる。筆者の隣にいたおばあちゃんも、ついには笑顔でサイリウムを振っていた。 そして続けて放たれたのは、名曲「千本桜」だ。早稲田大学のよさこいチーム・東京花火が踊る中、2010年の紅白歌合戦で披露された衣装「母鶴」に乗りながら「千本桜」を歌う小林さん。
このニコニコのコーナーがはじまったとき「おじいちゃんやおばあちゃんにニコニコやボーカロイドの文化を楽しんでもらうのは難しいのかな……」と思ったが、「千本桜」ではこの日一番の大歓声が起きていた。
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