映画『第9地区』で知られるニール・ブロムカンプ監督が、生成AIを活用して制作した短編SFホラー映画『NIGHTBORNE』を7月20日に公開した。
本作は、映像制作におけるAI活用の可能性を探る実験的な作品。
ニール・ブロムカンプ監督が立ち上げたAI映画専門の新スタジオ「Barley Studios」の初作品となっている。
軍の極秘計画を描くSFホラー『NIGHTBORNE』
『NIGHTBORNE』は、戦死した兵士を蘇らせ、再利用しようとする軍の極秘計画を巡るSFホラー作品。
フェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)形式を採用しており、記録映像や証言映像を通じて、存在しない戦争の裏側を描き出す構成になっている。
ニール・ブロムカンプ監督はこれまでも『第9地区』や、同名のスタジオが制作する短編シリーズ「Oats Studios」などでもフェイクドキュメンタリーの手法を取り入れ、限られた予算のなかでCGと実写を組み合わせた映像表現を追求してきた。
今回のAI生成映像との組み合わせは、そうした彼の作家性とも親和性の高い試みといえる。
AIにより生成された『NIGHTBORNE』の一場面/画像はYouTubeより
AIを活用して映画制作の工程そのものを再構築
『NIGHTBORNE』では、ByteDanceが開発した動画生成AIモデル「Seedance 2.0」を使用。
ニール・ブロムカンプ監督によれば、『NIGHTBORNE』は自身が制作した初の「本格的なAI映画のテスト作品」だという。
監督は「数年前からAIでの映画制作をテストしてきたが、ようやくこの形式で長編映画(full feature)に挑戦したいという段階まで来た」と説明。本作はその第一歩となる約13分の試験的な作品として制作された。
作品制作では、コンセプトアートの制作や演出、編集などには人間のクリエイターが関わっており、登場人物の顔や声についても許諾を得た素材が使用されている。
登場人物の顔や声は許諾を得た素材を使用/画像はYouTubeより
映画業界で続く制作への生成AI活用の動き
一方で、本作公開後には批判的な反応も寄せられている。
生成映像特有の不自然さや、シーンを跨いだ際の人物造形の一貫性のなさを指摘する声に加え、著名監督がAIによる映像制作を推進することへの懸念も広がった。
映画業界では7月に、「スター・ウォーズ」シリーズで知られるジョージ・ルーカスさんが、AIの導入について肯定的な見解を示し話題に。
6月にも、Google DeepMindと映画スタジオ・A24が映画制作用のAIツールを研究するため、提携を発表。
『タクシードライバー』で知られる映画監督のマーティン・スコセッシさんが、生成AI企業・Black Forest Labsのクリエイティブ・アドバイザーに就任するなど、生成AIを採用する動きが相次いでいる。
また中国においても、「Seedance 2.0」の台頭によってAIを用いたショートドラマの制作が活発化。
NHKのドキュメンタリー「縦の支配 中国 ショートドラマの光と影」では、ショートドラマの市場規模が1兆円を突破する裏で、加速するコンテンツの消費速度に追われ疲弊するクリエイターの姿が収められている。
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