King Gnu新アルバムレビュー　その芸術的な構成、既存曲の新たな解釈

ロックバンド・King Gnuが、新アルバム『THE GREATEST UNKNOWN』を、11月29日にリリースした。

本アルバムは、TVアニメ『呪術廻戦』第2期「渋谷事変」OPテーマ「SPECIALZ」や、映画『ミステリと言う勿れ』主題歌「硝子窓」などを収録。既存曲に加え、インタールード、新曲を含む、過去最大となる全21曲の構成となっている。

本稿では、国内の音楽シーン語る上で欠かせない存在となった“トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイルバンド”が打ち出した同作をレビューしていく。

多忙の極みの中、3年ぶりのアルバムをリリースしたKing Gnu

King Gnuは、常田大希（Gt.Vo.）さん、井口理さん（Vo.Key.）、新井和輝さん（Ba.）、勢喜遊さん（Drs.Sampler）からなるバンド。 2023年5月、6月にはスタジアムライブツアー「King Gnu Stadium Live Tour 2023 CLOSING CEREMONY」を開催している。

ライブ開催後も、映画やドラマ、アニメなど様々なタイアップ楽曲を破竹の勢いで発表してきたが、アルバム自体は2020年1月にリリースされた『CEREMONY』以来、約3年ぶりのリリースとなった。

アルバムを通しての「一貫性」の高さ　考え尽くされた構成

今回リリースされたアルバム『THE GREATEST UNKNOWN』を聴き、まず初めに感じたのはアルバムとしての一貫性が非常に高い点だ。 前作は『CEREMONY』という表題のもと、「開会式」「幕間」「閉会式」などで1つの“儀式”を表現していた。同じく、今作『THE GREATEST UNKNOWN』もアルバムコンセプトに沿った構成を異常なまでに重視していることを痛感させられた。

ちなみに今作のコンセプトは本人たちからの直接言及はないが、アートワークやセットリストを「MIRROR」、「ЯOЯЯIM」で挟み込んでいるという点から「鏡」であることがうかがえる。 イントロダクションの1曲目「MIRROR」から違和感なく2曲目「CHAMELEON」に入り、曲最後の“君は誰？”という歌詞を反復させたインタールード「DARE??」へと続く構成の美しさ。

また、16曲目「SUNNY SIDE UP」ではシームレスに17曲目「雨燦々」へと切り替わる。まるで1つの楽曲かのように思わせる芸術的な繋がり方を見せている。

今作の魅力は、シャッフル再生などでバラバラに聴くのではなく、イントロダクションから考え尽くされた曲順を、その通りに聴いていくことで引き出される。

既発曲のアレンジによる作品完成度の底上げ

本アルバムは、21曲中11曲が既発のタイアップソングになっている。

また、今作で初収録となった「):阿修羅:(」はPlayStationの新CM曲に、「2 Μ Ο Я Ο」もメンズ・シャンプー「MARO」のCM曲として起用されている。 King Gnuによるタイアップソングは、そのコンテンツのために書き下ろされたであろうものがほとんどであり、既にそれぞれがそれぞれ世界観を持っている。

例えば、アニメ『呪術廻戦』の主題歌である「一途」「逆夢」「SPECIALZ」は、作品に沿った歌詞がファンから絶大な評価を得ている。

しかしアルバム全体として見た場合、単体のみが強い光を放っていては、そのストーリー性を損なってしまうだろう。

そのため、今作では「一途」「千両役者」「泡」「三文小説」などにアレンジが加えられている。特に「千両役者」には大幅なビートアレンジが施されており、全く別の楽曲として捉えた人もいるのではないだろうか。

このように単体で高い強度を持っていた楽曲がアレンジされることにより、アルバムの一部となって新たな解釈を生み出し、完成度を底上げするという役割を果たしている。

アルバムに寄せて。拙文御免。#KingGnu #THEGREATESTUNKNOWN pic.twitter.com/0tAC84Y0Uc

— 常田大希 - Daiki Tsuneta (@DaikiTsuneta) September 11, 2023

アルバムを提げたKing Gnuが向かう次なるステージは、2024年1月よりスタートする全国5箇所をめぐるドームツアー「THE GREATEST UNKNOWN」。

ヌーという動物の習性と同じように、リスナーとともに巨大な群れを形成しながら突き進むKing Gnu。その先頭にいる彼らは、音楽シーンに今後どのような足跡を残していくのだろうか。