安斉かれんのリアルと“アユ”というフィクション 音楽性の再構築を試みた1stアルバム

破壊された安斉かれん像から、何を選ぶか

「へゔん」

神様、どう思いますか?
誰かの虚像の中だけで生きてる間には
僕が、誰か、教えて下さい。 『ANTI HEROINE』収録「へゔん」より

『ANTI HEROINE』収録の1曲目「へゔん」には、今を生きる安斉かれんさんのリアルな声が表現されている。

ほかにも、エッジの効いたダンサンブルなトラックで、音そのものを楽しんでいるのが伝わってくる「ギブミー♡すとっぷ」、個人的に好きだというドキンちゃんのカバー曲「私はドキンちゃん」、アルトサックス演奏によるインストナンバー「てくてくカレンダー」など、全体的に安斉かれんさんの個性が反映された内容が面白い。
「ギブミー♡すとっぷ」

ふぁぼ それだけを Complete そこにはNist(編注:安斉かれんさんのファンの総称) & myself はじめは『愛』was weak でもだからね stop 『ANTI HEROINE』収録「ギブミー♡すとっぷ」より

「おーる、べじ♪」

金髪パツだし! メイクUPアップよしっ! ご指摘あざーーーっす! でしゃばりさん! 『ANTI HEROINE』収録「おーる、ベジ♪」より

収録曲で特に印象的なのは、初期の楽曲とは異なる軽やかで羽を伸ばしたようなリリックセンスだ。

変化に富む自らの音楽性を収録したアルバムからは、これまでの安斉かれん像を一度破壊し、その上で「聴く側に好きなもの(曲)を選び取ってほしい」というメッセージすら感じられる

GigaとTeddyLoid、初音ミクを迎え再構築

楽曲の作詞は、基本的に安斉かれんさん自ら担当している。彼女が初めて作曲を手がけたのは、ドラマ『M 愛すべき人がいて』終了後の2020年9月16日に配信リリースされた「GAL-TRAP」(『ANTI HEROINE』収録)だ。

チルなヒップホップが可愛らしいベッドルームミュージック的サウンドに加え、「意外と言えん「ぴえん。」 ブリーチしたみたいな街」といった2000年代のJ-POPには見られない言葉も登場する。今聴くと、デビュー当初のイメージから脱却しようという衝動をも感じさせる。
「GAL-TRAP」
そんな楽曲も収録された今回のアルバムは、マニュアルに縛られない切り貼りしたような洒脱なリリック、ジャンルレスなサウンドが特徴であり、そういう意味では現代のボカロシーンに通じるものがある

中でも筆者が取り上げたいのは、「18の東京 feat. 初音ミク」と、「現実カメラ feat. 初音ミク」。

共に2021年リリースの楽曲であり、フィーチャリングに初音ミクを迎えて再構築。現代ボカロシーンの雄ともいえるGigaさんとTeddyLoidさんのタッグがプロデュースしている。

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