fhána佐藤純一×AB6IX対談 K-POPとJ-POP、“母音”の違いが生んだ音楽的差異

J-POPとK-POPの違いは“母音”にあり?

──では、みなさんはK-POPとJ-POPの違いはどこにあると感じていますか?

パク・ウジン …………言語?

一同 (笑)。

チョン・ウン 当たり前じゃん(笑)。 パク・ウジン 日本はバンド文化が強くて、K-POPよりバンドサウンドが基盤となっている音楽が多い気がします。

チョン・ウン J-POPは柔らかい歌詞がいいなと思います。調べてみると「そんな意味だったのか」と驚いたりしますし、音としての響きも柔らかいですよね。

──逆に、佐藤さんから見たK-POPとJ-POPの違いはどうでしょうか?

佐藤純一 K-POPってダンスミュージックが盛んでかっこいい曲が多いんですよね。

それって、韓国語は発音自体が英語に近くて子音が多いというか、リズミカルだからだと思うんです。だから、歌でリズムを引っぱっていきやすくてダンスミュージックに向いている。

──確かに、K-POPにはラップが取り入れられている楽曲が多い印象があります。

佐藤純一 それに対して、日本語は母音が強く、のっぺりしてるんですよね。なので、同じトラックだとしても、日本語だと簡単には格好よくならない。

日本語の良さを生かすには、ハーモニーとメロディにこだわって聴かせるのが向いているんじゃないかなと。

──なるほど、そういった意味でも“言語”の違いがあるかもしれません。

一同 (笑)。

──K-POPは世界的に流行っているグループや楽曲が数多くある一方で、J-POPはのアニメ・漫画などのカルチャーと合わせて世界に広がっていくケースが多いです。その差はどこにあると思われますか?

佐藤純一さん

佐藤純一 作家として感じているのは、ブランディングの差かなと。

K-POPは国を挙げて、韓国のポップミュージックを世界に打って出ていると思うんですが、日本はそこまでできていない。その原因は、良くも悪くも日本の音楽マーケットがそこそこ大きいことなんですよね。

──IFPI(国際レコード産業連盟)の発表(外部リンク)によれば、現在日本の音楽市場規模は世界で2番目とされています。

佐藤純一 世界に打って出なくても、日本国内だけでビジネスとしては成り立つ。もちろん個々の例では世界的に成功している日本のアーティストもいるとは思いますが、“J-POP”と一括りにしたらまだまだだと思います。

その中でもアニメ・漫画というカルチャーは世界的に人気なので、それを歌っている日本のアーティストは、海外の人たちからも価値を感じてもらえていると思うんです。

でも、本当の意味でJ-POPが韓国も含めた世界に出ていくには、日本のポップミュージック・アーティスト自体が価値のあるイケてる存在なんだと思ってもらうために、ブランディングを国を挙げてやっていく必要があると思いますね。

佐藤純一、AB6IXにアドバイス「煮詰まったら寝よう」

──fhánaとAB6IXは、メンバーが自身のグループの楽曲はもちろん、他のアーティストへの楽曲提供やプロデュースを行なっているという共通点があります。佐藤さんは曲づくりについて、詞が先、メロディが先など制作の工程は決まっていますか?

佐藤純一 曲からですね。アニソンだったら作品が決まっているので、そのテーマにあわせてつくっています。

そのとき表現したい、大きな質感みたいなものがありつつ、具体的に「こういう曲調がいいかな」「いまこういうのが好きだな、やってみたいな」というものを掛け合わせていくんです。そして曲ができたら歌詞を書く、という順番ですね。

──AB6IXの場合はいかがでしょう?

イ・デフィさん(AB6IX:ボーカル)

イ・デフィ K-POPには、イントロ・コーラス(=サビ)・バース(=Aメロ)・またコーラス(=サビ)……という基本となる楽曲構成があるんです。それに沿ってつくっていくと、自然とサビが出来上がっていたりします。

キム・ドンヒョン 曲が先か歌詞が先かっていうのは決まっていないですね。ふたつを同時に作業して終わらせなきゃいけないこともあったりしますし、その時々です。曲によっても、気持ちによっても作業のやり方が違ったりします。

──どういうときに曲が先、詞が先なのでしょうか?

キム・ドンヒョン 先にテーマがある場合、それに合わせてシナリオを書くように歌詞を書きます。メロディやリズムが決まっていたら、先にアレンジすることが多いです。

──音楽制作するとき「絶対にやること・やらないこと」などこだわりはありますか?

キム・ドンヒョンさん(AB6IX:ボーカル)

キム・ドンヒョン 聴いてみてちょっとでも微妙だったり曖昧に感じる部分があったら、そのままには絶対しないと決めています。

そこを解決しないと次をつくる気にならないので。まず、そのパートをしっかり向き合ってから続きをつくるようにしています。

──その分、歌詞やトラックの修正やリテイク(=録り直し)なども重ねているのでしょうか?

キム・ドンヒョン すごく多いです(笑)。もちろん曲によりけりですが。

チョン・ウン 僕はあんまり気にならないんですよね。ドンヒョンが悩んでいる部分を聴いても「え? いいじゃん」って軽い感じ(笑)。

佐藤純一 僕も、ドンヒョンさんのようにあいまいな部分とか気になる部分にとことんこだわって納得いくまでやることもあるんですが、逆にいいかどうかわかんないけど「こんなもんでいいか」って一度手放してしまうこともあります。 チョン・ウン へえ!

佐藤純一 それが正解か不正解かどうだったかって、時間が経たないとわからないんですよ。その瞬間は近すぎて客観的に見られなくなっているので。

で、自分でもその曲のこと忘れてきたときくらいに聴くと「けっこういいじゃん」ってなったり、逆に「あのときはいいと思ったけど違ったな」ってなったりするんです。

そういう意味で言えば、曲をつくっているときに詰まったら、僕は寝るようにしています(笑)。

──創作においても睡眠は大切ですよね。

佐藤純一 曲をつくったり歌詞を書いてるときって、無数のアイデアの断片が点在していて、それらが線として繋がっていない状態だと思うんです。いろんな可能性があってどうしたらいいかわかんない、って混乱してる。

だから一回寝てあげると、脳が勝手に情報を整理してくれて、点と点を繋いで線にしてくれる。だから、あまり粘って徹夜するよりは一旦寝る感じです(笑)。

キム・ドンヒョン いい考えです。一回やってみようと思います(笑)。

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佐藤純一

fhána(key、cho)

新潟県出身。2006年、自身がボーカルを務めるユニット「FLEET」でメジャーデビュー。

2013年には、自身がリーダー/メインコンポーザーを務めるバンド「fhána」としてもメジャーデビュー。 10thシングル「青空のラプソディ」(TVアニメ「小林さんちのメイドラゴン」OPテーマ)のミュージック・ビデオでは、Youtubeの再生回数4600万回を突破。(2022年8月時点)

近年では、作編曲家としても積極的に活動を開始。2022年現在までに、fhánaと楽曲提供を合わせて28作品ものTVアニメ・TVドラマ・劇場版アニメの主題歌を担当。また、音楽プロデュース、劇伴など活動の幅を広げている。

2019年 「青空のラプソディ」で平成アニソン大賞 作曲賞(2010年 - 2019年)を受賞。
2021年「再生讃美曲」で令和2年アニソン大賞 編曲賞を受賞。
2022年「私たちはもう舞台の上」で令和3年アニソン大賞 編曲賞とユーザー投票賞を受賞。また、fhánaとして「愛のシュプリーム!」が作品賞を受賞している。

AB6IX

ボーイズグループ

2019年 1st EP『B:COMPLETE』で韓国にてデビューしたチョン・ウン、キム・ドンヒョン、パク・ウジン、イ・デフィの4人組ボーイズグループ。

全メンバーが作詞、作曲、プロデュースを手掛けるアーティストとして、アルバムごとに幅広いジャンルの音楽を披露し、目覚ましい成長を成し遂げている。

2021年11月『ABSOLUTE 6IX』で正式に日本デビューを果たし、以降2022年8月にJAPAN 2ND MINI ALBUM 『SAVIOR』を発売し注目を集めた。

2022年6月と8月には東京と大阪で開催した「AB6IX FAN MEETING AB_NEW AREA IN JAPAN」を成功裏に収め、現在も日本での活発な活動を続けており、今後の活躍が期待される。

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