国内外からスタッフ集結、現場での『紅白』実況
──今回の制作で、大変だったのはどんなところですか?
史耕 人を集めるのがまず大変でしたね。今回はアニメーター、背景美術、仕上げ、撮影、3DCGと、合計でスタッフが40人ぐらいいるんですけど、ほとんどが初めて一緒に仕事をする人だったんです。Twitterで探して、気になる人がいたらポートフォリオを見てお声がけしていきました。
アニメ業界は国内のリソースがかなり枯渇しているので、アメリカやニュージーランド、フランスの方にも参加いただいて、かなりワールドワイドな制作体制でした。制作に関するコミュニケーションにはDiscordを使いました。
──海外のアニメーターも参加されていたとのことですが、言語の壁についてはどうされていたんでしょうか?
史耕 チャットのやりとりは基本英語ですね。土海さんによる指示出しも、翻訳機を使いながら英語で書いてもらっていました。打ち合わせをするときは、多言語を扱える知り合いに頼んで通訳してもらって。
──すごい現場ですね……!
史耕 海外のメンバーは、ダイナミックなカメラワークやアクションが得意でした。1サビ前でぬいぐるみが巨大化して外に出て行くシーンは、海外のアニメーターさんが1人で担当していて、土海さんのVコンテのおかげもあるんですけど、細かなディテールは彼のアドリブによるものです。 史耕 基本的に皆さんアニメ業界にいる方々なので、普段は分業体制の中で仕事をされています。だからこそ「作品全体を見る機会がほぼない」「自分の作業が作品の完成度にどう影響しているかわからない」という話を聞いていました。
そこで、各々が担当しているところ以外の工程、たとえば仕上げから作画への連絡とか、そういうものをできる限りオープンにして、より当事者意識を持ってもらえるような現場づくりをしていました。まふまふさんが『紅白歌合戦』に出たときには、実況しながら観ているスタッフもいました(笑)。
──ビジネスライクじゃなく、個人の集まりだからこその空気感があったんですね。MVでは雨、窓についた水滴、水たまり、湖の飛沫など水の描写がとても綺麗だと感じたんですが、そうした作画のこだわりについてもうかがえますか?
土海 水に関しては、結構悩んだ部分ではあります。実写に近づけていくのか、アニメチックにフラットなテイストに落とし込んでいくのか……最初はだいぶ実写寄りの表現になっていたんですけど、撮影さんが私のイメージを拾いつつ、ちょうど良い塩梅に調整してくれました。
史耕 今回は、なかなか一般のアニメでやれないアプローチをしたいなと思っていて。これは土海さんのこだわりでもあるんですけど、見ている側が「おっ」と惹きつけられるようなカットを入れることを意識していました。 史耕 背景とキャラクター込みで画面全体を作画する「背景動画」という手法を使ってるんですけど、たとえばラスサビでバスが地上の低いところをバーッと走っていくシーンは、背景も1枚1枚描いているんです。また、映画館のシーンでは、照明をCGの撮影処理で光らせるのではなく、あえて手描きのエフェクトで表現しています。 史耕 そうした工夫で画全体の質感をコントロールしつつ、「このアニメ凝ってるな」と思わせるシーンを入れています。
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史耕
副監督 アニメーションプロデューサー
Twitter:https://twitter.com/osato_9g
土海明日香
監督
ポートフォリオ:https://www.asukadokai.com/
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浅井正明
脚本・構成・クリエイティブディレクター
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