2月18日、自身初の映画主題歌「栞」のアニメMVをYouTubeで公開しました。
MV制作をバックアップしたのが、映像編集スタジオ・ICHIZIKU。代表の浅井正明さんは「アニメーション作品は初めての挑戦でした」と語ります。
ICHIZIKUは楽曲「ナイティナイト」をきっかけにまふまふさんのMVを手がけるようになり、初の顔出しMVとなった「ひともどき」も担当していました。
今回「栞」のMVを制作するにあたって、浅井さんはまず史耕さんに声をかけたそうです。さらに史耕さんが、かねてより厚い信頼を寄せていたアニメーション作家の土海明日香さんにオファー。監督に土海さん、プロデューサーに史耕さん、脚本・構成に浅井さんというチームが結成されました。
青年と少年が交錯しながら、くまのぬいぐるみとともに不思議な世界を冒険する「栞」。切なくも温かい物語が生まれる中で、制作陣はまふまふさんからどのような想いを受け取り、映像に込めたのでしょうか。
【画像】秘蔵! まふまふ「栞」MVメイキング資料集(25枚)
目次
「ぜひやりましょう」まふまふ側の作品制作への熱量
──まふまふさん側からどのような経緯でMV制作の打診があったんでしょうか?浅井 まふまふさんのMVを制作しているオクナックさんを通してオファーがあり、映画のタイアップ曲ということと併せてお話がありました。そのときには楽曲もざっくりできていたので、それもお聴きした上で企画書をご提示しました。
実はもともと、ここまで動くアニメは想定されていなかったんです。でも、疾走感やストーリー性のあるキャッチーな楽曲で、かつ広く注目される映画タイアップ。史耕くんと「せっかくだったらがっつりやりたいよね」という話になって。動きもシーン・カットもたくさん入れたいと提案してみたんです。そうしたら、まふまふさん側から「ぜひやりましょう」と言っていただけました。
まふまふさんとのお仕事はいつもそうなんですが、作品づくりに対しての想いが本当に強くて、できる限りの力を貸してくれるんですよね。そこから、ストーリーを考えていった形です。
土海 私は個人制作の世界でずっとアートアニメをつくってきたので、いわゆる商業アニメのワークフローを知らない状態での参加でした。商業アニメでは原画・動画・着彩のように各工程で分業されていますが、インディーアニメでは多くの場合、1人で最後までつくり切るんです。
今回は、インディーアニメ出身の私が、商業アニメをつくってるメンバーへ指示出しするという体制。着彩さんへの指示一つとっても、「どう伝えるのがいいでしょうか」とお聞きしつつの制作でした。
まふまふ本人が登場しないMVが誕生した経緯
──「栞」は映画『君が落とした青空』の主題歌ということもあり、まふまふさんを知らない人の目に触れる機会も多かったと思います。そういった観点から、制作の中で意識したことはありますか?浅井 まずは画のルック(見た目や雰囲気・佇まい)ですね。今やたくさんのアニメMVが生まれている中で、全体のテイストや、線の太さ、色合いなど、どういう映像が多くの人に広く刺さるのかを考え、トーンやテイストをまとめていきました。 浅井 ジブリっぽいけどジブリではない、カラフルだけど色の喧嘩もしていない、どことなく懐かしく柔らかい感じに落ち着きましたね。
史耕 キャラクターデザインは、最初はまふまふさんをモデルにしたものでご提案していたんです。でも、「今回は別のキャラクターでいきたい」とご要望があって。過去の作品を見ると、イラストにしても実写にしてもご自身が登場するMVが多かったので、ちょっと珍しいなとは思いました。でも今となっては、本当にそれでよかったと感じています。 史耕 昨年末の『紅白歌合戦』への出場で注目されていましたし、初めての映画主題歌ということもあって、まふまふさんがアーティストとしてもっと発展していくタイミングでもありました。だからこそ既存のイメージの延長ではなく、キャラクターデザインを新しく立てたのは正解だったと思っています。
──その上で、主人公の男性が少年時代の自分に出会うストーリーを、浅井さんはどのように考えていったのでしょうか?
浅井 まず、映画を拝見してからストーリーを考えていきました。『君が落とした青空』はタイムリープのお話で、登場人物たちの想いのすれ違いが印象的な作品です。そうした映画のポイントを押さえて、MVでもリンクさせたいと思っていました。
土海 私からも、各プロップやアイテムにもっと意味を持たせられるんじゃないかと、いろいろアイデアを出しながらVコンテ(ビデオコンテ)をつくっていきました。曲名でもある栞は、脚本段階からかなり登場頻度が増えたアイテムでもあります。 浅井 たとえばラストで赤い傘が落ちてきますが、本人が落としたのか、過去から来た少年が落としたのか、もしくは別の誰かがそこにいたのか、人によって解釈が異なると思います。 浅井 そんなふうに、観る人によって捉え方が変わってくる表現を目指していました。そうした意図を土海さんが全て汲み取りながら素晴らしいアウトプットにしてくれて。Vコンテの時点で素晴らしかった。
史耕 絵コンテじゃなくてVコンテというのも、インディーアニメの特徴ですよね。僕は土海さんのVコンテを見たとき、かなりスペクタクルな内容になっていたので、「これ本当に完成できるのかな?」とちょっと不安でした……(笑)。
土海 当初想定していたカット数の2倍近くになってしまって(笑)。正直、完成できたのが信じられないぐらいのボリュームでした。土海監督のクレイジーな絵コンテが来た時、流石に物量がやばすぎると思った。
— 史耕 / SHIKO (@osato_9g) February 18, 2022
けれど、コンテを削る事なくそのまま映像にしなければ後悔すると思って以来、走り続けた作品でした。
結果とても楽しかったし、良い作品になったと思います。
皆様、お疲れ様でした!!!!! pic.twitter.com/LSJmHbHEeK
史耕 一度カットを削ることも考えたんですけど、やっぱり「このままいきましょう」という結論になって。12月にティザー版をまふまふさんにお見せしたときにも「もうこれ映画じゃないですか!」と喜んでいただけました。
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関連リンク
史耕
副監督 アニメーションプロデューサー
Twitter:https://twitter.com/osato_9g
土海明日香
監督
ポートフォリオ:https://www.asukadokai.com/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCDEwaAbQjlnyDn7zaWUCDMA
Twitter:https://twitter.com/dokai_asuka
pixiv:https://www.pixiv.net/users/21300829
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浅井正明
脚本・構成・クリエイティブディレクター
ICHIZIKU:https://www.ichiziku.co/
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