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ゆらゆら帝国とはなんだったのか? 伝説的バンドが“完全に出来上がる“まで

ゆらゆら帝国とはなんだったのか? 伝説的バンドが“完全に出来上がる“まで

ゆらゆら帝国『空洞です』ジャケット/画像はAmazonより

POPなポイントを3行で

  • 伝説的ロックバンド・ゆらゆら帝国
  • あなたはどのくらい知っていますか?
  • 驚きに満ちた活動遍歴をたどる
デビュー当初から変わらずロックシーンの第一線を走り続け、2010年に突如姿を消した3人組バンド・ゆらゆら帝国(ゆら帝)。

解散したのはもう10年以上前のことなので知らない若者も多いはずだが、彼らの名前やラストアルバム『空洞です』のCDジャケットは知っている人も多いのではないだろうか。

現在メジャーで活躍するアーティストの中にも彼らに影響を受けた者は多く、ゆらゆら帝国がロックシーン発展の一端を担ったことは紛れもない事実だ。

彼らの活動は、今考えてもとにかく予想のつかない驚きに満ちていた。そこで今回は彼らの歩みをジャンルがはっきりと分かれた時期3つに絞って記述し、彼らのどこが凄かったのか、また何がそこまでリスナーの心を捉えたのかについて、楽曲を交えながら書き記していきたい。

そしてあわよくば少しでも興味を持ってもらえれば、さらにその深みに入ってもらいたい。

王道ロック期(『3×3×3』〜『ゆらゆら帝国 Ⅲ』)

ゆらゆら帝国/画像はソニーミュージックオフィシャルサイトより

ゆらゆら帝国は下積みらしい下積みを経験せずにCDデビューを果たした。メジャー進出、ライブが毎回ソールドアウトになる状態に駆け上がるまで早かったように思う。

その理由を紐解いていくと、彼らがデビュー時点から予想外のフックで聴き手を唸らせてきたから、という簡単な答えに行き着いてしまうのだが、まず彼らの快進撃の幕開けを飾ったメジャーファーストアルバム『3×3×3』について語りたい。 このアルバムでは明らかにロックを基盤としつつも、今まで誰もやって来なかった異様なアプローチがされている。今思えばこれからゆらゆら帝国が鳴らす様々な音楽の全てが断片的に詰まっている作品になっているのだ。

まず再生ボタンを押すと音量調整を間違っているのではないかと思ってしまう「わかってほしい」が爆音で鳴り響き、そこから四つ打ちのロックンロール「昆虫ロック」が流れたと思えば、続く「ユラユラウゴク」では突然メロウな雰囲気になり、アルバム最終部まで緩やかな楽曲が大多数を締める。

もはやロックが何なのかさえ分からなくなりそうなラインナップだが、取り分けカオスな楽曲を挙げるとすれば、それはアルバムタイトルにもなっている「3×3×3」だろう。

謎のデーモンによる誘拐計画、東京都在住の男の子の行方不明事件、頭の中のいたずら小僧……。繰り返し聴いても意味不明なストーリーであるそれを、坂本慎太郎(Vo.G)はまるで耳元で直接囁いているような低音ボイスで、ホラー感を漂わせながら展開し続ける。

それこそ彼がホラー漫画家・水木しげるの作品に多大な影響を受けていることは広く知られており、確かにその一面が垣間見える一曲であろう。 なお、以降のアルバムリリースは順に『ミーのカー』『太陽の白い粉』『ゆらゆら帝国Ⅲ』と続いていく訳だが、耳馴染みの良いサウンドに分かりやすいサビが乗っかる、という王道ロックを主としつつも、ある意味ではゆらゆら帝国らしくない、ないしは全く予想外なフックが飛んでくる異質な楽曲が挟まれることも恒例となり、次第にゆらゆら帝国が「何だか変なロックバンドが出てきたらしい」とシーンでも話題になっていった。

ただこの時点ではまだ世間的なゆらゆら帝国のイメージは「発光体」や「ズックにロック」などロック寄りだったために、その後に訪れる大変化を予想出来る筈もなかったのだけれど。

サイケデリック期(『ゆらゆら帝国のしびれ』〜『Sweet Spot』)

これまでロックバンドとしてのアピールを続けてきたゆらゆら帝国。そんな彼らは次作『ゆらゆら帝国のしびれ』からよもやのサイケデリックゾーンへの移行を宣言する。音楽メディアもファンもその動きに振り回され続ける、大騒ぎへと発展した。

中でもその”ネクストゆらゆら帝国”の幕開けを飾った『ゆらゆら帝国のしびれ(以下しびれ)』と『ゆらゆら帝国のめまい(以下めまい)』の対照的な2部作は未だにゆらゆら帝国屈指のサイケアルバムとの呼び声も高く、同時に好き嫌いがはっきり分かれる問題作として位置している。

『しびれ』に収録された楽曲群はズバリ、これまでのゆらゆら帝国の中でも不穏とされてきた雰囲気が覆い尽くす、思わず背筋がゾクッとしてしまうホラー作品が多い。その理由は音が過去作と比べて明らかに少なくなり、その変わりに坂本の歌声が更に距離が近くなったことが要因なのだが、いろいろ含めてとにかく怖いのが『しびれ』。

7分を超える楽曲も数曲あり、取り分けアルバム後半の不協和音がぐるぐる回る「貫通」「機械によるイジメ」からの「無い!!」の展開は圧巻で、この部分だけでもこれまでのゆらゆら帝国とは全く異なる代物であることが分かるはずだ。 対して『めまい』はと言うと、こちらは何と歌謡テイストを含んだポップ作。具体的にはアルバム通してロックバンド的な荒々しい音が基本的に聴こえてこないことと、外部のコーラス隊を起用しているのが大きな特徴だ。

再生すれば「アルバム間違えたかな」と思ってしまうような虚無的な女性ボーカルから始まり、エンジニアの娘さん(9才)に歌を任せた「ボタンが一つ」、そしてファズギターがバックで延々と鳴り続ける怪曲「冷たいギフト」。

『しびれ』と違ってカラオケでも歌えるレベルの歌メロ感は出しつつも、やはりゆらゆら帝国らしい部分もある。これまでのイメージを大きく覆すアルバム2枚の存在価値は、きっと聴き込むことでより深まっていく。

そしてゆらゆら帝国の物語はこれら2枚から2年3か月ぶりに放ったオリジナルアルバム『Sweet Spot』を経て、ついに終焉へと向かうのだった。

終焉(『空洞です』)

こうしてゆらゆら帝国は、伝説的アルバム『空洞です』のリリースとアルバムを携えた全国ツアーを最後に解散した。その理由は「この3人でしか表現できない演奏と世界観に到達した、という実感と自負がありました。しかし、完成とはまた、終わりをも意味していたようです」「ゆらゆら帝国は完全に出来上がってしまったと感じました」(坂本慎太郎解散コメントより)というもので、これまでの歩みを全て見てきた人なら、誰もがある程度納得するものでもあった。

気になるラストアルバム『空洞です』は、これまでにリリースされたどの作品とも違う、紛れもないゆらゆら帝国の到達点だった。活動当初のロック然とした雰囲気がなくなり、それでいて『しびれ』の感覚とも違うそれは未だに何と形容して良いのか分からない。

ひとつ言えるのは今作が完璧過ぎる作品と言うことだけなのだが、それすらも詳しい説明ができないのだ。ひとたび聴けば音に没入する以外の感覚が消失する今作が今でも様々な『邦ロックの名盤ランキング』に名を連ねていることからも、本当に行くところまで行ってしまったゆらゆら帝国の到達点がそこにはあった。
ゆらゆら帝国 『空洞です』(Hollow Me)
そしてアルバムの最後を飾る表題曲「空洞です」。坂本は先述のコメントにて「解散の理由は結局、『空洞です』の先にあるものを見つけられなかったということに尽きると思います」と綴っていたが、その理由も頷ける最強の1曲。

その何が最強なのかも、何が素晴らしいのかも言語化出来ないのがもどかしいが、この「何となくめちゃくちゃ良い」という謎の感情こそ、坂本が追い求めたゆらゆら帝国の終着点なのだ。

ゆらゆら帝国とはなんだったのか

ここまでつらつらと綴ってはきたが、長らくのファンであっても「ゆらゆら帝国がどんな存在だったのか」を形容出来る人はほとんどいないはずだ。何故なら彼らの楽曲は思いを詰め込むとか現実の辛さを歌にするというものではなく、徹底して抽象的なイメージを崩さなかったからだ。

本当にミステリアスなままいつしか売れて、いつしか解散していたゆらゆら帝国は、あれから何年も経ってかつて見えていたが今は見えない蜃気楼のように、朧気な存在だけが記憶として残っている。

ただ、彼らの伝説的な歩みは間違いなく埋もれてはいない。「ゆらゆら帝国って名前は聴くけどどんなバンドなの?」「何か最近フジロックのトリを務めた坂本さんっていう人が前組んでたバンドがあるらしいよ?」……それくらいのざっくりした認識でも大丈夫。是非ともゆらゆら帝国の素晴らしさに触れてほしいし、あわよくば今回の記事をきっかけに、彼らの楽曲に興味を持った人が増えればなお嬉しい。

最後まで不明瞭だったゆらゆら帝国の姿をあなたが見ようとしたとき、きっとそこには新たな世界が広がっているはずだ。

知識深める音楽コラム

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