まずは当日の様子を見てほしい。
第二回サイリウムダンスバトル世界大会ダイジェスト映像
この競技の名は「サイリウムダンス」。その名の通りサイリウムを持ってパフォーマンスを披露するダンスのジャンルであり、アイドルライブやアニソンイベントなどでファンが生み出したヲタ芸から発展したカルチャーである。近年プレイヤーが爆発的に増加し、腕前を競い合うバトルイベントも数多く開催されるようになったサイリウムダンス。独立したカルチャーとして発展するその最前線では何が起きているのだろうか。
年間を通して技を磨いてきたサイリウムダンサーたちが頂点を決めるべく競い合った白熱の第二回サイリウムダンスバトル世界大会の模様をレポートしていこう。
取材・文:オグマフミヤ 編集:山口若葉 撮影:Yamazaki Yuichi
独自の文化を形成するサイリウムダンス
2019年12月22日。会場である神田明神ホールは、秋葉原にほど近いこともあってアニソンやアイドル系のイベントが行われることの多いイベントホールだが、この日ばかりは少々普段と雰囲気が異なる。観客として大会を見守るべく集ったサイリウムダンスファンたちは、オタクというより系統としてはダンサーに近く、独自の文化が形成されていることが早くもうかがえる。 世界中の予選を勝ち抜いた選手たちが登場。近年勢いを増す台湾や中国の猛者たちを中心とする海外勢、発祥の地のプレイヤーとして闘志を燃やす日本勢。総勢15名がたった一つの玉座をかけて競い合う。優勝者には賞金や景品などに加え、株式会社ルミカによる1年間のスポンサードを受けられるとあって、文字通り人生を左右する戦いだ。 そしてソロ部門1回戦が開始。ソロ部門では先攻と後攻に別れ、それぞれのパフォーマンスの出来をオーディエンスと審査員6人でジャッジし、合計7票のうち多くの票を獲得したプレイヤーが勝利となる。
プレイヤーがポジションにつくと、まずバトルDJがイントロを流す。そこでどの曲が流れるのかを理解し、構成を組み立て、サビで実際にパフォーマンスを行うというのがバトルの流れ。審査基準は楽曲の理解度や動きの正確さ、そして単純なかっこよさなど多岐に渡るが、重要なのは見るものの心を揺らすことができるかどうかだ。 一回戦初戦は香港代表のKagura選手 VS シンガポール代表のHaruka選手のバトル。挨拶もそこそこに、ステージ中央のポジションにプレイヤーがスタンバイすると、一気に空気が張り詰める。開幕戦一本目に選ばれたビートはアニソンの大定番「Butter-fly」だ。大興奮のフロアからの風をめいっぱいに受けて、Kagura選手のムーブがはじまった。
大きく腕を振り回す回転技の数々を淀みなく連続させ、トップバッターとしての緊張を微塵も感じさせない堂々たるパフォーマンスをみせたが、Haruka選手も負けじとダイナミックな技の連鎖で返してみせる。僅差でHaruka選手が勝利を収めるが、1戦目からあまりのレベルの高さに会場の期待が高まっていくのを感じられた。 一回戦第二試合は東京代表Osususushi選手 VS マニラ代表Protektor選手のカード。満を待しての気鋭日本勢登場に大きな歓声があがる中、先攻Osususushi選手。ド派手なムーブを繰り出して、後攻へプレッシャーをかける。対するProtektor選手は緩急のついた見事なパフォーマンスを披露するが、期待のホープの進撃は阻めず、Osususushi選手が勝利。 サイリウムが描き出す光の軌跡が美しいのはもちろんだが、ここまで見ただけでも様々な技の種類があり、プレイヤーによってパフォーマンスは千差万別なことに気づかされる。だがまだ大会は序盤も序盤、底知れぬサイリウムダンスの魅力を思い知るのはまだまだこれからだ。
想像以上に楽しいぞ…?
予選Bブロックの戦いが始まる。ソウル代表のBLIND選手 VS 台北代表のHong選手のバトルは、近年勢いを増すコミュニティの代表同士の対決に。バトルビートは「海色」と「吹雪」というアニメ「艦隊これくしょん-艦これ-」のOPEDが選ばれるという熱い展開。
事前の期待通りハイレベルな技の応酬となったが、前回は予選準優勝で決勝出場を逃したというHong選手が激闘を制した。 つづいてロサンゼルス代表のAJIKA選手 VS 東京代表Clifford選手の対決。大柄な体格を活かしたアクロバティックな技を繰り出すAJIKA選手だったが、Clifford選手の表現力がリーチの差を上回り、日本勢としての意地を見せつけた。 上海代表のHazuki選手 VS Web予選から勝ち上がったP-kun選手のバトルは、小柄なプレイヤー同士テクニカルな戦いになるかと思いきや、お互い腕を目一杯に振り回してのダイナミックな展開へ発展。一回戦随一の真っ向勝負は、前回大会ファイナリストのHazuki選手に軍配が上がる。 それぞれ異なった哲学をぶつけあうスタイルウォーズがあるかと思えば、敢えてムーブを合わせるガチンコ勝負もあって、1回戦からバチバチのバトルが展開されていた。これにはサイリウムダンスバトル初体験の筆者も大興奮で、益々のめり込んでしまう。
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