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上坂すみれ、倉持由香も被害に…Twitterクソリプの是非 弁護士に聞いた現状

刑事事件の可能性は?

ここまでは「民事」についてを考えました。では、「刑事」はどうでしょうか。

刑事事件は、要するに、有罪になれば刑務所に送られる手続きということになります。なお、罰金の場合でも、罰金が支払えなければ、判決で定められる割合に従った日数だけ刑務所へ行かなければなりません。

刑事罰というのは、国家が強制的に自由を奪うものですから、当然、その取り扱いは慎重にならざるを得ません。また、どれほどひどい行為であったとしても、刑法その他法律に書かれた刑事罰を科せられるメニューになければ罪に問えません。

いわゆるクソリプに関係しそうな犯罪は、脅迫罪(刑法222条)、強要罪(刑法223条)、名誉毀損罪(刑法230条)、侮辱罪(刑法231条)、ストーカー行為等規制法違反などが挙げられます。それぞれの違いについて見ていきましょう。
脅迫罪
脅迫罪は、生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨の告知をした場合に該当します。

例えば、「○○を殺してやる」などの殺害予告がこれに当たります。貞操に対する害悪の告知も脅迫罪に該当するといわれていますから、「○○をレイプしてやる」といったものも該当します。

また、害悪の告知は、告知者が関与できるという「程度」が感じられるものが必要です。例えば、「雷を当てて殺してやる」といったとしても、磯野波平さんのように自由に雷を落とす力を持っていない限り、告知者が関与して害悪を与えることはできませんから、脅迫罪には当たりません。

ネットの書き込みの場合、お互い見ず知らずで「いかにして危害を加えるのか?」という点が問題になり得ると思います。ただ、いわゆるネットの「特定班」と呼ばれる人たちのスキルは凄まじいものがありますから、個人的には、やろうと思えば案外簡単にできるのではないかと感じています。
強要罪
強要罪は、生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときに成立します。

要するに、脅迫罪または暴行罪+義務のない行為の強要になります。「殺すぞ。服を脱げ」などが典型例です。

注意しないといけないのは、脅迫または暴行が必要ということで、単に「脱げ」「パンツ見せろ」「やらせろ」というだけだと、前後の発言にもよりますが強要罪に該当しない可能性もあります。
名誉毀損罪、侮辱罪
名誉毀損と侮辱はわかりにくいのですが、以下のように分類できます。

1.名誉毀損:事実を摘示して社会的評価を下げる
2.侮辱:事実の摘示なく社会的評価を下げる

区別が難しい事例も多いのですが、例えば、「昨日○○が番組スタッフとホテルへ入っていくのを見たぞ」というと名誉毀損に、「○○は男だったら誰でもいいんだな」となると侮辱になります。

なお、いずれも「公然とされること」が必要ですが、ネットの場合は基本的には公然といって良いでしょう。
ストーカー行為等規制法
ストーカー行為等規制法は、名誉を害する事項や性的羞恥心を害する事項の告知を反復してすることを言います。

ただ、「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」がなければならないので、冷やかし目当ての場合、該当しないことになってしまいます。

刑事告訴も迅速な対応が必要

これらの犯罪に該当しうる場合は、「刑事告訴」を行うことで、警察に捜査をしてもらうことができます。告訴は、相手方が不特定でもできます。また、警察は、告訴を受理すると捜査をする義務が生じます。

ただし、一般論として言えば、告訴の受理に積極的とは言い難いところです。しかし、いざ捜査するとなれば、捜査関係事項照会や令状を用いて、プロバイダから直接情報を取ることができるなど、強力な捜査権限を行使することができます。

ただ、いかに警察が協力といえども消えたログまで復活させることはできませんから、刑事告訴を考えるにしても迅速な対応が必要です。

法的手続きのリスクも考えておく必要がある

法的手続の説明からは少し離れるのですが、何か行動を起こすことで第2、第3の被害が生じることがあるのも考えておくべきです。

一般的に、炎上はせいぜい3日程度で収まることが多いです。しかし、法的手続きをとったり、犯人が逮捕されたりすると、そのことがきっかけとなって炎上が再発することも少なくありません。

やられた側にしてみたら踏んだり蹴ったりではあるのですが、少なくとも再炎上のリスクは頭に入れて判断をした方が良いと思います。

また、検索結果からの削除については、最高裁決定によって、認められるハードルがかなり上がってしまいましたが、認められたとしても、検索結果から削除されたことが目立つようになる可能性があることも指摘されています(参考リンク)。

ネットの世界は、顔の見えない圧倒的不特定多数の者を相手にしないといけませんから、モグラたたきのように、どこかで対策を取っても、また別のトラブルが生じる可能性があります。そのことも念頭におかないと、結果的に、さらに苦しむこともあり得るのです。

2017年9月時点の結論:現状の法制度はネット社会に対応しきれない

……以上が、伊藤弁護士からの寄稿だ。あらためて要旨をまとめてみよう。

・性的クソリプ問題は「民事」か「刑事」かで法的手続きの種類が分かれる。その分類は受けている被害の状況によって判断が異なる。

・法的手続をとる場合は「なにをゴールにするか」を最優先で、かつ迅速に考える必要がある。ネット関係の事件でのゴールは「ネット上からの情報の削除」「書いた本人までたどり着くこと」の2つがある。

・民事として、書き込んだ本人に対する責任を追求するなら、まずは「本人特定」が必要だが、そのためのIPアドレスの特定や個人情報の開示は各サービスの対応による。ただし、現状では本人特定をしても、被害者には損害賠償程度の救済しか選択がない。

・刑事事件としては脅迫罪、強要罪、名誉毀損罪、侮辱罪、ストーカー行為等規制法違反などが挙げられるが、それぞれで該当する内容は異なる。該当した場合は刑事告訴ができ、警察が捜査に当たれる。

・民事、刑事いずれにしても、法的手続きを取ることで二次被害が起こる可能性もありえる。

伊藤弁護士も記しているが、「取れる手段はある。しかし、現状の法制度はネット社会に対応しているとは言えない」というのが今回の結論になる。

もちろんそれでも問題の程度はあり、逮捕者が出ていることから全てが悲観的というわけでもないが、想像以上に対処が難しいのも事実だろう。

今日もどこかで、性的クソリプに心を痛める被害者がいる。その痛みだけが拡散し、異常者のしたり顔は見えないまま。そんなインターネットを、いまの僕たちは生きている。

写真:ぱくたそ(www.pakutaso.com)

浮き彫りになる課題

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