2016年5月に逝去した冨田勲さんが手がける『リボンの騎士』や『ジャングル大帝』などの楽曲を、生楽器のバック演奏に合わせて、初音ミクや重音テトらバーチャルシンガーが歌う。そして、トークパートも交えながら、手塚アニメの音楽を現代に甦らせる作品だ。
同時に、漫画家・手塚治虫さんの生誕90周年、作曲家・冨田勲さんの生誕85周年、さらには歌声合成ソフトウェア・初音ミクの発売10周年──三者のアニバーサリーを記念して企画されたものでもある。
初音ミクの開発者であるクリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉さん、「VOCALOID初音ミクとUTAU重音テトの歌の先生」という役割を担った声優の前田玲奈さん。
そして手塚アニメの多くで脚本を担当してきた経歴を持ち、本作でもトーク部分を含めた全体のストーリー構成を手がけたミステリー作家の辻真先さんの3人に集まっていただいた。
3人の話を通じて、やや判然としない「表情豊かな初音ミク」の実態から、制作中に行われた技術的ポイントまで、本作の全貌を紐解いていく。まずは前田さんが担当した謎のポジション「歌の先生」とは──?
文:恩田雄多 写真:小原泰広 編集:藤木涼介
「手塚治虫と冨田勲は大喜び」でも関係者は困惑?
──手塚治虫さん、冨田勲さん、そして「初音ミク」。それぞれのアニバーサリーに重なったアルバムとなっていますが、そもそも制作のきっかけからお聞かせください。佐々木 2012年頃から、冨田さんとは以前からコラボレーションさせていただいていたんです。
2016年11月には冨田勲さんの遺作を演奏する「スペース・バレエ・シンフォニー 『ドクター・コッペリウス』」でもミクを用いた追悼公演させていただいて。そこで一連のプロジェクトが一段落したんです。
辻 それはまた非常に漠然とした……(笑)。
佐々木 そこから企画を詰めていくなかで、日本コロムビアさんからは、冨田さんが手がけた手塚治虫作品の音楽集や、追悼公演『ドクター・コッペリウス』のライブ音源がリリースされました。
そういったことも背景にしながら、アニバーサリーという節目を通じて三者が繋がったり、手塚治虫さんとお仕事をされていた辻さんやジャズピアニストの佐藤允彦さんの参加が決まって。徐々に企画としての説得力が高まっていったんです。 ──アルバムへのオファーを受けたとき、辻さんと前田さんはどのように思われましたか?
辻 手塚先生と冨田さん、それぞれと半世紀以上の付き合いがあるので、「あの2人だったら大喜びする!」と、まず思いましたよ。
冨田さんはミクちゃんを知っていたし、手塚先生だったら、たとえミクちゃんを知らなくても間違いなく乗り気になる。だったら僕も乗るしかないなと。
前田 私は「VOCALOIDの歌の先生をやってください」と言われてたんです。それがレコーディングの途中から「ミクさんとデュエットもするかもしれない」「楽しく歌うような演技もお願いするかもしれない」と。 前田 それを聞いて、ミクさんに歌を教えるのも、デュエットで歌うのも私──どっちも私じゃん! そもそも「初音ミクの歌の先生」って何!? って(笑)。
もちろん、すごく嬉しかったんですけど、ちょっと困惑してしまいました。
2件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:1140)
辻先生、かわいすぎでは??
匿名ハッコウくん(ID:1137)
辻さんがすごくおちゃめなんですよね。