「ゲーム実況は線香花火みたいに消えそう」
2015年9月、ドワンゴ主催のゲーム実況イベント「闘会議」が開催されていたりと、ゲーム実況の大きな盛り上がりが予想されていた中、ゲーム実況人気への危機感を線香花火に喩えたことでネット中の話題をかっさらったもこうさん。
以降、その歯に衣着せぬ言動や趣向を凝らした動画・生放送が急激に評価され、ゲームアプリにキャラクターとして登場したり、企業タイアップやドワンゴが制作する公式生放送番組にレギュラー出演するなど、これまで企業やドワンゴから完全スルーを貫かれていた状況が一変。 いまやネットで見ない日はない程の動画投稿主としての地位を築いている。
システムエンジニアとして会社勤めだったもこうさんは、現在は仕事を辞め、フリーで活動。2009年にニコニコ動画にゲーム実況動画「厨ポケ狩り講座」を投稿してから7年の月日が経ち、表舞台での活躍が増えた今、王は何を思うのか──。
動画投稿主として生きることの難しさ、お金、そしてゲーム実況を取り巻く環境。
毎年恒例となっている、もこうさん単独インタビューをお送りする。
取材・文/吉田雄弥
もこう そうですね。去年の8月1日付けでSEの仕事を辞めました。もともと、会社に熱意もあんまりなかったんですよ。それである朝、会社の上司に「君、検索したらいろいろ出てくるんだよ」って言われました。
「しんどいっすわ……」ってオーラ出しまくりで出社してたんですけど、朝4時まで生配信やってたことが上司に全部筒抜けで(笑)。僕、そん時すっげー顔が真っ赤になっちゃってビクってしたんですけど、動揺を隠そうとして「あ、そうっす。知ってたんすねー」ってすました感じで返しちゃって……。
これでもうアカンと思って、仕事を辞めようと決心しました。後日、「僕、本当にやりたいことが他にあるんです」って上司に話したらわかってくれましたね。 ──すんなりと受け入れてもらえたんですか?
もこう ほんまは朝まで生配信して寝不足で出社するようなことなんてやったら普通に怒られると思うんですけど、上司が入社当時から、私生活まで僕のことをサポートしてくれるいい人だったんですよ。
だから、正直甘えちゃってたんやと思います。あの時上司にバレてなかったら、まだ仕事を続けていたのかもしれない。
で、今は無職です。
──仕事を辞めて動画の広告収入だけで生活しようとして失敗した人が時々話題になっている中で、不安はなかったんでしょうか?
もこう 仕事を辞めた段階で、ニコニコチャンネルの収益とか、動画の広告収入である程度はなんとか生計が立てられるレベルだったので正直生活には困らなかったですね。ただ、自分の職歴を振り返ると、最初に新卒で入った会社を10ヶ月で辞めて、それから8ヶ月のブランクを経て転職して、そこも1年くらいで辞めちゃった。
この先、僕がこの世界(動画投稿主)でダメになってしまった時に、社会復帰することへのハードルがすごく上がっちゃったなって不安はありましたね。
社会にすがっていたいというか、何かに属していたいという気持ちはあって、社会にいる時は絶対に何かに守られているという安心感があったんですよね。その安心感を、自分から切り離すのはやっぱり不安ですよね・・・。
もこう 特に10月から12月あたりにドワンゴさんと直接やり取りする機会がめちゃめちゃ増えて、企業が絡んでいる番組への出演がたくさん増えましたね。
──今日はその辺を特におうかがいしたかったんですけど、今までドワンゴってもこうさんのような、ちょっとやんちゃな感じのゲーム実況主さんとか、いわゆる雑談系生主さんの存在を一切無視するスタンスだったじゃないですか? それが急に公式番組に呼んだり、去年末くらいから企業がらみの広告に起用していくケースが増えてきたなって感じていて。「雑談」配信者 公式特番(ひろゆき、横山緑、NER、もこう...)
もこう あーそうそうそう、ずっと無視され続けてきました。正解です。ドワンゴが僕たち、雑談系生主を舐めてたんですよ。でも、一番人呼べんのって昔から雑談生主なんです。僕らは体を切り売りしてるし、歌い手とか中途半端なゲーム実況主なんかよりも格段に数倍の数字を持ってる。
それがなんでちょっと小綺麗な歌い手とかゲーム実況主よりも扱いが下なんやって、ずっと思ってました。ようやく、去年くらいから僕たちの価値にドワンゴが気づきだして、いまやっと僕たちを(PRとして)使う動きが出てきた。僕だけじゃなくて、他の雑談系生主も同時期に一気に前に出てくるようになりましたからね。 もこう もう、「なんであいつらが出てて、俺が呼ばれねーんだよ」ってずっと思ってましたよ。別に出たいわけじゃない、呼ばれたい。わかります? この感じ。出たいんじゃないんですよ。
──え、断るんですか?
もこう 求められたいんですよ。向こうが僕を好きっていう気持ちだけを噛みしめたい。実際、出るかどうかは別っていう(笑)。
──でもほんとに、いまじゃ見ない日はないくらいいろんなネット番組に出てますよね。
もこう 去年の10月にドワンゴから初めて僕に連絡がきて、※1『ジャンプ+』の公式生放送に出たくらいから一気にきましたね。ちなみにノーギャラでした。ノーギャラでとんかつだけ食べました。
──よく受けましたね……。
もこう 「出ることで、もこうさんの知名度があがります」って言い分で、僕も『ジャンプ+』やし、マックス村井とかMSSPとかも共演者としておったんで、気持ちが舞い上がってまんまと出ますって言いましたね。 もこう 当然、僕もマックスむらいとMSSPと並べるかと思ってたら、当日なぜか自分だけ集合場所が違って。
──え!?
もこう なぜか僕だけ新橋のとんかつ屋だったんですけど。個人的にはドワンゴの僕に対する扱いは正しかったと思ってるんですけど、視聴者が「お前、もっと自分のことを大事にしろよ」って言ってくださって。
──僕も見ていて心が痛かったです……。
もこう ほんと申し訳ないです。でも、それから「あ、俺という存在は自分だけの問題じゃないんだ」って意識が芽生えてきました。受ける仕事に対してシビアになりましたね。
もこう 番組出演とかの依頼は、自分から営業とかしなくてもめちゃめちゃくるんですよ。
ただ、あくまで僕は動画と生配信が本業。動画や生配信に課金してくださるスタイルとニコニコ動画やYouTubeの再生数に応じて発生する広告収入を一番にしていきたい。企業絡みのお仕事は、本当に良いお話をいただいたら受けるって感じにしています。あくまで+αの位置付けで。
(受けるかどうかは)依頼してくる企業が、本気で僕のことを使いたいと思ってるのかどうかで判断するようにしてます。結局、それって汚い話ですけど報酬とか扱いで見るしかないんですよね。もう、そこでしか判断したらアカンなって。
情でノーギャラで出演したら、お互い幸せになれないし、何よりも視聴者に失礼なんで。あとは自分が楽しいと思うことだけをやるようにしてる。
自分が本気で楽しめるって思える仕事しか受けない、僕はそれで1回失敗してるんで。
──MCが降板になっちゃったやつですか?
もこう そうそうそう。『崩壊学園』というゲームの番組でMCやったんですけど。僕がゲームに対して全然興味を持てていなかった。向こうも僕のニコ生の数字だけを見て、軽い気持ちでオファーをくれてた。 もこう 当初、5回やる予定だったのが2回で打ち切りになって。その2回も完全になかったことになってて、チャンネルもアーカイブも全部消されて、いまは新しいメンバーで再起してるみたいです。
どっちにも落ち度があったと思ってます。僕は僕で、仕事で受けたんやったらちゃんとゲームやらなあかんかった。けれど、どうしても興味が持てなくてできなかった。
──『崩壊学園』の件みたいに、もこうさんが有名なってくると、やりたくなかったり、興味が持てないゲームをプレイしないといけない場面がきそうですよね。そういう時、どうしてるんですか?
もこう (無理やりプレイしても)やっぱり楽しんでないのは視聴者にバレちゃうんですね、ははは(笑)。もともと普通の会社員ができなかったから、こうして動画投稿とかしてるわけじゃないですか。だから、結局自分が楽しくないと続かないんですよ。それで、仕事をシビアに選ぶようになったっていうのもありますね。
※1 2015年10月3日。「少年ジャンプ+」創刊1周年を記念して行われたドワンゴ制作のニコニコ生放送特別PR番組での出来事。マックスむらい、MSSP、コジマ店員という有名YouTuberやゲーム実況主に並び、もこうさんの出演が発表。もこうさんにとってドワンゴの公式生放送初出演、さらに『週刊少年ジャンプ』本誌にも告知が掲載されたこともあり、もこうさんも積極的に番組を告知するなど、番組配信開始前から大きな注目を集めていた。
しかし、いざ番組が配信されると、もこうさんのみ別の場所での出演で他の共演者と並ぶことはなかった。加えて紹介もされない、一度も誰からも名前を呼ばれないなど、「いない者扱い」されている番組の演出に違和感を感じた視聴者が続出。「公式いじめ」「放送事故」「客寄せチンパンジー」など、物議をかもすこととなった。もこうさん自身は、「僕は本当に今回の放送、良いポジションを用意していただけたと思っております」とブログで綴っている
2015年9月、ドワンゴ主催のゲーム実況イベント「闘会議」が開催されていたりと、ゲーム実況の大きな盛り上がりが予想されていた中、ゲーム実況人気への危機感を線香花火に喩えたことでネット中の話題をかっさらったもこうさん。
以降、その歯に衣着せぬ言動や趣向を凝らした動画・生放送が急激に評価され、ゲームアプリにキャラクターとして登場したり、企業タイアップやドワンゴが制作する公式生放送番組にレギュラー出演するなど、これまで企業やドワンゴから完全スルーを貫かれていた状況が一変。 いまやネットで見ない日はない程の動画投稿主としての地位を築いている。
システムエンジニアとして会社勤めだったもこうさんは、現在は仕事を辞め、フリーで活動。2009年にニコニコ動画にゲーム実況動画「厨ポケ狩り講座」を投稿してから7年の月日が経ち、表舞台での活躍が増えた今、王は何を思うのか──。
動画投稿主として生きることの難しさ、お金、そしてゲーム実況を取り巻く環境。
毎年恒例となっている、もこうさん単独インタビューをお送りする。
取材・文/吉田雄弥
SEの仕事を辞め、動画投稿主として生きる決断
──昨年のインタビューを収録した際(2015年7月)、もしかしたら仕事を辞めるかもしれないとお話しされてましたよね。もこう そうですね。去年の8月1日付けでSEの仕事を辞めました。もともと、会社に熱意もあんまりなかったんですよ。それである朝、会社の上司に「君、検索したらいろいろ出てくるんだよ」って言われました。
「しんどいっすわ……」ってオーラ出しまくりで出社してたんですけど、朝4時まで生配信やってたことが上司に全部筒抜けで(笑)。僕、そん時すっげー顔が真っ赤になっちゃってビクってしたんですけど、動揺を隠そうとして「あ、そうっす。知ってたんすねー」ってすました感じで返しちゃって……。
これでもうアカンと思って、仕事を辞めようと決心しました。後日、「僕、本当にやりたいことが他にあるんです」って上司に話したらわかってくれましたね。 ──すんなりと受け入れてもらえたんですか?
もこう ほんまは朝まで生配信して寝不足で出社するようなことなんてやったら普通に怒られると思うんですけど、上司が入社当時から、私生活まで僕のことをサポートしてくれるいい人だったんですよ。
だから、正直甘えちゃってたんやと思います。あの時上司にバレてなかったら、まだ仕事を続けていたのかもしれない。
で、今は無職です。
──仕事を辞めて動画の広告収入だけで生活しようとして失敗した人が時々話題になっている中で、不安はなかったんでしょうか?
もこう 仕事を辞めた段階で、ニコニコチャンネルの収益とか、動画の広告収入である程度はなんとか生計が立てられるレベルだったので正直生活には困らなかったですね。ただ、自分の職歴を振り返ると、最初に新卒で入った会社を10ヶ月で辞めて、それから8ヶ月のブランクを経て転職して、そこも1年くらいで辞めちゃった。
この先、僕がこの世界(動画投稿主)でダメになってしまった時に、社会復帰することへのハードルがすごく上がっちゃったなって不安はありましたね。
社会にすがっていたいというか、何かに属していたいという気持ちはあって、社会にいる時は絶対に何かに守られているという安心感があったんですよね。その安心感を、自分から切り離すのはやっぱり不安ですよね・・・。
ようやくドワンゴが僕たちの価値に気づいた
──仕事を辞められてから、何か変化はありましたか?もこう 特に10月から12月あたりにドワンゴさんと直接やり取りする機会がめちゃめちゃ増えて、企業が絡んでいる番組への出演がたくさん増えましたね。
──今日はその辺を特におうかがいしたかったんですけど、今までドワンゴってもこうさんのような、ちょっとやんちゃな感じのゲーム実況主さんとか、いわゆる雑談系生主さんの存在を一切無視するスタンスだったじゃないですか? それが急に公式番組に呼んだり、去年末くらいから企業がらみの広告に起用していくケースが増えてきたなって感じていて。
それがなんでちょっと小綺麗な歌い手とかゲーム実況主よりも扱いが下なんやって、ずっと思ってました。ようやく、去年くらいから僕たちの価値にドワンゴが気づきだして、いまやっと僕たちを(PRとして)使う動きが出てきた。僕だけじゃなくて、他の雑談系生主も同時期に一気に前に出てくるようになりましたからね。 もこう もう、「なんであいつらが出てて、俺が呼ばれねーんだよ」ってずっと思ってましたよ。別に出たいわけじゃない、呼ばれたい。わかります? この感じ。出たいんじゃないんですよ。
──え、断るんですか?
もこう 求められたいんですよ。向こうが僕を好きっていう気持ちだけを噛みしめたい。実際、出るかどうかは別っていう(笑)。
──でもほんとに、いまじゃ見ない日はないくらいいろんなネット番組に出てますよね。
もこう 去年の10月にドワンゴから初めて僕に連絡がきて、※1『ジャンプ+』の公式生放送に出たくらいから一気にきましたね。ちなみにノーギャラでした。ノーギャラでとんかつだけ食べました。
──よく受けましたね……。
もこう 「出ることで、もこうさんの知名度があがります」って言い分で、僕も『ジャンプ+』やし、マックス村井とかMSSPとかも共演者としておったんで、気持ちが舞い上がってまんまと出ますって言いましたね。 もこう 当然、僕もマックスむらいとMSSPと並べるかと思ってたら、当日なぜか自分だけ集合場所が違って。
──え!?
もこう なぜか僕だけ新橋のとんかつ屋だったんですけど。個人的にはドワンゴの僕に対する扱いは正しかったと思ってるんですけど、視聴者が「お前、もっと自分のことを大事にしろよ」って言ってくださって。
──僕も見ていて心が痛かったです……。
もこう ほんと申し訳ないです。でも、それから「あ、俺という存在は自分だけの問題じゃないんだ」って意識が芽生えてきました。受ける仕事に対してシビアになりましたね。
もこう 番組出演とかの依頼は、自分から営業とかしなくてもめちゃめちゃくるんですよ。
ただ、あくまで僕は動画と生配信が本業。動画や生配信に課金してくださるスタイルとニコニコ動画やYouTubeの再生数に応じて発生する広告収入を一番にしていきたい。企業絡みのお仕事は、本当に良いお話をいただいたら受けるって感じにしています。あくまで+αの位置付けで。
(受けるかどうかは)依頼してくる企業が、本気で僕のことを使いたいと思ってるのかどうかで判断するようにしてます。結局、それって汚い話ですけど報酬とか扱いで見るしかないんですよね。もう、そこでしか判断したらアカンなって。
情でノーギャラで出演したら、お互い幸せになれないし、何よりも視聴者に失礼なんで。あとは自分が楽しいと思うことだけをやるようにしてる。
自分が本気で楽しめるって思える仕事しか受けない、僕はそれで1回失敗してるんで。
──MCが降板になっちゃったやつですか?
もこう そうそうそう。『崩壊学園』というゲームの番組でMCやったんですけど。僕がゲームに対して全然興味を持てていなかった。向こうも僕のニコ生の数字だけを見て、軽い気持ちでオファーをくれてた。 もこう 当初、5回やる予定だったのが2回で打ち切りになって。その2回も完全になかったことになってて、チャンネルもアーカイブも全部消されて、いまは新しいメンバーで再起してるみたいです。
どっちにも落ち度があったと思ってます。僕は僕で、仕事で受けたんやったらちゃんとゲームやらなあかんかった。けれど、どうしても興味が持てなくてできなかった。
──『崩壊学園』の件みたいに、もこうさんが有名なってくると、やりたくなかったり、興味が持てないゲームをプレイしないといけない場面がきそうですよね。そういう時、どうしてるんですか?
もこう (無理やりプレイしても)やっぱり楽しんでないのは視聴者にバレちゃうんですね、ははは(笑)。もともと普通の会社員ができなかったから、こうして動画投稿とかしてるわけじゃないですか。だから、結局自分が楽しくないと続かないんですよ。それで、仕事をシビアに選ぶようになったっていうのもありますね。
※1 2015年10月3日。「少年ジャンプ+」創刊1周年を記念して行われたドワンゴ制作のニコニコ生放送特別PR番組での出来事。マックスむらい、MSSP、コジマ店員という有名YouTuberやゲーム実況主に並び、もこうさんの出演が発表。もこうさんにとってドワンゴの公式生放送初出演、さらに『週刊少年ジャンプ』本誌にも告知が掲載されたこともあり、もこうさんも積極的に番組を告知するなど、番組配信開始前から大きな注目を集めていた。
しかし、いざ番組が配信されると、もこうさんのみ別の場所での出演で他の共演者と並ぶことはなかった。加えて紹介もされない、一度も誰からも名前を呼ばれないなど、「いない者扱い」されている番組の演出に違和感を感じた視聴者が続出。「公式いじめ」「放送事故」「客寄せチンパンジー」など、物議をかもすこととなった。もこうさん自身は、「僕は本当に今回の放送、良いポジションを用意していただけたと思っております」とブログで綴っている
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もこう
動画投稿主/生主
2009年5月よりニコニコ動画にて活動開始。実況動画「厨ポケ狩り講座」シリーズを開講。2010年9月までに約55本もの講座動画をリリースし、一躍名をはせる。その後は実況動画にこだわらず、多ジャンルに手を出す。歌ってみた、料理、エンターテイメント、自然カテゴリ等。2014年現在、Web上に投稿した動画の総再生回数は3500万回以上。ブログPV月間50万。
Twitter(@mokouliszt)
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