タイパ重視の時代になぜ謎解きは流行ったのか?
──「タイパ(タイムパフォーマンス)」という価値観が生まれた現代において、時間をかけて解く謎解きがブームとなったのは不思議に思います。
山本祥彰 僕はむしろ、タイパ重視の時代に謎解きは合っている気がしていますけどね。
そもそもタイパが悪いと感じてしまうというか、すぐに答えが知りたくなくなってしまうのって、考える過程が楽しくないからだと思うんです。
逆に、単位時間の中でいかに楽しく頭を使うかという観点から見ると、かなり謎解きは優れている。
山本祥彰 例えば1時間の謎解きだったら、その1時間で「うまくいけばクリアできるかも」ぐらいのギリギリのラインを攻めて設計されていることが多いんです。
ちょうど1時間頭をフル回転させて、たどり着くか、たどり着かないみたいなところが味わえる。それって、かなりタイパがいい体験なんじゃないかなと思いますね。
川上諒人 謎解きで味わえるのって、「自分が解けた」という“代替不可能な成功体験”なんですよね。
映画を倍速で見るのとは違って、自分の行動や、考えたという事実がそのまま面白さに直結している。
自分が活動して、その労力に見合った面白さが手に入るからこそ、タイパという価値観にとらわれずに成立しているんだろうな、と。
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──謎解きは、一歩間違えるとただの面倒な作業にもなってしまう難しさもあると思います。良い謎解きと悪い謎解きの境界線はどこにあるのでしょうか?
山本祥彰 私は答えを知った時に、「たしかに」と思える納得感があるかどうかだと思っています。
たとえ過程が面倒な作業だったとしても、最終的な答えにたどり着いた時に「だからこの作業をしてたんだ」と思えるような意味があれば、面白さに繋がるんです。
川上諒人 解き手が最終的に「面白かった」と思えるかどうかが重要ですよね。
たとえ単調な作業であっても、最後に「このための伏線だったのか」と納得できる面白さが提供されればいいのですが、何の意味もなければただの作業になってしまいます。
最終的に得られる感情で差が決まるんだと思います。
山本祥彰 納得感を持たせるために、あえて謎解きの内容を削る作業もよくします。
途中にどれだけ意味のある作業を仕込んでいても、最後までゴールしてもらえなければ意味がありません。だからこそ、みんながちゃんと走りきれるような設計にしたいと考えています。
山本祥彰「考えることを楽しめる人を増やしたい」
──昨今の謎解きやミステリーのトレンドについてはどう見ていますか?
山本祥彰 最近だとARG(代替現実ゲーム)やモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)みたいな、日常と地続きの没入型コンテンツがかなり増えてると思いますね。
そもそも、その1個前に流行ってたリアル脱出ゲームみたいなのって、難題を解決するためにある程度「非日常的な空間」に飛ばされるみたいな、そういう非日常的な体験が味わえてそれが楽しいというところが重要だったじゃないですか。
それが今は、より身近なところに潜む謎を楽しむような、没入型のコンテンツが流行ってるのかなと思いますね。
川上諒人 昔は「謎解き単体」みたいなところからはじまっていたのに対して、今は体験がより重視されるようになっていることが多くて。
その中でも、やっぱりARGとかが流行っているのはリアリティが結構重視されている結果というか。
──NazoLockとして、そういったARGやモキュメンタリーへの挑戦は考えていますか?
山本祥彰 今のところはないですね。NazoLockとしては、もうちょっと根源的な「考えるワクワク」を提供していきたいと考えています。
山本祥彰 僕らは、NazoLockの活動を通して「考えること自体が楽しいと思う人」を増やしたいと考えているんです。その入り口として、謎解きが使えるんじゃないかなと。
だから、なるべく多くの人に謎解きを体験してもらって、考えて謎が解けたり解けなかったりする体験が楽しいんだと知ってほしいですね。
川上諒人 そうですね。やっぱり広くいろんな人に、成功体験を味わって「自分、賢けえ!」って思ってほしいですからね。
──本日はありがとうございました! 最後に、お二人が考える謎解きの一番の魅力について教えてください。
山本祥彰 謎解きの良いところは、答えを導く鍵が必ず自分の中にあることだと思います。
もちろん制作者との戦いでもあるんですが、基本的には解けるようにつくられているはずなので、解けなかった時の反省点は自分にある。
解けるかどうかは「自分との戦い」なんですよね。他のコンテンツだと理不尽でどうしようもなく感じられてしまうこともあると思うんですけど、謎解きは自分の力で乗り越えられる。そこが楽しいところですね。
川上諒人 日常生活でピンチを切り抜けて達成感を味わうことってなかなかありませんが、謎解きは「達成できるかもしれないピンチ」を差し出してくれます。
日常には達成できないピンチも多いので、自力で達成できるピンチが用意されているのは嬉しい体験ですよね。
これからも、そういった美味しい部分だけを集めた料理のようなものを提供していきたいです。
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