『幽艶』に込めたイラスト、音楽、映像へのこだわり
──今回は綿密な打ち合わせをせずに、それぞれが自由に作品をふくらませていくという特殊な制作方法を取っています。普段の制作と違った苦労やこだわったポイントはありましたか?
藤ちょこ 動画にする都合上パーツごとに細かく分けてお渡しする必要があったので、普段よりレイヤー分けを細かくする必要がありました。加えて普段あまり描かないレベルで背景もしっかり描きこんでいるので、かなり大がかりな作品になりましたね。
完成形を見ていただくと、キャラクターの膝くらいまでしか写ってないんですが、一応足元まで描いてあります。キャラクターで隠れてしまうような背景部分もしっかり描きこんでいます。
ただ動画としての動かしやすさを考えすぎると絵が硬くなってしまうので、とにかく絵として良いものをという意識で描きました。
藤ちょこさんの凄まじい描き込みが見て取れる『幽艶』
藤ちょこ 実は前からこういう共同制作に憧れがあったんです。ボカロPさんに相方的なイラストレーターさんがいて、新曲を出す時にいつもの座組でMVを出すみたいなことってあるじゃないですか。そういうのを見ていて、私もやってみたいとは思ってたんです。
ただ、そもそも私はイラストレーターの知り合いがあまりいないので、他のジャンルのクリエイターとなるとさらに少なくって……実現はかなり難しいと思っていました。
なので今回の企画に参加できたのが特別嬉しかったですし、この絵からどんな音楽と映像をつくってくれるんだろうって期待も大きかったです。
原口沙輔 僕は楽器の編成とかどういう音色にするのかみたいな全体の構成を決めるうえで、イラストの色合いや細かく描かれているデザイン、生き物の要素を拾いたいと思っていて。
イラストと直で対話するためにも、常にモニターにイラストを表示して自分のつくってる音と並べながら作業していました。
時折「これで合ってるかな?」って見比べるんですけど、傍から見ればかなり不思議な光景だと思います。
もう石田 今回はなるべく外部のアセットなどは使わず、いただいたイラストやモデルを使って映像をつくることを意識しました。ありがたいことにGALLERIAさんからパソコンの3Dモデルもいただいたので、外装を外したパーツなんかも配置しています。
曲の展開に合わせてそれぞれの担当パートのようなものを意識していて。動画だと最初のパートは藤ちょこさんをイメージしてイラストがメインになるような構成になっています。
次のパートは原口沙輔さんパートで、展開が変わっていくのに合わせて抽象的なモチーフを増やしていきました。そこからボーカルが入るパートは盛り上がるサビ的な部分なので、歌を担当した音声ソフト・重音テトさんっぽいオブジェクトをドーンと出してみました。
ここはかなりレンダリングに時間がかかりましたね。
重音テトを思わせるシルエットのオブジェクト
もう石田 その後の最後のパートは自分らしさを出すということを意識して、いただいた素材を自由に組み合わせて「創作」をテーマにつくっていきました。
原口沙輔 実は僕も曲をつくる中でパート分けというか、構成をつけていて。明確に伝えていたわけではなかったんですが、もう石田さんのパート分けは僕の中の想定とかなり近かったんです。
考えていたことが不思議と伝わっていたというのも、すごい嬉しかったですね。
原口沙輔が『幽艶』というタイトルに込めたクリエイターの美しさ
──色々と予想外なこともありつつもできあがった『幽艶』ですが、藤ちょこさんと原口沙輔さんは実際に映像を見てどう感じましたか?
藤ちょこ 想像していたものより、もっと素晴らしいものをつくっていただけたと思いました。
世界観や物語の広がりを感じますし、隠し要素的に重音テトさんがいたりパソコンの内部構造が使われていたり、情報量が凄まじくて何度見ても発見がありそうです。一時停止しながらじっくり見たくなります。
原口沙輔 「完成したな」と思いましたね。作品の完成って本当に難しくて、個人でつくってる時もチームでつくってる時も、真に作品が完成したって実感できることは本当に稀なんです。でもこの映像に関しては誰もが「完成」を感じる作品になったと思います。
もう石田 たしかに普段の制作だと、完成したというよりは期日までになんとか仕上げたと思うことが多くて……! とにかく定められた期間でどこまでやったかでしかないと思うことはあります。
藤ちょこ わかります。どこを完成とするかって本当に難しいですよね。私も納品用のデータをつくった後にやっぱり気になって直して、と何回も繰り返しちゃいます。
原口沙輔 僕も今回一度完成として送ったのに、仕上げを0からやり直したものを「やっぱりこっちで!」って送りなおしちゃったこともあって(笑)。
「完成」という言葉の重さにうなずき合う三人
──今作のタイトル『幽艶』は原口沙輔さんが名付けたそうですが、どのように決まったのでしょうか?
原口沙輔 元々はデモにとりあえずつけていたタイトルで、最終的に変わってもいいと思っていたんですが、そのまま決まってしまいました。
「幽艶」という言葉自体は今回の歌詞から連想したものです。イラストレーターがペンをとる姿、音楽家や映像作家であればパソコンに向かう姿になりますが、つくる人の手さばきは美しいと思っています。
今回の企画の意味はその美しさを表現できてこそ──という思いが歌詞やタイトルの言葉になっていきました。
藤ちょこ 私の方でもいくつか考えてはいたんですが、このタイトルをもらった時にもうピッタリだと思ってしまいました。
もう石田 自分からは出てこない言葉ですし、これしかないと思いましたね。
最前線で活躍するクリエイターがPCに求めるポイント
──「GALLERIA CROSSING」は、ハイパフォーマンスPCブランド「GALLERIA」が主催する企画でもあります。お三方はそれぞれPCを使って作品を制作していますが、こだわりはありますか?
もう石田 しっかりしたPCがないと仕事にならないので、マシン構成にはかなり気を使っています。
OSやソフトを置いておく用、キャッシュ用、素材用でSSDを3個使っていたりしますし、グラフィックボードやそのほかの部分もこだわっています。
スペックが足りなくてラグなどが起きてしまうとやる気が削がれてしまいますし、メンタルを整える意味合いもあるので、なるべく良いものを揃えるようにしています。
かつてノートPCで制作していたこともあるが、負荷の重さからデスクトップへと切り替えたというもう石田さん
藤ちょこ 私はそもそも機械に疎いので……そこまで強いこだわりがあるわけじゃないんです。ただ、今回の作品のようにサイズの大きな作品を描く場合は、やはりある程度のスペックがないとスムーズな作業ができません。
保存に時間がかかったりデータが飛んだりする場合もあるので、やはりなるべく良いものを使いたいとは思いますね。
──原口沙輔さんはステージ登壇前の楽屋でもノートPCで作業をされていましたが、作業環境にはどうこだわっていますか?
原口沙輔 今回もそうなんですが、僕はノートPCしか制作に使ったことがないんです。とにかくいつでも作業できることが重要なので、そのコンパクトさを持ちつつなるべくパワーのあるPCを探し求めています。
なにかを閃いたその時に形にしたいという思いが強いので、出先で作業することが多いんですよね。友だちとご飯を食べに行く時なんかにもPCを持っていってしまいます。持っていくだけで全く作業しないこともあるけど、どうしても心配で(笑)。
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