オカルト専門誌『ムー』監修による新作ボードゲーム「都市伝説ダウト『証拠より論』」が、株式会社ワン・パブリッシングより11月12日(水)に発売された。
このボードゲームは、「証拠よりも論(=話術)で相手を納得させる」をテーマにした心理戦ゲーム。開発の背景には「陰謀論にハマらない人の特徴」を科学的に検証しようとする試みがある。
「都市伝説」を疑いながら、熟慮性を高めることを目指した『証拠より論』
「陰謀論」とは、特定の組織や人物が社会を裏で操っているとする根拠不明の主張を指す。
コロナ禍では「ワクチンにICチップが入っている」といった噂がSNSで拡散し、社会的混乱を引き起こしたことが記憶に新しい。現在も世界各地で陰謀論は社会問題化しており、情報リテラシー教育の必要性が高まっている。
エンボス加工により傾けると浮かび上がるタイトル
『証拠より論』パッケージ裏面
こうした状況を踏まえ、昭和女子大学・榊原良太准教授らの研究チームは、「陰謀論にハマりにくい人の特徴」として熟慮性(立ち止まって考える力)を仮説として考察。
今回発売された『証拠より論』はその研究結果をもとに、「都市伝説」という魅力的な虚構を疑いながら楽しむ体験を通して、熟慮性を高めるというテーマで開発された。
都市伝説ダウト『証拠より論』遊び方
ありもしない都市伝説を見破り健全な思考習慣、するはずが……
『証拠より論』でプレイヤーは、「都市伝説カード」と「ナシ伝説カード」が混ざったカードの束からランダムに2枚配られたあと、各自がエピソードを準備。
都市伝説カード・ナシ伝説カードのサンプル
「ナシ伝説カード」にはお題にそった豆知識が記されており、プレイヤーはこれをヒントにして、ありもしない都市伝説を創作する。
話し手はナシ伝説がバレないように話し、聞き手はそれを見破ることが、このゲームの基本的な遊び方になる。
『証拠より論』制作の狙いは、単に遊びながら「陰謀論に強くなる」ことではなく、「疑う」ことそのものを健全な思考習慣として捉え直すことにあった。
「陰謀論対策になる」の前提自体が陰謀論だったという皮肉
しかし2025年6月、榊原准教授らと共同で行われた効果検証では、意外な結果が示された。
大学生36名を対象に、ゲーム実施前後の「陰謀論に対する態度・信念の変化」を測定したところ、統制群との比較において陰謀論耐性の向上は統計的に確認されなかった。
むしろ一部の指標では、ゲーム後に陰謀論を信じやすくなる傾向すら見られたという。
「陰謀論」の研究者と行った効果検証で“逆効果”が測定
その理由として考えられるのが、ゲームの構造的特徴だ。
「実在する都市伝説にはダウトを宣言しない」というルール上、プレイヤーが都市伝説を本当の話として受け止めてしまう場合がある。
つまり「陰謀論対策になる」という商品の前提自体が、証拠を欠いた陰謀論だったという、皮肉な結果を導いたと結論づけている。
この実験の詳細は、榊原准教授らによるnote記事で公開されている(外部リンク)。
結果を踏まえれば、本作が提示したのは耐性をつける方法ではなく、「論より証拠」という科学的姿勢の重要性そのものだったのかもしれない。
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