“令和ロマン─ ふたりの幻想主義者”
朝際イコと好都、ふたりのアーティストが描くのは、
現実の上に重ねられた、やわらかく揺れ動くもうひとつの世界だ。
好都の作品には、どこか“記号としての愛”を抱えたキャラクターたちが登場する。
ポップで愛らしい外見の奥に、触れると少しだけ痛むような感情が流れている。
その感覚は、80年代の女性漫画家たち、社会の中で「個人としての少女」を描き出そうとした作家たちが持っていた、切なさと憧れが背中合わせになったまなざしにも通じている。
それは作品のタッチにも現れる。
2次元の愛は現実よりも甘く、デジタルの青空は本物の空よりも自然に感じられる。
その逆転が生むノスタルジーこそが、彼女の“幻想”の強さなのだ。
一方で朝際イコは、自身の佇まいや作品世界そのものに、「時代」をまとう。
日本文化と西洋文化が混ざりあった大正時代の空気
甘美で、抒情的で、自由な感性に包まれたあの頃。もし現代に自分の居場所がなければ、
自分にとって生きやすい価値観のある時代を選び取って生きればいい。
そんな意志と静かな美意識が、彼女の表現には込められている。
ふたりはそれぞれに、現実を否定するのではなく、その上に、やわらかく私的で繊細な幻想を重ねていく。
過剰な現実と、最適化された世界に囲まれた令和という時代において、
感情がちゃんと「息をしていられる場所」を、自の手で描いている。
それは、懐かしさと予感が重なる、やさしい夢のような風景。
令和ロマンとは、現実に滲み出す、ふたりの幻想主義そのものである。
Curator 米原康正

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展覧会情報
朝際イコ・好都 二人展「adolescence」
- 会期
- 2025年8月8日(金)~8月17日(日) ※会期中無休
- 開廊時間
- 11:00〜19:00
- 会場
- tHE GALLERY HARAJUKU(東京都渋谷区神宮前)
- オープニングレセプション
- 8月8日(金)18:00〜20:00
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