編集/装丁担当:大河原哲さんのコメント
夢野久作は専業作家として身を立てることを決意する以前から、欠かさず詳細な日記を付けることを習慣としていました。残念ながらそのうちの幾分かは戦災により焼失してしまいましたが、現存する10冊——明治43、44、45(=大正1)、大正13、15(=昭和1)、昭和2〜5、10年——のすべてを、久作の長男である杉山龍丸の手によって活字に起こしたのが本書『夢野久作の日記』です。
「夢野久作」名義での文壇デビュー作となった短編「あやかしの鼓」が雑誌『新青年』の懸賞2等に当選したことを知らせる手紙を、妻のクラが喜んで久作の元へ持ってきたときのこと。5年以上も構想を温めてきた小説のタイトルをいよいよ『ドグラ・マグラ』と定めたときのこと(上掲の表紙に用いたのがその日の記述です)。それからまた5年を経て世に送りだされた『ドグラ・マグラ』の発刊記念会で江戸川乱歩と会って嬉しかったこと、などなど。また折々に詠んだ数多くの短歌なども見逃すことのできない内容です。
作家であり、新聞記者であり、禅僧であり、農園経営者であり、能楽喜多流の教授であり、そして一家を支える父親であった夢野久作のさまざまな側面が、自身の手によって一望できるドキュメントとして著されたのは本書をおいて他にありません。久作の身辺事情を誰よりもよく知っていた杉山龍丸の付した註解も併せて、愛読者と研究者にとって必読の一書であることは間違いないでしょう。
復刊企画を起案した芳林堂書店高田馬場店・山本店長のコメント
『ドグラ・マグラ』の制作期の日記であり、貴重な資料であることは間違いありませんが、内容は一人の人間「夢野久作」(本名杉山直樹・出家名杉山泰道)が生きた日々の記録となります。家族や趣味・食に関する記録や短歌など、作品を飛び越えて日常からのアプローチで、より鮮明に作家の輪郭を描きたい人のための夢野久作沼に落ちたかたが本棚に最後に加える一冊です。
この記事どう思う?
商品情報
『夢野久作の日記[新装版]』
- 販売価格
- 6050円(税込)
- ISBN
- 978-4-8354-5941-7
- 判型
- A5判/並製
- ページ数
- 総536P(本文二段組/うち口絵40P)
- 予約開始日
- 2025年1月31日(金)
- 予約受付書店
- 書泉オンライン/書泉グランデ/書泉ブックタワー/芳林堂書店高田馬場店
- 予約〆切
- 2025年3月3日(月)
- 商品お届け予定日/店頭発売日
- 2025年3月下旬ごろを予定
関連リンク
0件のコメント