漫画や小説が大幅に値引きされる「Prime Dayセール」が、7月17日(水)23時59分までKindleストアで行われています。
この記事では無数の対象作品から、年に数百冊の漫画を読む筆者が、半額になっている漫画に絞ってオススメを探しました。
『ちいかわ』『進撃の巨人』など誰もが知る有名作品はもちろん、投票受付中の「次にくるマンガ大賞 2024」のノミネートされた『ヤニねこ』『だんドーン』などこれからくる作品。
近年の漫画賞で上位に入った『天幕のジャードゥーガル』『クジャクのダンス、誰が見た?』も紹介します。
目次
- 1. にゃんにゃんファクトリー『ヤニねこ』
- 2. 泰三子『だんドーン』
- 3. ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』
- 4. 諫山創『進撃の巨人』
- 5. 桜井のりお『僕の心のヤバイやつ』
- 6. 石黒正数『天国大魔境』
- 7. 理央/沢辺有司『地政学ボーイズ ~国がサラリーマンになって働く会社~』
- 8. hiro者/西修『魔入りました!入間くん if Episode of 魔フィア』
- 9. 武田スーパー『だれでも抱けるキミが好き』
- 10. トマトスープ『天幕のジャードゥーガル』
- 11. 浅見理都『クジャクのダンス、誰が見た?』
- 12. 奥嶋ひろまさ『ババンババンバンバンパイア』
- 13. 左藤真通『この世界は不完全すぎる』
- 14. 藤本ケンシ/井出 圭亮『何度、時をくりかえしても本能寺が燃えるんじゃが!?』
にゃんにゃんファクトリー『ヤニねこ』
明日のことは明日考えれば良いさと、刹那的に、自堕落で、お気楽で、大雑把に生きる猫獣人たちの日々を描いた作品です。
タバコ、アルコール、ゲーム、その他もろもろ、どっぷりハマって中毒になったクズい猫獣人たち。アウトな言動ばかりで、リアルではお近づきになりたくない。
下ネタ、ゲロネタ、汚物ネタも豊富。言葉を飾らずに言えば、汚いです。しかし、その汚さも本作では持ち味になっているのが面白いところ。リアルでは見たくないものでも、漫画で見るとどこかシュールで面白く読めてしまいます。
泰三子『だんドーン』
後に“日本警察の父”と称される川路利良が主人公の歴史モノです。史実を元にコメディ要素をふんだんに取り入れて、動乱の時代を描きます。
歴史モノは実在した人物をいかに描くかに、作者の個性が現れるジャンルです(織田信長が代表的)。その点これまで主役として取り上げられていない川路利良を、智謀に長けるサイコ気味な人物として生き生きと動かす本作、大好きです。
また、どうしても血なまぐさい出来事が多い幕末を、ユーモアを交えて笑えるものに仕立て上げる泰三子さんが流石すぎます。
ナガノ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』
Xで最新話が更新される度に大きな反響が集まる『ちいかわ』は、Web漫画として誰も到達したことのない境地に至っています。SNS連載でここまで継続して話題になる作品は他にありません。
作者のナガノさんが生み出すちいかわ、ハチワレ、うさぎといった不思議かわいいキャラクターと優しい世界観に癒やされる反面、彼らを襲う狂気的で猟奇的な展開のギャップが、読者を惹きつけてやみません。唯一無二の作風とはこのことです。誰にも真似できないセンス。
普段Xで1話ずつ見てきた物語も、単行本にまとめられると、一本の筋が通ったストーリーができていることがよくわかります。
諫山創『進撃の巨人』
完結から3年経った今も、世界中でファンが増え続けている漫画『進撃の巨人』は、天敵・巨人の出現で巨大な壁の中の町に押し込められた人類の激闘を描いています。
平穏な日々に退屈していた主人公の少年が、突然の巨人の襲撃で多くのものを失い、復讐を誓うプロローグ。巨人の謎に肉薄する中盤、ぐるりと世界観を一変させて全く新しい物語を構築していった終盤。約12年の長期連載の間、読者を飽きさせなかった作者・諫山創さんの構成力は見事すぎました。
まだ読んでいない人が羨ましくなる傑作。記憶を消して読みたい作品というやつです。
桜井のりお『僕の心のヤバイやつ』
学校のカースト最上位にいる陽キャな美少女と、カースト最下層で孤高に生きる陰キャな少年のラブコメディです。近年話題になったラブコメといえばこれ。今回のセールは全10巻が半額とヤバいやつです! 買うなら今!
一種の身分違いな2人が人目を気にかけながら距離を縮め、逢瀬を重ねていくのはお約束ながら熱い。誰もが羨む美貌を持っているのに、嫉妬深いヒロインのちょっとめんどくさい性格は愛らしい。根暗で誤解されがちな主人公が、ヒロインをはじめ周りの人間に誠実なギャップも素敵です。
脇役のキャラクターもでしゃばりすぎず、でも控えめすぎず、2人の関係を深める手助けをしてくれるのも、本作が人気な理由だと思います。脇役がいい仕事をするラブコメは間違いない。
石黒正数『天国大魔境』
文明が崩壊して人食いの怪物が跋扈する“魔境”のような日本で、“天国”と呼ばれる場所を探して放浪するコンビのサバイバル。そして、壁に囲まれ、一見平和な箱庭で生きる子どもたち。2つの視点を交互に描き、世界の謎に迫っていくのが『天国大魔境』です。
謎が謎を呼ぶこの手の作品は、謎が増えすぎると読者が混乱して離脱しがち。そのためパズルのピースがピタリとはまるような、伏線回収の快感こそ肝になってくるわけで、本作はここが絶妙です。
最新10巻でちょうど山場を迎えたところなので、どうせなら一気読みがオススメです。
理央/沢辺有司『地政学ボーイズ ~国がサラリーマンになって働く会社~』
海に面しているか、大国と国境が接しているか、島国か内陸国か。こうした各国の地理的条件を元に政治を考える“地政学”を、漫画で楽しく学べる一作です。
日本をはじめ擬人化した国たちが働く会社が舞台。社内政治や何気ないやり取りが、リアルの各国間の状況を反映しています。虎視眈々とトップを狙い各国に働きかける裏で、北朝鮮にATM扱いされている中国など、国の内情を実にユニークにキャラへ落とし込んでいます。
我らが日本は、働き過ぎで、SNSは誰にも見せない裏垢があるキャラクターです。実に日本……!
hiro者/西修『魔入りました!入間くん if Episode of 魔フィア』
西修さんによる人気漫画『魔入りました!入間くん』の公式スピンオフで、マフィアモノです。
貧しい境遇にある主人公が、とある人物に拾われて家族の絆を結ぶ点は原作と同じ。一方で、原作に登場するキャラクターの性格や関係性をアレンジしており、原作では主人公の親友だったり先生だったりするキャラクターが、全く別の形で関わっていきます。
しかもその新しい関係性が良い。原作のイメージを壊さず、かといって無難に終わらせない絶妙なラインを突いている。これはこれでアリだな……と原作ファンを唸らせています。
武田スーパー『だれでも抱けるキミが好き』
6月13日に放送されたバラエティ番組『アメトーーク』の人気企画「マンガ大好き」で、ケンドーコバヤシさんが紹介して話題になった漫画です。
セフレがたくさんいるヒロインのギャルと、彼女を好きになった童貞の陰キャ主人公が繰り広げるラブコメディです。エロ成分多めなものの、ただエロい漫画ではありません。ヒロインの複雑な家庭の事情が見え隠れし、主人公も過去に打ち込んでいた野球から離れたらしいことが示唆されます。
真っ当に個々の悩みに向き合う下地が、エロ描写の裏で着々と積み上げられているのです。今後の展開次第ですが、青春群像劇として名作になるのでは? という予感があります。
トマトスープ『天幕のジャードゥーガル』
「これは広大な大陸を翻弄した一人の魔女の話──」。期待感を煽る1話冒頭のモノローグが印象的な本作は、宝島社による漫画アワード『このマンガがすごい!2023』オンナ編で1位を獲得した漫画です。
奴隷でありながら、学者一家に尊重され暮らす少女が主人公。学ぶことを楽しんでいた彼女が、時の覇権国家・モンゴル帝国の襲来で家を失い、流浪の末に帝国へ。復讐を誓い、帝国に奪われた大切なものを取り返すという野心を抱えながら、帝国の重鎮たちに仕えます。
どちらかと言えば武威をテーマに描かれてきたモンゴル帝国を、女性の目線から捉える意欲作でもあります。
浅見理都『クジャクのダンス、誰が見た?』
『このマンガがすごい!2024』オンナ編で4位にランクインした漫画です。元警官の父親を殺された娘が、父の死にまつわる謎を追うなか、次々に湧いて出てくる謎に絡め取られていくサスペンスになっています。
父を殺した容疑者として、父がかつて解決した一家殺害事件の犯人の息子が浮上するのですが、父は遺書の中で彼の犯行ではないと明言。さらに、遺書の中で容疑者の弁護士に付けてくれと指定した男は、父とは全く面識はないという、序盤だけでも謎だらけの展開。
間違いなく父の筆跡で書かれた遺書は偽造されたものなのか? 真犯人は本当にいるのか? 様々な疑念が生じるなかで、主人公は真実にたどりつけるのか。
奥嶋ひろまさ『ババンババンバンバンパイア』
実写映画化とTVアニメ化が2月に同時発表(TVアニメは2025年1月放送予定)され話題になった本作は、BLと書いてブラッディ・ラブコメと読むクセ強漫画です。
“18歳の童貞の血”こそ至高と考えるバンパイアが主人公。主人公は約10年にわたり住み込みで銭湯で働き、一家の一人息子の貞操を守ってきたのですが、18歳を目前にして彼が女の子に一目惚れ。
“18歳の童貞の血”が失われる! と考えた主人公は、彼の貞操を守ろうと奮闘する……めちゃくちゃバカバカしいあらすじ! でもそれが読んでいて可笑し楽し面白いのです。
左藤真通『この世界は不完全すぎる』
7月5日(金)からTBS系列でTVアニメの放送が開始となる本作は、プログラムの不具合や欠陥、いわゆるバグを発見・修正するデバッガー必見の漫画です。というのも、作中の世界がバグだらけという設定なのです。
主人公はVRゲームのバグを見つけるデバッグ作業をしていた男で、彼は突然ゲームからログアウトできなくなり、ゲームの世界に取り残されてしまうことに。その後主人公はゲームのルールから逸脱したNPCと出会い、少しずつゲームの謎に迫ります。
実際のゲームにもある壁に埋まるバグを利用して戦い、わざと処理落ちを発生させ敵の動きを遅くするなど、本作ならではのアイデアと描写はオリジナリティがあってユニークです。
藤本ケンシ/井出 圭亮『何度、時をくりかえしても本能寺が燃えるんじゃが!?』
歴史モノで様々に描かれてきた織田信長と、タイムリープをかけ合わせた異色のコメディです。戦国時代の大事件、“本能寺の変”を回避して日本統一を果たすため、織田信長が何度も何度も死に戻り正解のルートを探し求めます。
ちょっとでも正解のルートを外れた選択をすると、燃え盛る本能寺に飛ばされる織田信長。史実で裏切った明智光秀だけでなく、羽柴秀吉などにも謀反を起こされて逝く姿が非常にコミカル。
死にまくる信長が「何度時をくりかえしても本能寺が燃えるんじゃが!!!!」と叫ぶシーンは爆笑必至です。現在最終章と佳境を迎えているため、このセールを機会に読みはじめてはいかがでしょう。
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