シリーズ初のスマートフォン向けタイトルとして発表時から大きな話題を集め、その期待に応えるハイクオリティなゲームデザインと重厚な物語で、唯一無二の存在感を放つ。
物語を彩る一筋縄ではいかない登場人物の1人「後悔の青年軍人」(グリフ)を演じるのは声優・白井悠介さん。「ヒプノシスマイク」や「アイドリッシュセブン」といった人気タイトルへの出演に加え、4月放送のTVアニメ『戦闘員、派遣します!』では初主演を飾るなど、今もっとも勢いのある声優の1人だ。
注目作への起用が続き、順風満帆なキャリアに見える白井さんだが、デビュー前には計4つの養成所と専門学校へ通い、苦難の末にデビューを勝ち取ったという苦労人。
今回は演じたキャラクター「後悔の青年軍人」になぞらえ、白井さんの後悔にフォーカスしてインタビュー。彼が、声優という人生を歩むからこそ向き合わなければならない、たった1つの後悔とは。
取材・文:オグマフミヤ 編集:恩田雄多 撮影:宇佐美亮 ヘアメイク:原澤雅
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目次
声優・白井悠介にとって「後悔の青年軍人」は予想外?
──担当される「後悔の青年軍人」は落ち着いた青年です。近年演じられるキャラクターの明るいイメージもあってか、キャスト発表時には「意外」といった反応もありました。そうした様々なイメージの役を演じるのは、声優としてやりがいを感じる部分なのでしょうか?白井悠介 僕のことを最近知った人にとっては意外だったかもしれませんね。今でこそかわいい系や元気なキャラクターが多いですけど、デビュー当初は比較的クールでおとなしいキャラがほとんどだったんです。むしろ元気なキャラが珍しいくらい。役によってイメージが変わっていくことを実感しています。
ただどんな役を演じるにしても、キャラクターによって違いをきちんと表現したいし、なんなら気づかれなくてもいい。クレジットを見て「このキャラも白井さんだったんだ!」と言ってもらえるのは嬉しいですね。
声優は声だけで演技するぶん、俳優と比べてより演じられる役の幅が広いと思います。年齢から性格まで様々な役を表現できるのは、声優にとって一番の醍醐味と言っていいんじゃないでしょうか。 ──「NieR」シリーズは10年以上の歴史を持つ人気シリーズですが、シリーズの印象についてはどう感じていらっしゃいますか?
白井悠介 悲壮感の漂う独特な世界観は魅力的ですし、そうしたシリアスなテーマを追求して、人気を呼んでいる作品もなかなか珍しいと思います。
話の中で語りのパートがあるんですが、そういった朗読のような展開があるのが珍しくて、楽しみながら収録させていただきました。
──大きなタイトルに参加するにあたってプレッシャーなどは感じましたか?
白井悠介 キャストに決まった段階から携われるのがすごく嬉しかったんですよ! リリースされたときのみなさんの反応が楽しみすぎて、プレッシャーを感じる間もありませんでした。「『後悔の青年軍人』、早く出てきてほしい!」って(笑)。
“強メンタル声優” 白井悠介と後悔
──今回は「後悔の青年軍人」になぞらえて白井さんの「後悔」についてうかがいたいと思っています。と言ったものの、自他ともに認めるポジティブ声優である白井さんの性格から考えると、正直「後悔」とは無縁そうな……。白井悠介 確かに基本的に後悔はないですね!
──早くもインタビューが根底から覆りそうです!
白井悠介 一番最初の専門学校に通っていたときに、写真撮影用のお金を用意できなくて、大事なオーディションが受けられなかったんです。「もしもあのオーディションを受けていたら……」と、別の未来について考えることはありますね。
でも、仮にオーディションに合格して事務所に所属したとしても、今のようにいろんな作品に出演させていただけるとは限らない。むしろ、回り道があったからこそ今があるとも思うので、後悔というよりあくまで別の可能性として考えるくらいです。
やっぱり過ぎ去ったことに囚われすぎるのはよくないですし、基本は後悔を抱えないタイプなんです。 ──これまでの人生に1つの悔いもない?
白井悠介 強いて言えば……サッカーやってればよかったなとは思います! 僕はサッカー、特に海外サッカーが好きで、イングランドのリヴァプールというチームの試合は毎試合欠かさず見ているんですが、自分で真剣にプレーした経験がないんです。
子どもの頃は野球をやっていて、サッカーにも興味はあったものの、野球好きの親の期待を裏切るの嫌だなって思いもあって。もちろん野球も楽しかったんですが、自分がサッカーをしていたら、よりプレイヤー目線で試合を見れたのかなっていうのはあります。
──……。
白井悠介 後悔ってほどではないですね(笑)。
──(笑)。「後悔」がないのは羨ましくもありますが、そうしたポジティブな考え方はどのように身につけられたのでしょうか?
白井悠介 何か特別なきっかけがあったわけではないんですが、親も同じくポジティブで明るい人だったので影響は大きいと思います。
あと小学校時代の先生が、人との接し方や心の持ちようといった、あまり授業で習わないタイプのことを教えてくれました。
「自分を好きになりなさい、あなたは他でもない自分なんだから、ちゃんと自分を好きになって自分を生きなさい」という言葉がとても響いて、いまだに胸に残っています。先生の教えも僕の前向きさの理由かもしれません。 ──その姿勢を貫くために意識していることはあるのでしょうか?
白井悠介 好きなものに触れることは大事ですね。サッカーがめちゃくちゃ好きなので、どんなにパッとしない日でもサッカーさえ見れたら幸せというか、リフレッシュになってます。好きなことに触れてる時間って大切だし、熱中できる何かがあるといいのかな。
──ご自身のYouTubeチャンネルで「そもそも声優には楽観的な考え方が必要」とも話されていました。改めてその理由をうかがえますか?
白井悠介 声優という仕事はオーディションを受け、合格してキャラクターにキャスティングされないとはじまりません。でもオーディションってほとんど落ちるんですよ。僕の尊敬する先輩声優の方々も「オーディションって基本落ちるもんだよ」って言うくらいですし。
なので1つオーディションに落ちたからって、「自分はダメだ」とか「これからどうしよう」ってマイナス思考になっていてはキリがありません。落ちたとしても、「じゃあ次頑張ろう」と切り替える考え方が大切なんだと思います。
そもそも僕は、悔しいとか悲しいとかネガティブな気持ちになるより、楽しいことを考えていたい。だからあまり失敗や後悔を引きずらずにすぐ切り替えられる。本当に便利な脳をしてると思います(笑)。それにポジティブな人の方が見ていて気持ちが明るくなるし、個人的にはこの性格で得してるって感じることが多いですね。
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