しらいむ、唯一の後悔に気がつく
──ここまでお話を聞いて、眩しいまでのポジティブシンキングの白井さんですが、『リィンカネ』で真逆のイメージである「後悔の青年軍人」を演じるのは難しかったのではないでしょうか?白井悠介 むしろ自分から離れている方がデフォルメしやすいので、すんなりできるんです。自分とキャラクターが似ているほど、「ただの白井悠介になってしまわないか?」という別の難しさがあるので、個人的には自分と離れているキャラクターの方が演じやすいのかなって思いますね。
──キャラクターに心情を寄せるために、過去の似た経験を引っ張り出すこともあるのでしょうか?
白井悠介 うーん……後悔やトラウマがないもので(笑)。なので想像するしかないんですが……あっ! ──!?
白井悠介 もしかすると、そうやって演技に役立つような引き出しを持つために、いろんなことをもっとやっておくべきだったというのは、1つ「後悔」と言えるかもしれません。
やったことないことに挑戦したり、行ったことのない場所へ行ってみたり。今思えば、それらは演じることにすごく活きたと思います。想像も大切ですが、実際に経験することで魅力的に演技できることもあると思うので。
──「後悔の青年軍人」でもそういった難しさを感じましたか?
白井悠介 彼ほど大きな後悔や、それを生み出すほどのトラウマもなかったので、想像するしかなかったですね。そもそも事なかれ主義であんまり無茶もしないので、そういう意味でも、もっと果敢に無茶なことに挑戦していたら違ったのかもしれません。たとえ散々な結果だったとしても自分の糧になったと、今なら思います。リヴァプールに留学とかしてればな〜!(涙)。
『リィンカネ』で未経験の感情を表現するために
──具体的に、経験したことのない感情へのアプローチはどうやるんでしょうか?白井悠介 “考えるな、感じろ!”タイプの声優なので、何か用意して事前にガチガチに固めるというよりは、ある程度のイメージを持って収録に臨みます。その上で、本番で自然に出てくるものを大事にしていますね。
まず資料をいただいて「このキャラクターはどんな声でどんな喋り方をするのかな?」って考えるんです。ただ、資料に書かれていることでも、キャラクターの目線からしたらまだ知らない、つまり物語が進むにつれてわかってくる内容の場合もあります。だから詳細を詰めるよりは、まずはセリフを声に出して自分で聞いてみて、調整していく。そうして役に入り込んでいく感じですね。
自分でイメージを固めすぎると、現場で「もうちょっと崩してください」とか「別のアプローチでお願いします」とディレクションされたときに、うまく切り替えられないこともあるので、柔軟に対応できるようにしています。
声をあてるのは僕ですが、そうやってスタッフさんや周りの方々と一緒にキャラクターをつくり上げていくのもすごく大切ですし、好きなんですよね。 ──そうして出来上がった「後悔の青年軍人」が登場する『NieR Re[in]carnation』。白井さんの考えるこのタイトルならではの魅力や、シリーズの入り口として推せるポイントはありますか?
白井悠介 やっぱりアプリで手軽にできるのが大きな魅力だと思います。コンシューマーだとまずハードを用意しないといけないですからね。
でも手軽だからといってボリュームが足りないとか、満足度が低いということはなく、クオリティはめちゃくちゃ高いです。シリーズの独特の世界観もしっかり描かれています。
魅力的な声優さんが参加されているので、それをきっかけにプレイしても、各キャラクターごとに奥深い物語が楽しめる。まずは気軽にプレイしていただければ、独特の世界観にのめり込んでもらえるんじゃないでしょうか。
──最後にご自身の役で注目してほしい点を教えてください。
白井悠介 僕の演じる「後悔の青年軍人」は過去のトラウマゆえに、臆病な指揮官と呼ばれているキャラクターです。そんな彼が、大きなトラウマを克服できるのかどうかという物語が見どころだと思います。過去の回想シーンと現在の心情の変化も聞き比べていただけたら嬉しいです。
普段はなかなか挑戦する機会のない語りのパートでは、完全にナレーションとして読むのか、それとも役に寄せて読むのか悩んだのですが、現場でディスカッションして、感情を込めず淡々と語るようなテイストに仕上げています。 白井悠介 いつもの感情をセリフに乗せる作業とは逆だったので、不思議な感覚を味わいました(笑)。でも、それゆえに表現としての新しさもあると思いますし、僕自身も楽しく収録できたので、ゲーム本編での使われ方にも期待していただきたいですね。
と言っても、そのパートを聞いていただくには、結構ゲームを進めてないとなのですが……その頃には『リィンカネ』の魅力にどっぷりハマっている! と、楽観的に考えているので、ぜひ「後悔の青年軍人」の物語も見届けてください!
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