社会人としてゲーム会社・レベルファイブで経験を積み、フリーランスのイラストレーターに転身。以後数多くのイラストやキャラクターデザインを手がけてきたlackさんに、現在の活動に至るまでの経緯や自身の強み、制作環境など、まだまだ謎に包まれた全貌に少しでも迫るべくインタビューを実施した。
加えて今回は「いま一番トップクラスのPCを買う」と話すほど制作環境にこだわりを持つlackさんに、LenovoのゲーミングPC「Legion550i」のレビューを依頼。YouTubeで定期的に開催しているイラスト講座配信ではストレートな物言いが印象的だが、Lenovoが誇るゲーミングノートPCにどのような使用感を抱くのだろうか。
取材・文:阿部裕華 編集:恩田雄多 撮影:塩川雄也
「ゲームをつくりたかった」少年がイラストレーターになるまで
──まずはlackさんがイラストを描くようになったきっかけを教えてください。
lack 祖父の影響で保育園くらいから絵を描いていました。祖父が教師かつ画家……と、なかなかスペック高めの人だったんです(笑)。
じいちゃんがよく褒めてくれたのもあって、保育園くらいの頃から絵を描き続けていますね。最初は、鉛筆・色鉛筆・水彩絵の具で描いていて、芸大を受験するタイミングでアクリル絵の具を使いはじめました。
──その頃から絵を仕事にすることは意識されていたんですか?
lack 実は芸大に入ったきっかけはイラストレーターになりたかったわけではなく、ゲームがつくりたかったからなんです。
高校時代にゲームをつくるならどういう進路が一番いいかと先生に相談したら、「芸術系の大学に入って絵を学べば、キャラクターデザインでゲーム業界に入りやすいんじゃないか」と言われて芸大を目指しました。
──現在はフリーランスで活動されていますが、キャリアプラン的に早い段階からフリーを目指されていたと、以前のインタビューで拝見しました。
lack 会社員になって3年くらい働いたら、別のゲーム会社に行くかフリーになってゲームをつくろうと思っていました。
大学時代に友人とゲームをつくっていたので、彼らと一緒に「卒業後にゲームをつくれたら面白いよね」って話していて。そのためにも、まずはゲーム業界に入って人脈をつくったりノウハウを蓄積したりしようと、いくつかゲーム会社を受け、最終的にレベルファイブに就職しました。 ──ちなみに友人の方々とのゲームづくりのプランはその後……?
lack 独立するタイミングで声をかけてみたんですけど、「まだ会社で働く予定だから、フリーのイラストレーターとして経験を積んでくれ!」と。
その友人はいまも同じ会社で働いているので、おそらく今後もフリーのイラストレーターとして頑張っていくかたちになると思います(笑)。
──いつか来るその時を待ちたいですね。lackさんがフリーランスの道を選んだとき、タイミング的にはちょうどソーシャルゲームが増えはじめて、イラストレーターやキャラクターデザイナーの活躍の場が広がった時期だと思います。実感はありますか?
lack めちゃくちゃ実感しています。イラストレーターを取り巻く環境が変化して、すべてがいい方向に回っているタイミングでフリーになったからこそ今の立場があるので、本当に運がよかったなと思っています。
だいたい2013年頃、具体的にフリーランスの道を考えていた時期に、pixiv経由でたびたびイラストの依頼を受ける機会が多くなっていました。
当時はレベルファイブで働いていることはもちろん、身分を明らかにしていなかったので、その状態でこれだけ仕事をいただけるなら、独立してもやっていけるだろうと。それくらい僕らのような存在が活躍できる領域が広がっていました。
──当時はどういった経緯でお仕事の依頼を受けていたのでしょうか?
lack いまほどTwitterのフォロワー数も多くなかったので、pixiv経由の依頼がとても多かったですね。
特に投稿したイラストがランキングで1位になったときに依頼のメールがたくさん来るんですよ。会社に所属していたときの依頼はほとんどがそうだったと思います。いまも本当にお世話になってますね。
イラストは制作工程の一部、納期厳守で120%の品質を
──フリーのイラストレーターとして継続的にお仕事の依頼を受けているlackさんですが、ご自身の強みはどういう部分にあると感じられますか?lack 常にクライアントが求めるクオリティーの120%を提供し続ける自信があります。例えば、カードのイラストの場合、最初はノーマルやコモンなど低レアリティのカードの制作依頼が多いんですよ。
その場合でも僕は、スーパーレアのつもりで描こうと心がけています。コモンだから弱そうに描くのではなく、コモンだけど勇者一行を一蹴できるような、誰が見てもレアリティが高そうなイラストに仕上げています。
──そう考えるようになったのには何か理由があるんですか?
lack 自分の力をセーブしてクライアントに「これくらいしか描けない」と思われるのはもったいないですよね。「こいつはスーパーレア担当にするしかない」と思ってもらえるように、最初から全力で「こんなに描けるよ!」と見せたほうがいいと思うんです。
実際、レアカードのイラストの依頼が来たとき、自分から「こういう要素をもたせたらどうですか?」と提案したら、そのカードがパッケージを飾ったことがあって。より良いものにするために、自分をセーブしないほうがいいと学びました。
それから2014年にフリーで活動をはじめて以降、一度も締め切りを破ったことがないのも強みだと思っています。“ちゃんとしていること”はフリーで仕事をする上で本当に重要です。
──“ちゃんとしていること”ですか?
lack 僕自身、フリーになってからアートディレクターを担当することもあって、発注側になることがありました。当時、知り合いのアートディレクターともよく話していたんですけど、フリーランスの人たちの中にはスケジュールを守れない人が多かったんです。知り合いの話では、スケジュールを守って納品してくれる人は3分の1くらいだと聞きました。
ゲームはもちろん、最近ならバーチャルYouTuberでも、イラストをもとに3DCGを制作する場合もあります。つまり、完成までに10の工程があるとしたら、イラストは「2」とか「3」くらいの工程なので、それを意識して描かないと次の作業を担当する人に迷惑がかかる。 lack 自分に来た依頼はイラスト1点だったとしても、作品自体にはたくさんの人が関わって、完成に向けて計画されたスケジュールのもとで動いている場合がある。依頼の背後にいる人たちの存在を忘れないことも、ゲーム会社で学びました。なので僕はスケジュール厳守は前提で、できる限り早めに納品するよう心がけています。
フリーのメリットって仕事を選べることだと考えていて。好きな仕事なら良い作品をつくるのは絶対条件として、その上で納期を維持するのは当然だと思うんです。案件を受ける段階から、常に余裕を持ったスケジュールを組んでいます。
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