そんな彼らによる「1stLIVE『WHO WE ARE! Return!!』」が、11月28日(土)に未来型ライブ劇場“harevutai”で開催される。
本来は5月に「1stLIVE『WHO WE ARE!』」が開催されるはずだったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い中止。代わりに「配信LIVE『WHO WE ARE!』」を開催するも、ファンとリアルで対面するという意味でのライブは未だ経験できていない。
新たに開催されるライブ「1stLIVE『WHO WE ARE! Return!!』」は、その名の示す通り1stLIVEのリベンジとして位置付けられることとなった。
「配信ライブ『WHO WE ARE!』」にも参加しており、今回のライブにおける演出を一手に手掛けるライブプロデューサー・渡辺大聖さんは、クリエイティブカンパニー・stu所属の演出家として「TWICE DOME TOUR 2019 #Dreamday」や「〈物語〉フェス ~10th Anniversary Story〜」など国内外ジャンルを問わず数多くのライブ制作に関わる気鋭のクリエイターだ。
学芸大青春
多くのアーティストによるライブ演出を手掛けてきた渡辺さんには思い描く一つの大きな目標があった。それは学芸大青春のライブにおけるテーマと密接に関わっている。それだけに今回のライブにかける想いは特別に強いものがある。
今回は学芸大青春のプロデューサー・杉沢さんにも同席していただき、二人の熱き出会いの物語や、深く結びつく信念をうかがうと共に、さまざまな思いの結実として表出される『1stLIVE「WHO WE ARE! Return!!」』が描き出す未来について語っていただいた。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、多くのライブが中止を余儀なくされ、その価値や在り方は根本から見直されることとなった。その上、学芸大青春が行うようなキャラクターが歌って踊るライブはその数こそ大きく増えながらも、まだ発展の途上にありエンターテイメントとしての真価を問われる状況にある。
そんな今だからこそ、唯一無二のグループ・学芸大青春が開催する満を持しての1stLIVEはプロジェクト全体として大きな意味を持つのはもちろん、ライブという文化の現在位置をはかる上で見逃せない機会となるはずだ。
取材・文:オグマフミヤ 編集:森田将輝 写真:黒羽政士
“1stLIVE”のリベンジと銘打つ理由
1stLIVE『WHO WE ARE! Return!!』キービジュアル
渡辺大聖(以下、渡辺) プロジェクト全体のプロデューサーである杉沢さんの思い描くイメージを受け取り、今の時代の潮流を見たうえで、どうすればライブエンターテイメントが一つ先の次元へいけるかを考える、それを学芸大青春らしさと融合させてひとつのステージとして完成させるのがライブプロデューサーとしての大きな役割のひとつです。
さらにはライブだけでなくプロジェクト自体の立ち位置も意識して演出を考えています。今回のライブもそうですが、ひとつひとつのアクションによって業界に対してどう影響を与えていくのかを考えたり、こんなことまでできてしまうのかといったような、今という時代性を感じさせることを組み込んだりしていくのが自分の仕事だと思っています。
──11月に開催されるライブは5月に開催されるはずだったリアルライブのリベンジ『1st LIVE「WHO WE ARE ! Return!!」』と銘打たれています。なぜ仕切り直しとしてではなく、再びの”1stLIVE”とされたのでしょう?
配信LIVE『WHO WE ARE!』の様子
アーティストとして本当は顔を出して活動したいはずのメンバーたちが、2次元の姿で活動を続け、ようやくファンの方々とお会いできる機会だったのですが、配信という形になってしまい、やはり悔しい気持ちが強かったんです。
ファンの方々からもそういったお声をいただき、メンバーだけでなく、スタッフ、ファンの方々を含めこの思いは一緒だと感じました。なので必ず来る次の機会のために”1stLIVE”はとっておいて、5月のライブは配信ライブと呼ぶように徹底しました。
悔しさも残念な思いもありましたが、この思いはファンの方と共に学芸大青春をつくっていく上で大切だと感じましたし、次のライブを誰にとっても幸せな形にできるはずという思いにもなっていきました。結果として我々のエゴだけでなく、ファンの方々を含めてみんなの思いを乗せたタイトルになったと思っています。
──そのライブに臨むうえでメンバー含め制作チームの方々の現在の雰囲気はいかがですか?
杉沢 正直…かなりプレッシャーを感じていますね(笑)。5月のライブではあの時点でできる精一杯が出せたと思いますし、実際評判も良かったんです。
ですが今回はリベンジと自ら銘打ったので、もちろん前回以上のパフォーマンスをしないといけない。メンバーたちもそのプレッシャーを感じていますし、私としても生半可なものを見せるわけにはいかないという気持ちでいます。なのでいい意味で強いプレッシャーを感じながら取り組めているといったところでしょうか。
それは、飲み込まれすぎないということ。常に時代はアップデートされていますし、それを貪欲に取り入れていくためにはフットワークの軽さが必要です。ひとつのことに深入りしすぎずに、身を軽く視野を広く持つ。そうすることで心に余裕が生まれ、本来のやるべきこと、やりたいことが見えてくると思っています。
キャラクターによるリアルライブの新スタンダード
渡辺大聖さんが所属するstuが手掛けた「輝夜 月 LIVE@ZeppVR」
渡辺 初音ミクの「マジカルミライ」をスタートとして、キャラクターによるリアルライブという形はどんどん出来上がっていきましたが、今でも透明なスクリーンにキャラクターを投影してステージに立っているように見せる方法が当たり前のようになっています。
それだと会場が大きくなって、ステージの演出が豪華になるにつれて、キャラクターがぽつんと立っているだけのように見えてしまうことがあって、どうしても「これってライブなんだろうか?」と感じてしまう瞬間がある。
近年ではDMM VR THEATERのように、キャラクターのステージングをリッチに見せることができるようにもなりましたが、本来であればキャラクターはバーチャルの存在なので、画面の中にセットをつくってそこでパフォーマンスする方がいいんじゃないかと思ったんです。
それこそ今の時代だからこそできる現実の世界でのキャラクターライブだと思いますし、その形をスタンダードにしたいというのが僕自身の大きな目標の一つでもあります。
──今回のライブは2019年末池袋にオープンした未来型ライブ劇場“harevutai”での公演となります。渡辺さんは設計から関わられているそうですが、改めてharevutaiの特性についてうかがえますか?
未来型ライブ劇場“harevutai”
──何が未来か、ですか……そうですね、実際にharevutaiでのライブを見たことがあるのですが、やはりただキャラクターが立っているように見える従来の形を越え、高精細のLEDや照明を駆使することによってキャラクターならではの演出ができているのが未来ということなのかと感じました。
渡辺 演出という意味ではそれも正解のひとつだと思います。ですが本当の意味での未来型とは、突き詰めていくとインフラの話になるんです。
お答えいただいたような演出やクリエイティブの話になると未来型の答えは千差万別で、プロジェクトやライブごとに違う発想が出てくるでしょうし、答えは複数あって当然だと思います。
ですがインフラの観点から見ると未来型の答えはひとつなんです。パソコン一台ですべてのシステムをコントロールでき、思い描くことが実現できる環境。それに対応できるスペックのハードウェア、ネットワークが整備されていて、それらを繋ぐミドルウェアが揃っている、それこそが未来型劇場だと考えています。
──その未来型ライブ劇場で実現する今回のライブはどのようなコンセプトで行われるのでしょうか?
渡辺 今回、学芸大青春のライブ全体のコンセプトは「コネクション」としています。実際に会って繋がることが困難な今だからこそ、現地で、生配信で、アーカイブで見てくださる方を含め、学芸大青春を通じてみんな繋がっていることを感じられるライブにしたいと思っています。
前回のコンセプトは「Discover new JUNES」、演出イメージは「シアター」でしたが、その裏には、あくまで彼らが役を演じている3Dドラマ「漂流兄弟」との差別化、言い換えると、ライブではアイドル/パフォーマーとしても最高に素敵な彼らを見てほしい、と。
配信LIVE『WHO WE ARE!』の様子
杉沢 面白いことに、ライブ演出について打ち合わせする前から、私も今回は「ストリート」を演出イメージにしたいと思っていました。そもそも今回リリースするアルバムも「ストリート」を意識している部分がありまして、それを意識したCDパッケージもつくっていますし、限定盤につく特典もラバーバンドやソックス、コインケースなどストリートを感じられるものにしています。
学芸大青春1stアルバム『HERE WE ARE !』ビジュアル
違和感を出すというのはプロジェクト全体のテーマとして取り組んでいることでもあって、2次元キャラクターなのにも関わらず「Happy Ever After」のような80sソウル感のある曲を歌うのもそうした狙いに基づくものです。
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