波乱万丈だったからこそある現在
──メジャーリリースやカバーアルバムの配信などを経て、ついに1stアルバム『有機的パレットシンドローム』がリリースされます。まずアルバムのタイトルですが、色とりどりのジャンルの楽曲が収録されていることを指してパレットという言葉を選ばれたのは明かされていますが、さらに「有機的」と「シンドローム」を合わせて耳馴染みのないタイトルに仕上がっています。一目見ただけで異質さを感じさせるこのタイトルはどのように設定されたのでしょうか?
富士葵 これまでの活動の軌跡、そこに自分自身が“生きた証”を楽曲で示したかったため、生命体という意味を持つ有機物にちなんで、有機的という言葉を付けました。
だがしかし!!!「基本的には響きがなんかかっこいい!語呂がいい!」っていうのが1番大きいです(笑)。
──確かに字面もとてもかっこいいです(笑)。そして、今回のアルバムにはメジャーリリース曲として初の作詞に挑戦された「MY ONLY GRADATION」も収録されています。
富士葵 楽曲プロデュースをしていただいた草野華余子さんと何度もお話させていただいて、作詞のコツなども教えていただきながら進めました! 華余子さんおすすめの類語辞典アプリも真似して買いました!
──作詞にあたって入念な打ち合わせが行われたことは、先日の先行配信の際に草野さんからも明かされていました。また「みんなの心の応援団長で居たい、でも同時に、自分にしか無い色をちゃんと見付けたい」という富士葵さんの想いが語られていたのもとても印象的でした。楽曲の中で語られていることでもあるので深く聞くのは野暮な気もしますが、この言葉の意味を詳しくうかがえますか?「MY ONLY GRADATION」を作るにあたって、富士葵ちゃんと本当に沢山話しました。彼女は「みんなの心の応援団長で居たい、でも同時に、自分にしか無い色をちゃんと見付けたい」とずっと揺れ動いてて。その心の動き、グラデーションそのものが富士葵の色、そして輝きなんだよ。そう答えを出せた一曲です
— 草野華余子 (@kayoko225) November 4, 2019
富士葵 活動を始めてからずっと、やりたいこととやれないことの乖離に葛藤したり、みんなに求められてるのは重々分かってるけど…みたいな色々もあり、決して順風満帆ではありませんでした。
でも団長としてなかなかそういった裏の感情を表に出すこともできずに悩んでいたこともあって、「作詞をするにあたり、葵ちゃんの内面を全部知りたい」と仰っていただいた華余子さんに、その気持ちを思いっきりぶつけてみました。 華余子さんは「うん、うん、わかるよ」と本当に親身になってお話を聞いて下さって。でもそうした葛藤があったからこそ今があるわけで、それを否定する必要もないって気づかせてくださって。“波乱万丈”だったからこそある現在と、それでもいつまでも溜め込み続けるわけにはいかない想いと…。
色んなことを考えて考えて、この歌詞になりました。
今までのすべてを歌にかえて
──れるりりさんプロデュースの楽曲「イタリアンレストラン」は、少し大人な恋愛を歌ったナンバーになっています。ミドルなジャズという点でもアルバムの中で異彩を放つ曲で、富士葵さんの新たな一面を垣間見ることができました。ご自身としてはどんなイメージで歌唱されたのでしょう?富士葵 おっしゃるとおりで、制作チームの間でも「今までの葵ちゃんになかったね!」と話してました。レコーディングのとき、歌の声質のイメージが葵の中には実はたくさんあって、1つに絞るのが難しかったんです。
今までは、楽曲に対して葵がイメージをつける歌が多かったですが、はじめて、楽曲が持つ色に葵が声を合わせる歌い方をしたため、録音する前に、自分が思う歌い方を何パターンか聴いてもらって、その中から1番みんながしっくり来るものを選びました! ──「KieR⌫N」はタイトルもさることながら、歌詞の言葉選びからも特に強いメッセージ性を感じる曲です。囁くように歌い上げたこの曲にはどのような想いを込められたのでしょうか?
富士葵 この曲には、実は明確なテーマがありますが、それはみなさんご自身で感じていただきたいと思っています…!
──そのほかの楽曲もポップソング、ロック、バラードなどジャンルに分けて緻密に発声をコントロールしている印象を受けました。それぞれのジャンルについて歌唱するときにイメージしているものはありますか?
富士葵 いただいた曲のイメージを壊さないように、どう歌ったらつくった人も聴いてる人もスッキリするか意識しました。曲調も伝えたいメッセージもしっかり届けるのってすごく難しいです!
──今回のアルバムでは、様々な音楽クリエイターの方との共同制作をされましたが、歌手として何か刺激を受けたことはありましたか?
富士葵 ありきたりな言葉かもしれませんが、音楽には色んな表現と伝え方があるんだな〜って勉強になりました! つくっていただく方が違えばもちろんレコーディングのときのディレクションも違って、教えていただくたびに「はぁ〜なるほど!」って言っていたと思います(笑)。
──アルバム全体としては「パレット」を冠するだけあってまさしく色とりどりの楽曲が納められており、ここまでの活動を丸ごと振り返れる盛り沢山の内容になっています。改めて完成させてみての手応えはいかがですか?
富士葵 葵の今までの活動をすべて歌に変えて表現できたかなと思います! 聴いていて飽きるアルバムはつくりたくなかったので、聴いてる人の感情をグイングイン振り回したいです(笑)。 ──今回のアルバムは「最初で最後の」と銘打たれていますが、今までの活動における集大成という意識もあったのでしょうか?
富士葵 お母さんが自分の子供のはじめてしゃべった言葉とか、はじめて歩いた日を大切にしているように、葵のはじめてを歌劇団のみんなと一緒に、大切にしていきたいという想いはあります。
集大成という意識もありますがあくまでもここまでの2年間の集大成であって、新しいスタートラインであることは間違いありません。
夢と野望は捨てずに
──葵さんがデビューした2017年12月頃を契機として、バーチャルYouTuberは前代未聞のブームを巻き起こし、現在のシーンを形成しました。その最前線で活動を続けてきた1人として、印象深い出来事はありますか?富士葵 やはり自分1人で配信してたときから、はじめてイベント出演のお声がけをいただいてYouTubeで見てくれてたみんなにリアルイベントで会えたりとか、みんなと大きい会場で歌えたときとか、その瞬間瞬間の興奮は今でも忘れられないです!
──VTuberカルチャー全体としても急速な前進と共にファンとの距離ができてしまうという心配はあると思いますが、カルチャー全体の今後として、こうなってほしいというような理想を描くことはありますか?
富士葵 カルチャー、カルチャー、うーん(笑)。そうですね。もっと気軽に色んなことに参加できたらいいなって思います。応援の活動はもちろんですけど、個人的には公園で集まってハンカチ落とししたり運動会したりしたいんですよ! ──VTuberのイベントは音楽系のものが多く、人気VTuberがオリジナル曲を制作するのも当たり前のようになってきました。シンガーという領域でも群雄割拠しているように見えます。
富士葵 ぐんゆう…? かっきょ?
──ライバルが競い合っているような状態ですね。そうしたシーンの現在を葵さんとしてはどう感じてらっしゃるのでしょう?
富士葵 群雄割拠、はじめて聞きました(笑)。
確かに競い合うことも時には大切かもしれませんが、競うよりもみんなで一緒に頑張っていきたいですね!
──1stソロライブを完遂し、1stアルバムもリリースして、音楽活動としてひとつ大きな区切りを迎えたところだと思います。特別大きな達成感を感じていたりはしますか?
富士葵 はじめの一歩を踏み出せたなという気持ちはありますが、まだまだ達成感は感じられていないです!
ソロライブをできることも、アルバムが出せるほどオリジナル曲を出せたことも本当に感謝しています。2年前の自分もきっとびっくりすると思います(笑)。 ──実際にこの2年間で富士葵さん自身にも、世間にも大きな変化があったと思います。ここまでの活動を経て、歌への向き合い方に変化が起きたりはしているのでしょうか?
富士葵 2年も歌い続けていれば「歌ったことのあるジャンル」も増え、自分の中で表現できる幅も増え、自己解釈の選択肢は増えました。しかし歌詞を自己解釈の中で歌声に昇華する、という向き合い方に関してはこれまでもこれからも変化することはありません。
──歌手として今後成し遂げていきたいことはありますか?
富士葵 アニメやドラマ、映画など何かの作品のOPを歌うという夢は昔から言い続けています。この夏、TVCMソングは幸いなことに担当させていただきましたが、そういった活動をもっと幅広くしたいと思います!
──まもなく活動開始から2年が経ちます。これまでも様々な挑戦によって新たな地平を切り開いてこられましたが、次なる展望はどのように描かれていますか?
富士葵 活動2年という区切りの今、改めて展望を考え直しているところです(笑)。
活動をはじめて2年経った今、やりたいこと、できること、できないこと、求められていること、様々なことが見えてきました。改めて葵のこれからを、皆さんにも楽しみにしていただければ嬉しいです。
やりたくてもできないこともたくさんありますが、夢と野望は捨てずにこれからも葵らしく頑張ります! UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤をチェックする(A4サイズのパソコンケース付き)
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CD情報
『有機的パレットシンドローム』
- 発売日
- 2019年11月20日(水)
- 価格
- 初回限定デラックス盤 (2CD+Blu-ray):5,500円(税抜)
- 初回プレス限定 スペシャル・プライス盤:3,500円(税抜)
- ※初回プレス分終了次第、4,000円(税抜)の通常盤価格仕様となります。
- UNIVERSAL MUSIC STORE 限定盤:9,000円(税抜)
- ※富士葵監修 パソコンケース (A4サイズ マルチバッグ)付き
- 収録内容
- [DISC-1]:全10曲
- [DISC-2]:全13曲
- [初回限定デラックス盤Blu-ray]:富士葵 1st LIVE「OVERTURE -序曲-」
[DISC-1]
01. はじまりの音
02. MY ONLY GRADATION (Prod. by 草野華余子)
03. まだ希望に名前はない
04. Let it snow
05. イタリアンレストラン (Prod. by れるりり)
06. エールアンドエール(Prod. by ナユタン星人)
07. オーバーライン (「花鈴のマウンド」TVCMソング)
08. KieR⌫ N <読み : キエナイ>
09. 君のミライ (「Fight!」公式応援ソング)
10. ユメ⇒キミ
[DISC-2]
01. NIPPON
02. First Love
03. 糸
04. 月光
05. シャルル
06. フリージア
07. シュガーソングとビターステップ
08. 変わらないもの
09. ひだまりの詩
10. GLAMOROUS SKY
11. なんでもないや
12. 小さきもの
13. ロキ *ボーナストラック
[初回限定デラックス盤Blu-ray]
富士葵 1st LIVE「OVERTURE -序曲-」
■ OPENING
■ はじまりの音
■ 君のミライ
■MC 1
■第一章「劣等」
■ ミルクティ
■ MC2
■ なんでだっけ (富士葵の場合)
■まだ希望に名前はない
■ MC3
■ 第二章「迷走」
■ サザンカ
■ MC4
■ 小さきもの
■ MC5
■ なんでもないや (movie ver.)
■ 第三章「決意」
■ MY ONLY GRADATION
■ MC6
■ 二人の距離はドッグランwith 二寺蒼五 & 冥途之土産
■ オーバーライン
■ MC7
■エールアンドエール
ENCORE
■ 最終章「序曲」
■ ユメ⇒キミ
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