一時音楽活動から退いていた期間はあるものの、来年2020年でデビュー20周年を迎える彼は、シンガーソングライターだけでなく、アイドルや声優、CMソングなどの楽曲提供、俳優・米原幸佑さんとのデュオ・ヨースケコースケとしての活動も同時並行し、最近では俳優として初舞台を踏むなど、常に新しいものやワクワクすることを求め、邁進し続けている。
そんな彼がこの夏7月31日、前作のアルバムから約5年ぶりに書籍付きE.P.『抑えきれない僕らのJ-POP』を発売した。
サカノウエヨースケと音楽の出逢いとデビュー
サカノウエさんが音楽と出会ったのは中学時代にバンド『SPIRAL SPIDERS』のメンバーである、幼馴染みのPAGE(パゲ)さんがギターを弾いていたことがきっかけ。それから音楽の先生にコードをいくつか教えてもらい、音楽室に入り浸って音楽にどっぷりつかる日々を送るようになっていって、サカノウエさんの人生は変わっていく。
高校ではバンドを結成、ギター&ボーカルを担当し、シャ乱Qが主催していた大阪城公園の一角で毎週日曜日に路上ライブをする団体「すっぽんファミリー」に参加。
神戸のライブハウスを中心に大阪城公園ストリート(城天)など関西での活動を経て、18歳で上京することに。バンド解散後は、アコースティックギター1本でストリートに出た。
"今、この時しか歌えない唄が歌いたい"と、10代でデビューすることは心に決めていたサカノウエさんは、様々な大会やオーディションに応募し、音楽プロデューサー・浅倉大介さんと出逢うことになる。
浅倉さんは音楽ユニット・accessのキーボーディストで、当時ユニットとしての活動は“沈黙”という名の休止をしていたが、T.M.Revolutionをはじめとする数々のアーティストのプロデュースを行っており、音楽プロデューサー全盛期だった。 浅倉さんに才能を見出されたサカノウエさんは、2000年夏に浅倉大介プロデュースのミュージシャンのお祭り「DA's Party βVersion ’00 Summer」にて初お披露目。
同年11月に自作曲を浅倉氏が編曲するスタイルで、メジャーデビューシングル『SUPER DRIVE』をリリースした。この時サカノウエさんは19歳だった。
2人のプロデューサーの存在
サウンドは浅倉大介さんに学び、言葉は音楽プロデューサー・須藤晃さんに学んだというサカノウエさん。ここからは浅倉さんと須藤さんがサカノウエさんにどのような影響を与えたのかを、それぞれ述べていきたい。
今のサウンドイズムの元になった浅倉大介プロデュース期
アコースティックギターで作るサカノウエさんの原曲が、浅倉さんの打ち込みによるサウンドの編曲によってキラキラサウンドに変貌するさまは、デビュー当時のサカノウエさんにとっては相当な驚きで新鮮な出来事だったと、今もなお本人がライブで語っている。2001年8月のBANDSJAPANのインタビューの中では、楽曲制作のスタイルについて
ものすごくかけ離れてるんですけど、でも僕が浅倉さんの作り出す世界観の音に近づけてしまったら、絶対に一緒にやりとりしていく意味はないと思うんですよね。(BANDSJAPAN '01年8月より)
と語っており、この頃から既に自分の頭の中の世界を、アコギ1本だけでなくマルチトラックレコーダー(MTR)などを駆使しながら表現していた様子が伺える。"この曲は、アレンジはお願いします。だけどメロディはどう思うか聴いてほしい"っていうときは、ギター1本で弾いてMDに落とすっていうのが多いんですけど、これはちょっとバンドっぽいグルーヴを出したいなっていうときは、MTRを使ってやりますね(BANDSJAPAN '01年8月より)
感覚的とはいえ、クリエイターの片鱗をのぞかせており、現在の楽曲提供活動にも影響を及ぼしていると言える。
また、とにかくデビュー当時のサカノウエさんはひたすらにがむしゃらで、ひたすらにキラキラしていた。
聴くと顔から火が出るような純粋でキラキラした世界を、彼独特の言葉とメロディで紡ぎ、柔らかく可愛いらしいハイトーンヴォイスで歌っていた。そして、それらは浅倉さんの作る音との相性も、抜群に良かった。
それに関して、サカノウエさん本人も
と、語っている。19才でデビューしてハタチになったばっかりの僕に、いい意味でキラキラしている部分があるとして、その部分をアレンジとして音で表現してくれるのは、浅倉さんしかいないと思うし。(BANDSJAPAN '01年8月より)
1stアルバム『TOY』には、そんなデビュー当時のキラキラした楽曲たちがこれでもかというほどに詰まった15曲が収録されている。
アレンジャーにはジャニーズ曲のアレンジなども手がける音楽プロデューサー・CHOKKAKUさん、SHAZNAのヴォーカル・IZAMさんのシークレットネームE's armさんなどが名を連ねた。
現在このアルバムは、所属していたレコード会社がなくなったため廃盤となっているが、2019年3月に「1st album TOY再現LIVE」と銘打った生誕祭ライブが行われ、その模様が収録されたDVDは販売中なのでぜひチェックして欲しい。(外部リンク)
今も変わらぬキーとバンドのグルーヴに加え、表現力も増した今のサカノウエさんを感じることも出来るはずだ。
言葉を紡ぎ、語る熱と深さを共有した須藤晃との出逢い
サカノウエさんが言葉の面で影響を受けたという須藤晃さんは、言葉にこだわったプロデューススタイルでメッセージ性の強い作品を生み出し続けている音楽プロデューサーとして知られている。尾崎豊さんの楽曲をデビュー時からプロデュースしていたことでよく知られる須藤さんだが、村下孝蔵さん、玉置浩二さん、石崎ひゅーいさんらもプロデュースしており、数々の名曲を発表している名手でもある。
サカノウエさんが須藤さんと出会ったのは、尾崎豊さんのトリビュートアルバム「GREEN~A TRIBUTE TO YUTAKA OZAKI」に参加する少し前のこと。
当時サカノウエさんは1stアルバム発売後のこれからというところで、所属していたレコード会社が吸収合併により消滅。
名前を本名の「坂上庸介」名義に変え、これまでのキャッチーでPOPな音楽スタイルから、「ゴリゴリにエレキギターをかき鳴らし、ROCK’N ROLL!!を叫びながらギターを叩き壊すようなスタイル」に変化していた頃である。
今までとはまるで真逆のスタイルを突っ走っていた。
そのスタイルは、"詩は書いて読むものではなく叫んで聴くものである"という考えを持つ須藤さんに響いたのだろう。
須藤さんはトリビュートアルバムのアーティスト解説でサカノウエさんについて
と話しており、その様子は2004年4月22日東京・渋谷AXで行われた尾崎豊トリビュートライブからもその断片を読み取ることができる。ある時、たまたま彼のライブを見るチャンスがあり、その時に、見た目のキレイなルックスに似合わず、抱えているストレスを音楽で発散させるような、すごくアンダーグラウンドなアプローチがカッコ良く映ったことを覚えています。(尾崎豊トリビュートアルバム「GREEN~A TRIBUTE TO YUTAKA OZAKI」プロデューサー須藤晃氏によるアーティスト解説より)
後述する2019年の新曲『抑えきれない僕らのJ-POP』では、主にこの頃をサカノウエさん自身が"軋轢と戦う20代"と綴っているが、まさにこの当時、彼は何かとずっと戦っていた。
それを真っ向から受け止め、純度の高いまま吐き出すことができたのが、音楽だったのだろう。
須藤さんは自身のホームページで当時のSPIRAL SPIDERSについて、こうも語っている。
この人たちのいいところはセンスがポップなところと音が冷めてないところ、できたて感があるところです。湯気が立っている。(AKIRA SUDOH OFFICIAL SITE 制作ノートより)
夜を買い占めんばかりに盛り上がっているのにみんな小銭しかもってないというようなバカさ加減と破天荒さが好きです。そのスピリッツこそがロックです。(AKIRA SUDOH OFFICIAL SITE 制作ノートより)
そんな溢れんばかりの荒ぶる想いを、プロデューサーとして特に言葉に注力しながら導いた須藤さんが、当時"プロデュ-サーのおっちゃん"などと愛嬌たっぷりに呼ばれていたのは、今となっては笑い話となっている。さらけ出すだけさらけ出してかっこつけようがないほど全力を出し切っている姿がどうしようもなくかっこいいわけです。(AKIRA SUDOH OFFICIAL SITE 制作ノートより)
そして、須藤さんはサカノウエさんに関してはこうも語っている。
須藤さんとの出逢いもまた、通ずる何かがあり、サカノウエさんにとって必然だったのかもしれない。僕はライブで坂上が観客にギターを弾きながら語りかけるスタイルにポエトリーリーディングのにおいを以前から感じていた
2019年夏、満を持して約5年ぶりの新曲を発売!
そんな彼が令和元年、前作のアルバム『ニュータウン』から約5年ぶりに僕らに届けてくれたのが書籍付きE.P.『抑えきれない僕らのJ-POP』だ。魅力が詰まった今作の注目ポイントをいくつか紹介したい。 書籍付きというところから、既に熱量たっぷりのサカノウエワールド全開な今作。
フリーアナウンサー小宮悦子さん、お笑い芸人でイラストレーターの鉄拳さん、ソロアイドル吉川友さんなど著名人10名による「マイベストJ-POPソング」インタビュー対談などが収められている書籍は全32ページ。
収録内容の一部は、無料公開されているので、そのJ-POP愛を文字からも感じて欲しい。(外部リンク)
"J-POPあるある"な聴きなじみのあるフレーズやメロディ
イントロのギターフレーズから「あれ?これはどこかで…」と思わせてくれる音から始まるように、歌詞にも眩しい午後に始まり 粉雪は空を舞ってく
ひまわりが風にそよいで ときめき運ぶよ
自転車に乗って最終電車君を見送ったりして
と、「J-POPあるあるフレーズ」が次々と登場し、最初から最後まで、全力でJ-POPへの抑えきれない想いが爆発している。「抑えきれない僕らのJ-POP」は、サカノウエさんから溢れ出てしまったJ-POP愛が音にも言葉にも随所にちりばめられた、J-POPリスペクトソングなのだ。
彼と同世代、特に90年代の"あの時代"が青春だった人にとっては、ど真ん中ストレートなナンバーだ。
ラジオから流れるヒットチャートカセットに録音して
僕らは青春をJ-POPを聴いて学んだ 弾きやすいギターコードで歌うよ
「あの頃のJ-POPあるある」とそれぞれの様々な場面が重なる人も多いのではないだろうか。はじまりは自らを語る楽曲制作
『抑えきれない僕らのJ-POP』は2020年11月にデビュー20周年を迎えるサカノウエさんが、楽曲提供活動に関わるディレクターから「自分史を語るような楽曲は作らないのか?」と問われたところからスタートしているという。ところが、いざ自身を語る楽曲を生み出すべく制作を始めてみると、まるでJ-POPの歴史を辿っているようだ、ということに気がついた。
学生時代の音楽やギターとの出逢いも、大阪で城天に出演していたバンド活動の頃のことも、田舎でラジオを通して最新のミュージックチャートに学んだことも…自分はJ-POPと共に人生を歩んできたのだと。
『抑えきれない僕らのJ-POP』はJ-POPリスペクトソングでありながら、サカノウエヨースケの自分史ソングでもあり、そしてリスナーである僕らの青春にも通じ得る楽曲でもあるのだ。
終わりに
誰にとっても、青春は人生の大事な1ページだ。部活に励んだり、友達と喧嘩したり、恋してみたり…それがキラキラと輝いていた日々でも、心を閉ざしていた日々だったとしても、今の自分を形成する1つの時代であることに間違いはないだろう。
そして音楽は時代を映す鏡でもある。だからこそ音楽はその人の、その曲の、思い出の時代にタイムスリップできる1つのアイテムだ。
20代の時、サカノウエさんはよく"音楽になりたい"と口にしていた。
ある意味、この「抑えきれない僕らのJ-POP」は、サカノウエヨースケが音楽になった曲なのかもしれない。
「大人になった君だから聴いて欲しい歌がある」というキャッチフレーズにあるように、『抑えきれない僕らのJ-POP』で貴方もあの頃の自分に逢いに行ってほしい。
JPOPと共に歩む人生
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リリース情報
書籍付きE.P.「抑えきれない僕らのJ-POP」
- 価格
- 2,700円(税込)
- 発売
- 2019年7月31日(水)
- 備考
- 著名人10名による「マイベストJ-POPソング」インタビュー、
- 対談など収録された全32ページの書籍付き。
- 一部購入店舗により特典あり
【抑えきれない僕らのアコースティックライブTOUR】
チケット前売り 4,000円 / 当日 4,500円 (各D代別)
・2019年8月9日(金)19:00/名古屋 DODO ※J-POPカバーソング付き 終演後サイン会(物販購入者様限定)
・2019年8月10日(土)18:00/京都 きんせ旅館 ※サイン入りTシャツ抽選ジャンケン大会
・2019年8月11日(日)昼の部14:30 夜の部18:30/神戸 高架伍拾七(Coca57) ※夜のみ会場打ち上げ参加付き
・2019年8月12日(月祝)18:00/広島 フランス座 ※ハイタッチお見送り付き
・2019年8月18日(日)17:00/東京 蒲田温泉 ※トーク&ミニライブ&第一興商協賛DAM持込カラオケ大会
・2019年8月24日(土)18:00/新潟 エディターズカフェ ※ リクエスト曲ライブ&終演後サイン会(物販購入者様限定)付き
・2019年8月25日(日)18:00/長野 ロズベリーカフェ ※ 長野ご当地ヨースケ私服チェキ抽選ジャンケン大会付き
・2019年8月31日(土)18:00/仙台 STYLUS ※ツアーファイナル 会場打ち上げ参加付き
【抑えきれない僕らのワンマンライブ with SPIRAL SPIDERS】
8月17日(土)昼の部14:30 夜の部19:00/新宿MARZ
チケット前売り 5,000円 / 当日 5,500円 (各D代別)
【抑えきれない僕らの 8CMシングルトークライブ】
2019年9月1日(日)19:00/新宿LOFT PLUS ONE
チケット前売り 4,000円 / 当日 4,500円 (各D代別)
懐かしき8cmシングルを!90年代J-POPを!サカノウエヨースケが熱く語ります。新宿ロフトプラスワンにて初開催のトークイベント。
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