三月のパンタシアが、成長させてくれた
──三月のパンタシアのミュージックビデオのイラストを手がけることになったきっかけについて聞かせてください。ダイスケ 昨年の夏に会社を辞めてから、1か月くらいイラストの仕事も全部断って滋賀の実家に戻ったんです。それで友達と釣り堀に行ったり、御朱印を集めたりといったニート生活をしていて(笑)。
──結構マジのやつですね……!
ダイスケ その頃はちょっといろいろなことに疲れちゃっていたんだと思います。だけど、ニート生活が1か月くらい経過するといよいよ「ヤバイな」っていう気持ちが出てくるんですよ。「そろそろ働かなきゃ」と思っていた矢先にご依頼のメールをいただいて。それが三月のパンタシアのキービジュアル制作の依頼だったんです。
失礼ながら三月のパンタシアという名前は知っていたものの、楽曲はきちんと聴いたことはなかったんですね。だけど、僕は昔からソニーミュージックのアーティストが好きなことが多かったんですよ。
──ダイスケさんが好きなミュージシャンたちの多くが、なぜかソニーミュージックの所属だった?
ダイスケ そうなんです。姉がソニーミュージックに所属しているT.M.Revolutionの大ファンなんですが、僕が物心ついた時から家でガンガン曲がかかっていたんです(笑)。
これ以外にもソニーミュージックのアーティストの曲を好んで聴いていたので、ソニーさんのロゴが僕の脳裏に刷り込まれているような状態で。「ソニーミュージック=信頼のレーベル」みたいな。
そんな僕の元に届いた三月のパンタシアのメールに「ソニーミュージック」って書いてあったんですね。「ソニーミュージック! これは絶対にやるしかない!」と即決でお引き受けして東京に戻ってきたんです。
──キービジュアルの依頼を引き受けた後の流れはどのような感じだったんですか?
ダイスケ 打ち合わせをして詳しいお話をうかがったら、とても面白そうな内容だったので、その後はサクサク進んでいきました。制作担当の方からビジュアルのイメージを伝えていただいて、打ち合わせの場で僕がラフイメージを描いたら即OK! のような。ビジュアルの制作に関しては終始スムーズに進んでいきましたね。
──三月のパンタシアで一番最初に依頼されたのはどの楽曲だったんですか?
ダイスケ 「青春なんていらないわ」が初めてでした。キービジュアルとリリックのMVですね。イラスト2枚と小物を数点描きました。
ダイスケ 「青春なんていらないわ」以降のビジュアルはすべて描かせていただいています。「ピンクレモネード」「三月がずっと続けばいい」「ビタースイート」「パステルレイン」の5作品ですね。
独立しようと会社を辞めてから1か月のニート期間を経て、ソニーさんからメールをいただいたのをきっかけに「やるぞ!」という気持ちになって。だから、フリーランスのイラストレーターとしての初仕事が三月のパンタシアなんです。そういった意味でも特に思い入れが強い仕事になっていますね。
──三月のパンタシアの楽曲はどう受け止めていますか?
ダイスケ いつもCDをいただいたタイミングで改めてちゃんと聴いているので、どうしても「絵が楽曲と合っているかな……」という不安な気持ちで聴き始めるんですよね。「それで合ってた! 良かった!」って。ビジュアルで携わっていると、フラットないちリスナーとしては聴けないという状態になってしまっています(笑)。
ダイスケ そうですね。みあさんから「ダイスケさんのイラストに合わせる」と言っていただけたので、「髪は何色にする?」みたいなところから始まって。ライブの衣装などにもイラストの要素を取り入れていただいています。
──三月のパンタシアのビジュアルを制作するうえで、特に意識されていることはありますか?
ダイスケ ありがたいことに、三月のパンタシアのお仕事では僕の感性を尊重していただけていて、特に大きな縛りもなく基本的には自由に描かせていただいています。いつもの作風で自由に描いてほしいと伝えられているので、そのように描かせていただいているんですが、だからこそ具体的な要望があった際には最大限それに応えるようにしています。
それから、いただいた楽曲をいかに魅力的なビジュアルとして表現するかといったことは意識しています。ただ、あくまでも主役は音楽なので、僕のイラストは楽曲の世界観を引き立たせるためのひとつの要素に徹しようとは思ってます。
──前作の「ピンクレモネード」のイラストもそうなのですが、バストアップの構図であったり、ニューアルバムの『ガールズブルー・ハッピーサッド』では顔が大きく描かれている大胆な構図であったり、ダイスケさんの個人制作では描かれることのなかったイメージで、“新境地”的な新鮮さがありました。
ダイスケ 確かに、三月のパンタシアのお仕事では、自分ひとりで描いている中では決して出てこないような方向性にはいっています。構図等も含めて、これまでにやったことのないアプローチをしているのは間違いないので、そういうチャレンジングな表現に不安がありながらも、模索して進んでいった結果、自分でも納得のいく新しいイラストを描くことができました。
ダイスケ 本当にそう思いますね。ほかの仕事では「この作品のようなイメージで」という過去の作品を基に制作するケースも意外と多いんです。すでにある引き出しの中から制作するので、クライアントにとっても僕にとっても仕上がりのイメージが見えて、ある意味では安心感があるんですが、それをずっと続けていては表現が先細っていくと思うんですね。
三月のパンタシアのお仕事では、新しいことに挑戦していける機会をいただけていて、それは貴重でありがたいことだと思って取り組んでいます。それから、音楽のお仕事の場合はスケジュールが結構タイトめであることが多いので「とりあえず勢いで走り出すしかない」みたいなところもあって、その点も自分の性に合っているように感じています。 ──お互いに良い関係性を保ちながら制作ができているんですね。最後に、ダイスケさんが今回キービジュアルを担当されたニューアルバム『ガールズブルー・ハッピーサッド』の楽曲の聴き所やアートワークの見所について聞かせてください。
ダイスケ 楽曲個々というよりは、ぜひアルバムを1枚通して聴いていただきたいですね。イラストでいうと春の曲だったら桜、ハロウィンだったらかぼちゃ、梅雨だったら雨、のように、1年の流れを感じられるような構成になっているので、配信で好きな曲だけを買うのではなく、“全体を通して聴くからこその良さ”が感じられるアルバムだと思います。
アートワーク面に関しては、Blu-ray付きの初回生産限定盤のBOXの仕様が、いまどき珍しいくらい本当に豪華なつくりになっているんです。僕も実物を初めて見たときは驚きました(笑)。これには描き下ろしのイラストカードセットも封入されているので、ぜひ実物を手に取って楽曲とともに楽しんでいただけたらなと思います。
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ダイスケリチャード
イラストレーター
4月14日生まれ。滋賀県出身、東京在住のイラストレーター兼デザイナー。2016年2月活動開始。下着とスガキヤの五目ご飯が付いてくるセットが好き。2018年、初の作品集『気化熱』を刊行。
Twitter(@daisukerichard)
三月のパンタシア
クリエイタープロジェクト
“終わりと始まりの物語を空想する”
ボーカリスト「みあ」による音楽ユニット。2016年にTVアニメ「キズナイーバー」のEDテーマ「はじまりの速度」でメジャーデビュー。2019年3月13日にウェブ上を中心に「音楽×小説×イラスト」を連動させた自主企画『ガールズブルー』をテーマにした2nd アルバム「ガールズブルー・ハッピーサッド」をリリース。6月9日にはアルバムをテーマにした同名のワンマンライブの開催が決定しており、いま最も注目される音楽ユニットのひとつとなっている。
Twitter(@3_phantasia)
1件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:2704)
素敵なイラストレーターさんですね