AZUMA HITOMIが語る、『CHIRALITY』について
リハーサルを終えたAZUMA HITOMIさんにニューアルバム『CHIRALITY』についてお話を聞いてみました。──今作のタイトルになっている「CHIRALITY(キラリティー)」という聞き慣れない言葉ですが、どのような意味があるのでしょうか。
AZUMA HITOMI 『CHIRALITY』という名前は造語ではなくて、しっかりとした意味があるんです。鏡にうつった世界を想像してもらうと分かり易いんですが、そこに映った像って平面上では絶対に重なり合わないようにできているんです。例えば左手の掌を右手の甲にのせても、同じ形だけど重なり合わない。その関係をキラルであるっていうんですよ。日本語だと対掌性(たいしょうせい)っていう物理や化学の用語です。分子というのは、一見同じ分子式に見えても、人間が取り入れられるタンパク質も片方しかないとか、意外とそんな風に分かれているんですよ。
そういう仕組みを知っていろいろ考えると、一見同じに見えて実は相反するものってたくさんある。自分が良いと思っていることと、そうでないと思っていることの二つだけで世界を語ることはできなくて、良いと思っていることも必ず悪部分を持っている。今回つくったアルバムを通して、自分と世界との関係を歌うということで、イメージが繋がった感じです。
前作の『フォトン』も光の粒子という意味で物理っぽかったので、そこからも繋げて、流行のリケジョな感じを出してみました(笑)。 ──(笑)。いつ頃からあんなにたくさんの機材を使ってライブするようになったんでしょうか。
AZUMA HITOMI ライブ自体は大学に入学した2007年からやっていました。最初にライブで使い始めたシンセサイザーがALESISのMicronだったんですが、両手が使えるからもう一個欲しくなったり。フットペダルも、テクノだけど単なるコンピュータ出しのカラオケにならないよう、グルーヴを出すために自分で低音は弾いたほうが良いなと思って増やしたり。ライブパフォーマンスを面白くしたい! と考えた結果、どんどん機材が増えていった感じですね。アルバムでもライブでも、黄色いシンセサイザーのMopho Keyboardが音の中核を担っています。
バンドもやってみたいんですが、なかなかチャンスがなくて。いつ誘われてもいいように、なんでも練習しておこうと思っています! でも全部一人でやってしまっている状況です(笑)。
これまではAメロ、Bメロからサビを歌うみたいな王道の道筋で歌うことで、ポップな領域を目指すという方法が多かったのですが、今作では、AメロとBメロだけで構成して、じわじわと楽しくなったり、景色をつたえるような曲も書いています。歌詞も今までなら書けないこととか、思い切って出し切ってみました。
──すごく楽しみです。ちなみに顔出しされた理由はどのようなところに……?
AZUMA HITOMIテレビ東京で矢野顕子さんのドキュメント番組があったんですが、彼女のアルバムにトラックメーカーとして参加させてもらったんですね。そこでディレクターの方に私も映ってもらいたいと言われたのがきっかけです(笑)。
もともと顔出しに抵抗があるわけではなかったんですけど、本当に私は音のことしか考えていないので、人に見られるってなると全く違う脳みそを使うのが大変で……取材の時にも女子としてちゃんと見られる状態にしないといけないとか(笑)。
でも顔を出して、本名で自分つくった曲を届けるというのは、すごく責任や覚悟を伴うことで、だからこそやって良かったです。
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