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POPなポイントを3行で

  • チャンス・ザ・ラッパーが地元シカゴの市長に立候補?
  • 一時SNSでは祭り状態になるも、会見で否定
  • 珍しくない米アーティストの政治意見表明

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シカゴ市長選めぐって全米が大騒ぎ 渦中にいたのは25歳の世界的ラッパー

画像はチャンス・ザ・ラッパーさんのFacebookより

アメリカのラッパーであるチャンス・ザ・ラッパーさんが、シカゴ市長への立候補を匂わせるツイートをしたことが話題となった。 彼がツイートした「たぶんそうすべきかもしれない」(Im thinkin maybe I should)というフレーズは、2015年に発表した自身の楽曲「Somewhere In Paradise」の歌詞と合致しており、「シカゴ市長への立候補か?」と思わせるには十分な素材だった。

They say I'm saving my city, say I'm staying for good
(みんな俺が街を助けてる、街のために素晴らしいことをし続けてると言う。)

They screaming Chano for mayor, I'm thinking maybe I should
(みんな“チャノ(チャンスの愛称)を市長に”と声をあげてる。多分そうすべきかもしれない。) 「Somewhere In Paradise」より

アメリカでは現在、11月6日(火)に中間選挙を控えている(※)。現職のラーム・エマニュエル市長が再選を望んでいないと公表したこともあり、「チャンス・ザ・ラッパーがシカゴ市長立候補を示唆」「No Chance(ノー・チャンス)だ」「おそらく支持候補の表明だ」などなど、各種メディアが一斉に報じた。

※アメリカでは大統領選挙の任期4年間の中間にあたる2年目に、上院議員と下院議員の選挙が行われている。また、任期が満了した州知事や、各自治体の公職に関する選挙も実施。シカゴ市長も任期が切れるタイミングだった。

社会貢献活動でも知られるチャンス・ザ・ラッパー

チャンス・ザ・ラッパーさんは、SoundCloudをはじめとするストリーミングサービスですべてのアルバムを無料でリリースし、「音楽を販売しないラッパー」として知られている。

海外では大きなフェスのヘッドライナーとして引っ張りだこ、世界の音楽シーンを語る上で今最も重要な人物の一人だ。

チャンスさんは自身でチャリティ団体を設立するなど、数多くの社会貢献活動を行なっていることでも知られており、その楽曲や人柄、活動から地元での人気はかなり高い。

地元メディアである「Chicagoist紙」の買収や、公立高校に約220万ドルの寄付(先日、今後も3年間にわたってシカゴの20以上の学校に10万ドルを寄付することも発表)、メンタルヘルスサービスに100万ドルの寄付など、シカゴのコミュニティへのサポートを常に積極的に行なってきた。

つい先日に公開された、自身のチャリティのパートナーであるLyft(UBERと並ぶアメリカの配車サービス)とのコラボレーション企画も大きな話題に。タクシードライバーに扮装して乗客を乗せ、シカゴの若者を支援するチャリティへの協力を求めるというものだ。
なお、チャンスさんの父であるケン・ウィリアムズ=ベネットさんは、シカゴ初の黒人市長ハロルド・ワシントンの補佐官や、オバマ元大統領の副補佐官としてホワイトハウスに勤務した経歴をもつ人物。チャンスさんも政治の世界に遠くない環境にはあるといえる。

「彼を市長に」という声は以前から根強く存在していた。そして前述の歌詞の通り彼自身もそれについて考えていることが示唆されていたため、チャンスさんの立候補はあながちあり得ないことでもなかった。

そういった背景もあって、冒頭のツイートを受けて「Chano for Mayor!(チャノを市長に!)」というコメントで一時はお祭り状態となった。

実際には、その後の記者会見でチャンスさんは無名の政治家アマラ・エニヤ(Amara Enyia)さんの支持を表明し、「シカゴの市長に立候補することはたぶんないと思う」 とコメントした。

政治的信条を公にするアメリカの著名人たち

25歳という年齢で、しかもアメリカ音楽シーンのトップアーティストが市長立候補を示唆、さらに信憑性がなくもないということはセンセーショナルであるものの、今回のチャンス・ザ・ラッパーさんのような、アーティストやセレブリティが自身の政治的信条を表明することは、アメリカでは珍しいことではない。

最近では中間選挙を控え、これまで特定の支持政党や、自身の政治的信条を公にすることがなかったテイラー・スウィフトさんも、自身のInstagramでトランプ大統領との対立候補(民主党)支持を表明している。

一方、ラッパーのカニエ ・ウェストさんがテレビ番組でトランプ大統領への支持について語り、最近ではホワイトハウスを訪ねている。 過去を振り返っても、2016年の大統領選挙では、ポール・サイモンさんやニール・ヤングさん、スパイク・リーさんやレッド・ホット・チリ・ペッパーズなどが、民主党候補者のバーニー・サンダースさんの支持を表明。

レディー・ガガさんはたびたび、感情による党派(信条)の二項対立には常に警鐘を鳴らしており、全米でもっとも注目度の高いスーパーボール・ハーフタイムショーでの2017年のパフォーマンスは注目を集めた(政治性要素のないショーだったといわれるが、隠れた政治的メッセージが内包されているという見方も多い)。

また2017年のゴールデングローブ賞でのメリル・ストリープさん、グラミー賞授賞式でのア・トライブ・コールド・クエストの痛烈なトランプ批判など、こういった大舞台でも、アーティストが自身の政治的なオピニオンを主張することは珍しくない。

アーティストにとどまらず、2017年にはNFL(アメリカンフットボールのプロリーグ)のスター選手であるコリン・キャパニック選手が、人種差別に抗議して試合前の国歌斉唱を片膝をついて拒否。

さらには、これを攻撃的な姿勢で非難するトランプ大統領に対し、主要チームの選手たちが全員で同じく片膝をついて国歌斉唱を拒否。リーグ全体でも結束してこれを容認したことは、全米で大きな波紋を呼んだ。

政治とカルチャーは切り離せるもの?

日本では、こういった現象は稀かもしれない。タレントが政治的な意見を述べることはタブー視される傾向にあり、若者も政治を語ることは「ダサい」「イタい」という認識が少なからず存在する。

以前に議論となり、かつ一定の賛同を得ていた「音楽に政治的イシューを持ち込むな」という意見も、そういった背景から浮かび上がったもののように感じる(とはいえ、政治性、社会への反発という文脈は音楽の一要素にすぎず、「そもそも音楽は! はじめから政治的な主張が込められていて!」と言うつもりも毛頭ない)。

アメリカの選挙のより強いエンターテインメント性もあるのかもしれないが、こうしたポップアイコンたちの政治的言動によって、日本と比べるまでもなく若年層の積極的な政治参加(投票)につながっているという側面も少なからずあるだろう。

アメリカのスケートボーダーやパンクロックバンドに「Support Your Local」という精神があるのと同様に、ヒップホップのローカル・コミュニティへの貢献意識や、アメリカの政治的主張への寛容さを、今回のチャンス・ザ・ラッパーさんの件は、わかりやすく表しているように思えた。

アメリカのリアル

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