インフルエンサープロダクションである株式会社VAZが、新事業として就職支援サービス「バズキャリア」を立ち上げた。発起人となったのは、VAZの代表をつとめる森泰輝さんと同社に所属するYouTuber・ヒカルさん。
ともに高卒という2人は、2018年の大卒の就職内定率が過去最高の91.2%を記録するなど新卒市場が盛り上がる中で、非大卒者に着目。若者一世代における人口比率が52.3%にも及ぶ「非大卒人材」市場に向けた民間サービスとして確立を目指している。
2017年8月に開催した就活イベント「NEXTSTAGE TOKYO」では、1週間で約1万4000人からの登録を集め、選考を経て当日は非大卒者約300名が参加。約25社の企業が協賛したイベントは、ワークショップや個別企業説明会、企業訪問などを通じて、参加者と企業が双方の理解を深め、「参加者のうち約80人が優良企業に内定した」という。
そんなバズキャリアが新たにスタートしたのが、内定直結型イベント「バズキャリ就活」だ。“全員内定”をコンセプトに、「イベントプログラム」と、キャリアアドバイザーが事後のフォローまでサポートする「サポートプログラム」の2つで構成。バズキャリ就活〜結果で壊せ〜【レポート動画】
3月3日と18日には、VAZオフィスでイベントプログラムが開催。両日はそれぞれ約7000人の応募者から選考された各50人、合わせて約100人の非大卒者が、「逆求人型自己PR」や「営業体験ワーク」といった独自の企画を通じて凌ぎを削った。
取材・文:椿拓真 編集:恩田雄多
ヒカルさんも「非大卒者にも本当は可能性やチャンスがある」ことに気づいてほしいと語る。背景には、高校卒業後の出会いが価値観を変えたという自身の実体験がある。 「僕は何の努力もせずに高校を卒業して、何も考えずに工場に就職しました。すぐに辞めてしまったんですが、その後に出会った経営者が僕の限界を壊してくれたんです。当時は田舎に住んでいたので、社長という人間に会うのも人生で初めて。その人と話す中で、自分の視野が広がっていくのを感じましたし、努力の必要性を学びました」(ヒカルさん)
出会いを振り返るとともに、「参加者のみなさんにも、イベントに参加している企業の話を通じて、同じような体験をして、チャンスに気づいてほしい」と、バズキャリ就活の意義に言及した。
しかし、森さんによると「なぜ芸能プロダクションがタレントを立てて就職支援事業を展開しないのか、疑問に感じていた」という。大衆に対して、情報やメッセージをわかりやすく届けられるのが有名人であることは、CMへのタレント起用を見ても明らか。
それなら、現代の10代・20代にとって影響力を持つのは「VineやMixChannel、YouTubeのような動画メディアから生まれ、人気を獲得していった"一般人”」。中学生の時点でスマートフォンを保有するスマホネイティブ世代(1998年生まれ前後)には、YouTubeも、そこで人気を集めるYouTuberも、日常的な存在だ。 「僕らの事務所にTVタレントはいませんが、所属するYouTuberの若者への影響力はこの数年で大きく成長できました。彼らの言葉や活動を通じて、就職支援という一見堅そうな情報でもポップに届けることができると考えています」(森さん)
成長したタレントを活かして、新事業をはじめたVAZ。一方、YouTuberであるヒカルさんは、新たに始動した活動について、どのように感じているのだろうか。
「YouTuberとしての活動とは対極にありますが、どちらも面白いですね。普段は純粋なエンターテインメントなので、目的は視聴者に楽しんでもらうこと。ただ、VALUでの炎上などを経て、改めて社会的に意義があるかと言われると、自分でも楽しいだけかなと。逆にバズキャリアは見ても楽しいものではないですが、社会に変化を起こせるようなサービスだと思っているので、事業家として関わっていて違う面白さがあります」(ヒカルさん)
冒頭、ヒカルさんが自身の過去を振り返りながら、参加者に対してエールを送ると、いよいよバズキャリ就活がスタート。この日は、エイベックスやCAモバイル、カインドウェア、Fan’sなど、様々な業種の企業が参加。担当者は「非大卒就活生は、ハングリー精神がある」「実際に採用を進めている」と、すでに一定の手応えを実感しているようだった。
続いて、各企業からの担当者から、事業内容や求める人物像が語られていく。 とりわけ、自身も高卒というマクサスの社長・関さんからは「高学歴の人は努力の結果を肩書きで示せるが、中卒・高卒には誇れる実績がおそらくほとんどない。僕らは自らの価値を、結果を出すことによって証明するしかない。そこに共感できる人と一緒に働きたい」と、厳しくも熱い言葉が投げられ、参加者の背筋がピンと伸びるシーンもあった。
「面白い」「自信がある」と感じたことを通じて、自分をプレゼンする。YouTuberとしての活動を楽しみつつ、それが仕事にもつながっているヒカルさんは、「企業で働く」ことについてはどう考えているのだろうか。 「命を捧げるイメージを持っています。以前、“就職で全部決まっちゃうよね”って言われたことがあって。乗る車も、住む場所も、食べ物も……すごい極論ですけど、少なからず人生すべてが決まるに等しい面もあるじゃないですか」(ヒカルさん)
正直、意外な回答だ。しかしヒカルさんは「だからこそ適当に考えないでほしい」と続ける。
「就職で人生が決まる=死ぬまでそこで働く可能性があるってことを、もっとみんなに考えてほしいと思っています」(ヒカルさん)
イベントはその後も、営業体験ワークなどを通して、企業担当者と参加者のマッチングが進み、最後の懇親会では、実際に、高校を中退してからアルバイトしかしてこなかった参加者が、企業担当者から直接声をかけられていた。
「VAZ」と、所属する「YouTuber・ヒカルさん」が、「非大卒」を対象に立ち上げた就職支援サービス・バズキャリア。一見、奇抜な事業のようにも見えるが、根底には自分たちの過去と、“かつての自分たち”を取り巻く環境がある。まだまだ始まったばかりの取り組みであるが、若者に影響力のあるタレントが立ち上げた就活の新たな選択肢として、今後を注視していきたい。
ともに高卒という2人は、2018年の大卒の就職内定率が過去最高の91.2%を記録するなど新卒市場が盛り上がる中で、非大卒者に着目。若者一世代における人口比率が52.3%にも及ぶ「非大卒人材」市場に向けた民間サービスとして確立を目指している。
2017年8月に開催した就活イベント「NEXTSTAGE TOKYO」では、1週間で約1万4000人からの登録を集め、選考を経て当日は非大卒者約300名が参加。約25社の企業が協賛したイベントは、ワークショップや個別企業説明会、企業訪問などを通じて、参加者と企業が双方の理解を深め、「参加者のうち約80人が優良企業に内定した」という。
そんなバズキャリアが新たにスタートしたのが、内定直結型イベント「バズキャリ就活」だ。“全員内定”をコンセプトに、「イベントプログラム」と、キャリアアドバイザーが事後のフォローまでサポートする「サポートプログラム」の2つで構成。
取材・文:椿拓真 編集:恩田雄多
ヒカルによる非大卒者就活支援サービス「バズキャリ就活」
YouTuberなど若年層に影響力のある人材を活用したインフルエンサー事業の印象が強いVAZ。どちらかと言えば、エンターテインメント色が濃い彼らが、なぜ就職支援サービスを立ち上げたのだろうか。森さんによれば、「以前から就職支援事業を展開したかった」という。 「もっとも大きな理由は若者の選択肢を広げたかったからです。リクナビやエン・ジャパンなど、大卒者向けには様々な就職(活動)支援サービスがありますが、非大卒者が外部のサービスを利用しようと思った場合、実はほぼハローワークしか選択肢がない。そんな状況を変えたいと思っています」(森さん)ヒカルさんも「非大卒者にも本当は可能性やチャンスがある」ことに気づいてほしいと語る。背景には、高校卒業後の出会いが価値観を変えたという自身の実体験がある。 「僕は何の努力もせずに高校を卒業して、何も考えずに工場に就職しました。すぐに辞めてしまったんですが、その後に出会った経営者が僕の限界を壊してくれたんです。当時は田舎に住んでいたので、社長という人間に会うのも人生で初めて。その人と話す中で、自分の視野が広がっていくのを感じましたし、努力の必要性を学びました」(ヒカルさん)
出会いを振り返るとともに、「参加者のみなさんにも、イベントに参加している企業の話を通じて、同じような体験をして、チャンスに気づいてほしい」と、バズキャリ就活の意義に言及した。
YouTuber・ヒカルが看板を背負う意義
バズキャリアの目的は理解できたものの、まだまだ疑問が多いのも事実。若年層に人気のYouTuberを抱え、次世代の芸能プロダクションのようなVAZと、就職支援事業との親和性が高くないように思える。しかし、森さんによると「なぜ芸能プロダクションがタレントを立てて就職支援事業を展開しないのか、疑問に感じていた」という。大衆に対して、情報やメッセージをわかりやすく届けられるのが有名人であることは、CMへのタレント起用を見ても明らか。
それなら、現代の10代・20代にとって影響力を持つのは「VineやMixChannel、YouTubeのような動画メディアから生まれ、人気を獲得していった"一般人”」。中学生の時点でスマートフォンを保有するスマホネイティブ世代(1998年生まれ前後)には、YouTubeも、そこで人気を集めるYouTuberも、日常的な存在だ。 「僕らの事務所にTVタレントはいませんが、所属するYouTuberの若者への影響力はこの数年で大きく成長できました。彼らの言葉や活動を通じて、就職支援という一見堅そうな情報でもポップに届けることができると考えています」(森さん)
成長したタレントを活かして、新事業をはじめたVAZ。一方、YouTuberであるヒカルさんは、新たに始動した活動について、どのように感じているのだろうか。
「YouTuberとしての活動とは対極にありますが、どちらも面白いですね。普段は純粋なエンターテインメントなので、目的は視聴者に楽しんでもらうこと。ただ、VALUでの炎上などを経て、改めて社会的に意義があるかと言われると、自分でも楽しいだけかなと。逆にバズキャリアは見ても楽しいものではないですが、社会に変化を起こせるようなサービスだと思っているので、事業家として関わっていて違う面白さがあります」(ヒカルさん)
エイベックスにCAモバイル、参加企業からは手応えも
若年層へのアプローチを得意とするVAZの新事業・バズキャリア。KAI-YOU.net編集部ではイベントとしては2回目となる3月18日、バズキャリ就活の会場に潜入。プログラムの一部始終を取材してきた。 当日、集まった参加者の年齢は20代のみ。男女比はほとんどが男性で、大半がスーツを着用。冒頭、ヒカルさんが自身の過去を振り返りながら、参加者に対してエールを送ると、いよいよバズキャリ就活がスタート。この日は、エイベックスやCAモバイル、カインドウェア、Fan’sなど、様々な業種の企業が参加。担当者は「非大卒就活生は、ハングリー精神がある」「実際に採用を進めている」と、すでに一定の手応えを実感しているようだった。
続いて、各企業からの担当者から、事業内容や求める人物像が語られていく。 とりわけ、自身も高卒というマクサスの社長・関さんからは「高学歴の人は努力の結果を肩書きで示せるが、中卒・高卒には誇れる実績がおそらくほとんどない。僕らは自らの価値を、結果を出すことによって証明するしかない。そこに共感できる人と一緒に働きたい」と、厳しくも熱い言葉が投げられ、参加者の背筋がピンと伸びるシーンもあった。
「人生も決めかねない」就職先に自らを1分でPR
緊張感が高まったあとに待っているのは、就職を希望する参加者自らが企業に、1分間で自身をアピールする「逆求人型自己PR」。大卒に比べて「継続的な努力という点がネック」(参加企業の担当者)という非大卒が、自分の強みや個性を自由に披露できる場だ。 自由とは言いつつも、制限時間は1分間。前もって練習を重ねているとはいえ、短時間でなんとか印象を残そうと試行錯誤を続けていく。大卒の自己PRであれば、アルバイトやサークル、ゼミなどの話が多いが、非大卒は経験した仕事の話から「筋トレ」や「ゲーム」など、幅広い話題を用いて自身をPRしていた。「面白い」「自信がある」と感じたことを通じて、自分をプレゼンする。YouTuberとしての活動を楽しみつつ、それが仕事にもつながっているヒカルさんは、「企業で働く」ことについてはどう考えているのだろうか。 「命を捧げるイメージを持っています。以前、“就職で全部決まっちゃうよね”って言われたことがあって。乗る車も、住む場所も、食べ物も……すごい極論ですけど、少なからず人生すべてが決まるに等しい面もあるじゃないですか」(ヒカルさん)
正直、意外な回答だ。しかしヒカルさんは「だからこそ適当に考えないでほしい」と続ける。
「就職で人生が決まる=死ぬまでそこで働く可能性があるってことを、もっとみんなに考えてほしいと思っています」(ヒカルさん)
イベントはその後も、営業体験ワークなどを通して、企業担当者と参加者のマッチングが進み、最後の懇親会では、実際に、高校を中退してからアルバイトしかしてこなかった参加者が、企業担当者から直接声をかけられていた。
「VAZ」と、所属する「YouTuber・ヒカルさん」が、「非大卒」を対象に立ち上げた就職支援サービス・バズキャリア。一見、奇抜な事業のようにも見えるが、根底には自分たちの過去と、“かつての自分たち”を取り巻く環境がある。まだまだ始まったばかりの取り組みであるが、若者に影響力のあるタレントが立ち上げた就活の新たな選択肢として、今後を注視していきたい。
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