初音ミクを描くということ
──今回、12曲12枚のイラストが揃いましたが、ご覧になってみていかがですか?ナクアミ こうして並べてみると壮観ですね。
おぐち 一見、同じモチーフにしたとは思えないくらいみなさん違うテイストに仕上がってますが、やっぱりどれもミクなんですよね。
ヨシツギ 本当にミクちゃんのアイコン感は強いですね。
ナクアミ 水色の髪にツインテールと言えば、もうそれだけでミクですよね。そこの特徴さえ押さえて描けば、絵心がない人でも、変わった画風の人でも、誰が描いてもミクに見えるっていう稀なキャラクターだと思います。
おぐち そういう意味では、ミクは描きやすく、優しいキャラクターではあります。逆に、ミクで変な髪型をするとイメージが崩れかねない。ツインテールが強いアイコンになっているので。 ──「誰でも初音ミクを描ける」という事実がある上で、それでもイラストレーターとしてミクを描くということには、何か特別な意味があるのでしょうか?
ナクアミ 今、ミクのイラストは数え切れないほどありますが、その中で「あなたのミク良いですね」といったコミュニケーションが成立する媒体としての魅力があると思います。
得体のしれない形のミクを描く人もいるけど、それもミクとして成立していて、みんなで見せ合って楽しんでいる状況もありましたね。
おぐち ある種の絵描き歌のように、誰にでも扱いやすいモチーフになったことで、それをどうやって自分で料理するか、ミクというアイコンをいかに崩すかという楽しみはありますよね。
ヨシツギ それでも、ミクちゃんが歌うことに意味のある曲だったら、ミクちゃんらしく描こうと思いますし。でも、やっぱりミクちゃんを使っている曲には、それ自体に意味を持たせた曲が多い気がします。私が描く時は、だいたいミクちゃんっぽい絵になりますね。
ナクアミ それこそ『初音ミク』というソフトが発売されてすぐの頃は、ミク自身のことを歌っている曲が多かったと思います。「マスター、私はあなたのために歌います」みたいな感じの。
まだVOCALOIDの種類が少なくて、ミクに新しさがあった頃は、必然的にミクというキャラクターを使って、みんなが独自の解釈でミク自体の世界観をつくっていったという流れもありました。「ミクかわいい」だけで成立する曲をつくる人もいれば、「ミクは楽器だ」と考えて曲をつくる人もいて、人間的なキャラクターとして扱うのか機械的な存在として扱うのかという捉え方の違いも多種多様でおもしろいところですよね。
例えば「メルト」のあたりからボカロに触れている人と、物心ついた時にはミクがあった世代の人とで、ミクに対してどんな認識の差があるのかは、僕も気になるところです。
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