「ワンマンのチケットが売れない」結成3年目のヒゲドライVANが晒け出す悩みとは?

2016.7.ナイフのような社長が吐いた弱音の理由

ワンマンライブを目前に控えた、7月頭。都内スタジオで練習するというヒゲドライVANメンバーの元を訪れました。

2016年7月、都内スタジオにて

粛々と練習を続ける4人。前回の取材から1年が経ち、素人目にも、バンドとしての技術力は明らかに向上しているように見えました。

では、一体何が問題なのでしょう?

ワンマンライブのチケットが全然売れてないんですよ……」

「まじっすか。…2年ぶりのワンマンですよね?」

「そうなんですよ。だから参ってるんですよ……」

いつも尖った社長こと村田さんが、いつになく弱気の様子。

どれだけ尖っているかと言うと、冒頭にリンクを貼った、ヒゲドライバーさんの実家を訪ねた特集において、自身の古巣である大手レーベル・avex(エイベックス)を散々disって、原稿になっても特に直さずにそのまま配信してくださいって言っちゃう、切れ味鋭いナイフのような村田さんです。

集大成であるワンマンライブを見てほしくないの?

ひとまず、村田社長の悩みは置いておいて、メンバーの皆さんが集まったところで取材を始めました。

「この一年を振り返っていかがでしたか?」

「長かったですね。ほんとに、色々やった。『LOVE』をリリースしてライブして、デカいイベントにも出れて、ストレイテナー/another sunnydayのナカヤマシンペイさんとも共演させてもらえて、バタバタしながら過ごした一年でしたね」

「ライブ本数で言うと、6月が多かったよね。『インターネット・ノイローゼ』リリース直前ツアーってことで、全国で6公演やって」

「それで体調崩して、今日全然声出てないんですけどね…(苦笑)」

「「バンドとしてやっていける」っていう手応えみたいなものを感じた瞬間はありましたか?」

「手応えかぁ……ミニアルバムの表題曲でもある『インターネット・ノイローゼ』は、「初めてバンドでひとつの曲を仕上げた」くらいの充実感はありました。これをヒゲドライVANの武器としてライブで戦っていくぞと思える曲だったので、僕らにとっては大きかったですね」

「ヒゲドライバーの曲をバンドにアレンジした『Kiss Me EP』とは全く別物だからね」

「名前を本名に変えたことも含めて、「もっとバンド感出そうぜ」ということは話し合っていたので、転機になる曲だと思います」

「CDも初の全国流通で、そういう意味ではバンドとして勝負をかけているという印象があります」

「そうですね、そういう側面はかなりあります。これで成功させたいなと」

「「2年目、夏、やるっきゃねえな」みたいな(笑)。色んなライブに参加させてもらって、失敗もあったけど、でも着実にバンド感はアップしていっています」

「もうすぐワンマンですしね」

「ワンマンについては、どうであろうと、それを糧にして続けなきゃいけないなって思ってます。演奏もいきなり上手くなる訳じゃないし、ワンマンを経て、続けることが大事、と思っています。怖いは怖いんですけど……」

「それは、万が一、CDの売上やワンマンで良い結果が出なかったとしても、ということでしょうか?」

「そうですね。ナカヤマシンペイさんに「やっぱ場数だよ」って言ってもらって。僕らはバンドとしてはまだまだこれからだから、早く見切りを付けてしまいたくはないなって思いました。だらだらやりがちなので危険かもしれないけど、できるだけ長くやれるようにしたい」

ヒゲドライVAN×ナカヤマシンペイ

ヒゲドライVAN×ナカヤマシンペイ

この組み合わせに"?"なリスナーも多いことだろう。かたやストレイテナー/another sunnydayのナカヤマシンペイ、かたやピコピコ系哀愁ロック・バンドと称されるヒゲドライVANである。すでに3月には対バンも果たし、親交を深めつつある両者に、ヒゲドライVANのニュー・ミニ・アルバム『インターネット・ノイローゼ』のリリース・タイミングでクロス・トークをオファー。話はほとんどヒゲドライVANのバンドお悩み相談に!? 彼らならずとも世のバンドマンは大きく頷けるやり取りになってます!

skream.jp

「それはメンバー全員の共通認識なんですか?」

「きっと、多分。え、違います? これでダメだったらオシマイってなる??」

「……個人的には、もうちょっと、1つ1つを大事にするべきだったとは思いますね。今回、リリースとワンマンが近すぎて。みんなリリースのことばかりで、ワンマンに意識が全く向いてなかったことが、ワンマンにあまり人が呼べていないという結果に繋がってる。

それぞれ他のバンドや作家としての活動があって、自分も会社の経営がある。みんな器用じゃないから、あれもこれも、とはできない。だけど、本当はどれも大事なことだから1つ1つ、数字もちゃんと見ないといけないんです。

だって、見方によっては、もし200人入った初めてのワンマンより今回の方が少なかったら、「成長してねーじゃん」ってことになる。最初だから、物珍しさだったりお祝い的な意味だったりというのもあっただろうけど、演奏は上手くなってたとしても、人が離れていってるということになってしまう」

「一番大きな原因は、意識の部分ですか?」

「個人の発信が足りてなかったから。ここまで一生懸命やってきたことを見せるのがワンマンライブという場であるはずなのに、裏を返せば、「みんな自分たちの2年の集大成を見てくださいって思ってなかったの?」とまで勘ぐってしまう。自分たちの気持ちがリリースで留まっててしまうのであれば、「音源を聴いてください」でいいわけじゃん」

「生ライブの重要性を痛感して再スタートを切ったヒゲドライVANなのに、ライブに来てもらえなかったら本末転倒だと」

2016.7.15に向けて なぜ、バンドをやるのか?

「社長は割と、ネット/リアルみたいな言い方をされますが、皆さんからは、今のバンドシーンはどういう風に見えているんですか?」

「盛り上がってると思いますよ。最近は、新人も類を見ない数が出てきてますからね。一時期、ネット系のクラブミュージックシーンがバーッと流行ったときと同じような熱気を感じます。サーキットイベントもフェスも増えて、もちろんCDリリースも増えてる。しかも、実際どれだけ売れてるのかて調べると、意外と3000枚〜5000枚くらいのCDを自主的に売ってる人たちが結構存在している」

「大きな市場ではないけど、カルチャーとしてちゃんと新しいプレイヤーを輩出できる土壌はちゃんと続いているってことですね」

「バンドを始める理由はそれぞれで、1人でやる限界を感じてバンドになるパターンもあれば、1人でやるのがつまらなくなったというのもあるでしょう。でも単純に、バンドは楽しいですからね。誰かと一緒に生で何かをやるっていう面白さは、ある意味ネット発のミュージシャンが全盛になったときに、逆に新鮮味が出るようになったのかも。

これもゲスい話ですけど、最近、バンドに対して夢があるなって思わない? シンゴはずっと、モテたくて音楽を始めて、ガッキーと付き合いたいって言ってるけど、バンドをやっていてベッキーと付き合った人もいれば、上野樹里と結婚した人もいるわけじゃないですか」

「夢がある話ですよ!」

「それ、夢があるって言っていいんですかね…?」

「まあ、ガッキーとは言わないです。でも、女優は諦めない」

「結局カテゴリで人を見るのかよ!(笑)」

「最悪でしょ? 人として。でも、こんな人間なんです、僕なんて」

「そこだけは曲げないんだね?」

やっぱりミュージシャンなので、そこは曲げらんねえよ!」

「結局最後は、モテたいという話になるんですね。でも、別にそれが目標ならバンドじゃなくても一人でもいいんじゃないですか?」

「いや、やっぱバンドマンの方がモテますよ!」

「だって、作曲家とかそういうクリエイターの中で、女優と付き合った人なんてほとんどいないですよ。圧倒的にバンドマンの方が多い」

モテたいけどジャニーズになれない人は、バンドをやるしかない。どうやったら嵐になれるか真剣に考えたこともあったけど、それは無理だって30手前で気付いた僕がバンドを始めたのは自然な流れです」

「ワンオク(ONE OK ROCK)みたいにもなれないしね」

「そう、だから泥臭く、バンドをやっていくしかない」

「わかります。ただ、僕が言いたいのは、ここまで真剣にバンドについて話をしてきて、今回も最後がこのオチで大丈夫ですか? ってことだけです。社長は腹抱えて笑ってますけど…」

「ブレないなーと感心もするんですけど、こういう真剣な話をしている時に、照れて笑いに持っていっちゃうところこそ、バンドっぽくないんですよね」

「ほんとそうですね。これが楽屋裏のトークだったらバンドっぽいけど、本当のバンドマンはインタビューでこんなこと言わない」

「ミュージシャンは、ナルシストでなければいけない。自己陶酔しなければお客さんもついてこないんです」

「僕は、ネタじゃなくて本気で言ってるんですけどね…」

「(重い…)女優の話は置いておいて、ほかに、シンゴさんの野望はないですか?」

「すごく大きなことを言わせてもらうなら、ジョン・レノンになりたい。自分の音楽でラブ&ピースをどれだけの人に伝えられるか挑んでみたいです。「モテたいし世界を変えたい」という気持ちに嘘はないです

「初志貫徹ですね。夢にもっと近付くためのバンド」

「……でも、「バンドマンは◯◯◯でなければいけない」って議論している時点で、やっぱりバンドマンじゃないんですよね(笑)。それは憧れでしかない。もともと、ヒゲドライバー特有の情けなさにシンパシーを感じているファンはいて、どんなにヒゲドライバーだけのバンドじゃないって言っても、ヒゲドライVANにもその情けなさは継承されてしまっている。

「なんでバンドやってるの?」ってにいみさんは聞きますけど、みんなミュージシャンとして欠点を抱えているから、バンドとして集まって、補い合って形にしたいっていう気持ちが一番強いです。ここにいる誰も、大成功しているわけじゃない。「ヒゲドライバー」は作家としては売れたけど、沢山のファンを抱えているわけじゃないし、一般的に知られているわけでもない。

バンドとしても未完成で、「なりきれない」部分をたくさん抱えているけど、それぞれの足りないところを得意なところで埋め合うチームの強みは絶対ありますよ。」

「そうですね。言い方は悪いですけど、めちゃくちゃすごい人たちを寄せ集めただけのバンド、ではない。この4人の関係性の中で成り立ってる、面白いバランスだと思うんですよね」

「みんな違うものを持ってるっていうのは珍しいよね」

「だからなおさら、ここまで晒け出してる弱い人間が集まってるバンドを応援してほしいし、ワンマンも観にきて、今こんなことをやってるバンドなんだって知ってほしいです

ワンマン直前、合宿中のメンバー

最新ミニアルバム『インターネット・ノイローゼ』は全国のCDショップやAmazonをはじめとしたオンラインショップにて発売中。

そして、現在までにヒゲドライVANとして発表した20曲前後の楽曲群をすべて演奏する、2年間の集大成となるワンマンライブは、7月15日(金)19時から、初ライブを行った下北沢ERAにて。

前売券はe+(外部リンク)で、当日券ももちろんあるそうです。では、この記事を最後まで読んでくれたみなさんは、会場でお会いましょう。

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イベント情報

ヒゲドライVANの助手席空いてますよ? Vol2

会場
下北沢ERA
日時
7月15日(金)
OPEN / START
19:00 / 19:30
TICKET(ADV / DOOR)
¥2400 / ¥2800
発売
e+

現在までに発表された20曲前後の楽曲群をすべて演奏するバンドとしては初の1時間超のライブとなります。
2年前、初ライブを踏んだライブハウスで、今までの2年間の集大成を発表します。
2年前に居た方々も、この2年間で知り合いになれた皆さんも、是非足をお運びくださいませ!

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