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「ウソは悪いこと」? 神話・寓話におけるウソの扱われ方

「アベルを死へと導くカイン」(ジェームズ・ティソ画)

4月1日は「エイプリルフール」。一年のうち、この日だけはウソをついても良いとされている。「特別にウソをついても良い」ということは、当然ながら普段はウソをついてはいけないということだ。私たちは子どもの時から、円滑な社会生活を阻害するウソは悪であり、正直なことは善だと教えられてきた。

では、昔はウソをつく行為というのはどう捉えられていたのだろう? 昔から存在する神話や童話におけるウソの扱われ方について、そこに込められている教訓を含めて、いくつか紹介してみたいと思う。


カインとアベル
旧約聖書「創世記」第4章に登場するエピソード。エデンから追放されたアダムとイヴが生んだ、兄弟のカインとアベル。ある日、神(ヤハウェ)に収穫物を持っていったところ、弟・アベルの供物だけが目に留められ、自分の供物を無視されたことに怒った兄・カインは、アベルを殺してしまう。神にアベルの行方を聞かれたカインは、「知りません。私は永遠に弟の監視者なのですか?」とウソを答えたが、結局は露見してしまう。カインはその罪のせいでエデンの東のノドに追放され、耕作しても作物が収穫できなくなってしまった。

この話自体に教訓めいた教訓は存在しないが、人類最古のウソと言われる重要なエピソードである。


金の斧
こちらもイソップ寓話。きこりが川辺で木を切っていたところ、誤って斧を川に落としてしまう。きこりが困っていると、ヘルメース神が現れ、「あなたが落としたのはこの金の斧ですか?」と問う。きこりが違うと答えると、今度は銀の斧を見せられる。きこりがそれも違うと言うと、最後にきこりが落とした斧を見せられ、それが自分の斧だと答える。ヘルメース神は正直なきこりに感心し、3本全ての斧を与えた。それを知った別のきこりが、わざと斧を川に落とす。同じようにヘルメース神が現れるが、金の斧を見せると、そのきこりはそれは自分の斧だとウソをついてしまう。しかしヘルメース神は、そのきこりが落とした斧を返すこともなく、呆れて消えてしまう。ここで説かれている教訓は、ごく明快な神は正直者を助け、ウソつきには罰を与えるということだ。


オオカミ少年
「狼と羊飼い」と呼ばれることもあるイソップ寓話。羊飼いの少年が「狼が出た」と繰り返しウソをついて大人を騙した為、本当に狼が現れた時に信じてもらえず、村の羊がみんな狼に食べられてしまう、という有名なお話。だから、「ウソをついていると本当のことを言っても信じてもらえなくなるので、普段から正直に生活しよう」というのが一般的な教訓として語られている。

しかし、このエピソードの解釈には諸説ある。例えば、村の大人たちが「少年はウソをついている」と決めつけたため、悲劇が起きた。だから、先入観で決めつけるのはやめましょうという考え方や、ウソをくり返す子どもの口から語られた真実を信じてあげなかったからこそ悲劇が起きた。だから、子どもがウソをついても大人は見放さず、いつまでも信じてあげなさいという考え方などがある。


千夜一夜物語
最後に、アラビア語圏内の説話集としてヨーロッパでまとめられ、今では「アラビアンナイト」の名前でよく知られている千夜一夜を紹介したい。あるところに、それぞれの国を治める二人の王子がいたが、妃の浮気や旅先で出くわした奇妙な出来事から女性を信じることができなくなる。国に戻った兄のシャハリヤールは、妃らの首をはね、毎晩生娘と寝て翌朝になって殺す生活を続けるようになってしまう。国中の娘が殺され続ける中、国の大臣の姉妹が自ら名乗り出て、王と夜を過ごすこととなる。そこで、妹のドニアザードは打ち合わせ通り、姉のシエラザードに物語をせがむ。物語に精通しているシエラザードは、自分たち姉妹の命、国中の娘たちの命を守るため、毎晩物語を語り聞かせることで王の気をひく命がけの語り部の役を買って出る。そこで語られるめるくめく冒険鐔が、有名な「アリババと四十人の盗賊の物語」や「船乗りシンドバードの物語」などだ。

王は、シエラザードの語り聞かす物語にすっかり心を奪われてしまう。そして千一夜目、最後の物語を語り終えたシエラザードが、千の夜を過ごした間に授かった王との間の三人の子どもと引き合わせ、改心した王と結ばれ、国も平安を取り戻す。『千夜一夜物語』はおとぎ話などとも性質が異なり、娯楽という側面が多分にある。ただ、もしも強引に教訓を得るとしたら、千と一のウソから生まれた三つの真実(子ども)が人心を解きほぐしたことから、嘘から出たまこと、あるいはウソが救いになることもあるという教えかもしれない。


ことほどさようにウソの扱われ方は多様で、通り一辺倒に「ウソをつくことはけしからん」という良識に縛られたお話だけでもつまらない。

さて、新年度がスタートする日でもある4月1日「エイプリルフール」に飛び交うウソは、今年も主に平和なインターネットを中心に盛り上がりを見せていた。


※上述のお話には国や刊行年、著者や訳者によっていくつものバリエーションが存在するため、結末や細部が異なる場合がございます

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