アートゥーン!桶家が投げかける“言語化”への問い
──先ほど「メリット」というお話が出ましたが、芸術は時に「なくても困らないもの」として軽んじられてしまうこともあります。その上で、お二人が考える芸術の“存在意義”とは何でしょうか?

真田 僕はシンプルに、ただ「人生が豊かになる」、この一点に尽きると思ってて。
例えば「絵を描きたい」とか「歌を歌いたい」とか「曲をつくりたい」っていう表現への欲望って、人間の身体とか本能とかから、自然に湧き上がってくる衝動なんですよ。
僕たちはたまたまその表現への衝動の度合いが強かったためにこうして仕事にしていますが、そういうクリエイティビティや表現への欲望は、きっと誰の心の中にも溢れていると思うんですよね。
そうして誰もが自由にクリエイティビティを発揮することが、社会全体に認められ、保証されている──それこそが、何よりも豊かな社会だと思うんです。
桶家 そうですね。何かを見たとき、「綺麗だな」とか「面白いな」とか「かっこいいな」とか、そういった単純な言葉で言い表せない想いや感情を抱くこともあるじゃないですか。
それを歌にするのも良いですし、あるいは手を叩くだけでも良い。必ずしもすべて言語化しなければいけないわけではありません。
そうした言語化以外の表現方法が増えることは、例えば言語化が苦手なせいでコミュニケーションがうまくいかなかったり、悩んでしまっている人たちにとっても良いことだと思うんです。
僕たちは動画の中で、「こうやって非言語的な感覚で、自分の思ったことや感じたものを作品に落とし込んでいるよ」という、創作時の感情の話をよくしています。
それを見た人たちが、「あ、こういう風に自分を表現しても良いんだ」と思ってくれるきっかけになれば、この活動をやっている意味があるなと感じますね。
渋谷WWWを鼓膜と皮膚を揺らす「非言語コミュニケーション」の現場に
──そして、来る8月27日(木)には、渋谷のライブハウス「WWW」にて、アートゥーン!としてはじめての音楽ライブが開催されます。YouTubeという画面上から、こうしたリアルな生の空間へ飛び出すのには、どのような意図があるのでしょうか?

「Artoone!Live2026」出演メンバー(左から池田さん、桶家さん、矢野さん、おばんさん)
桶家 「生でしか感じられない圧倒的な情報量」を、全身で体感してもらうためです。
実は、YouTubeの動画やサブスクリプションサービスの音源って、一般的にデータ圧縮の都合上、16,000Hz以上の高周波数がカットされてしまうことが多いんです。
ですが、人間は、可聴域(※編注:20Hzから20,000Hzと言われている)を超えた超高周波数の音を聴き続けることで、脳の前頭葉が活性化し、深い高揚感や感動を覚える「ハイパーソニック・エフェクト」という有名な理論があります。
生演奏には、そのカットされない本物の周波数の振動が含まれているんです。
また、ライブハウスで重低音を浴びたときに「お腹にズンと響く」と感じるように、人間は鼓膜の振動だけではなく、皮膚触覚でもしっかりと音の震えを聴き取っています。
目の前のステージで発せられる生の音が、物理的な空気の波となって直接届く。この圧倒的な身体的感動は、画面の向こう側のYouTubeでは絶対に届けることができません。
だから、僕はずっと「絶対にライブをやるべきだ」と熱望していました。今回のライブは「僕たちを見に来る」というより、「僕たちと、非言語の言葉で思いきり喋り合おうぜ! 」という、その場と空間をいっしょにつくるお祭りだと思っています。
真田 今回は音楽メインのライブイベントですが、僕ら美術組から見ても、メンバーが放つリアルな生身のパフォーマンスには、圧倒的なエネルギーがあります。例えば、桶家と一緒にカラオケに行くと壁が壊れるんじゃないかっていう声量が出るんですけど(笑)。
ドラムソロを目の前で見た時の、床や空間全体が物理的に震えるような興奮は、絶対にその場にいないと体験できません。
そういった体験をお届けできる現場が、今回の渋谷WWWです。僕も今から最高に楽しみにしています。
──最後に、KAI-YOUの読者に向けて、メッセージをお願いいたします。
真田 ポップカルチャーや新しいカルチャーに深い興味を持たれている読者の皆さんだと思います。
皆さんが日々新しい音楽や映画を開拓しているように、世の中にはまだまだ触れていない、本質的に面白い芸術のジャンルがたくさん存在しています。「私には分からないかも」と食わず嫌いしたり、毛嫌いしたりせずに、ライトな気持ちで入り口に立ってみてほしい。そして、世界を広げてくれたら嬉しいです。
桶家 僕は、とにかく皆さんに「非言語コミュニケーション」に慣れてそれを楽しんでほしいです。
僕たちは、言葉にできるんだったら恐らく作品にはしていない。言葉にできなかったもやもやした熱量を、作品に変換してぶつけているので。
言葉に縛られがちな現代において、あえて「非言語」のまま感情を交わし合う豊かさを、アートゥーン!の活動を通じて、僕たちといっしょに模索していきましょう。渋谷WWWでお待ちしています!
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