個人制作を起点としたチームが大きくなる中での問題点
たとえば、制作中にクライアントからの要望へ対応していくうちに、気づけば想定していた予算を大きく超えてしまっていたことがあります。
アニメーション制作では、着手時点で最終的な動画の制作枚数や工数を正確に見積もることが難しく、実際につくりはじめてみたら予算が足りなかった、ということも起こり得ます。
アニメスタジオがある……とはあまり思えないロケーションかもしれません
また、監督自身も制作に没頭しているため、スケジュール全体を管理する人が別にいないと、外部スタッフへの発注やデータの回収がいつの間にか遅れてしまうこともあります。作品づくりに集中することと、プロジェクト全体を管理することは、本来別の能力が求められる仕事です。
さらにアニメーション制作は、作品の規模が大きくなるほど関わる人数も増加。制作が終わった後も、発注書や請求書の整理、スタッフごとの精算など、多くの事務処理が発生します。作品を完成させることだけでも大変ですが、その裏側には膨大な管理業務が存在しています。
もちろん、こうした課題は誰か一人の問題ではありません。個人制作を起点としたチームが大きくなっていく過程で、自然と発生するものだと思っています。
スタジオ内の実務スペース
そこで、作品を制作するチームとしての基盤をきちんと組織しようと考えました。
結果的に私は代表という立場ですが、感覚としては経営者というより、制作の環境を整えるプロデューサーに近いのかもしれません(あとはご飯をつくってスタッフに振る舞っています)。クリエイターが安心して制作に集中できる環境をつくる──その延長線に、今のbeesがあります。
Discordからはじまったチーム制作
ここまでで、beesは設立前からスタジオを拠点とするような制作体制を標榜していたように見えるかもしれません。しかし、beesの制作の多くは最近までオンラインで進んでいました。
その中心にあったのがDiscordです。
案件ごとにサーバーを立て、スタッフが集まり、素材やスケジュールが流れていく。制作の相談も、雑談も、基本的にはDiscordにあります。仕事用のサーバーではありますが、どこかコミュニティのような雰囲気なので、誰でも発言しやすい空気があります。
アニメ制作の現場としては少し珍しい形かもしれませんが、私たちにとってはかなり合理的な方法でした。スタッフとの物理的な距離が離れていてもチームが機能しますし、作品ごとに最適なメンバーを集めることもできます。
ただ、チームが少しずつ大きくなるにつれて、オンラインだけでは足りない瞬間も増えてきました。
制作を担当したずっと真夜中でいいのに。「ultra魂」MVより
たとえば、作品の方向性を詰める会議や、作画や映像の細かなニュアンスを確認する場面。同じ空間に集まり、同じ画面を見ながら議論することでしか生まれないアイデアもあります。
そこで、Discord中心の制作体制に「場所」を加えることにしました。それが江ノ島の事務所です。
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