eスポーツの現場において、激闘の末に起こる咆吼やガッツポーズなどの感情的なパフォーマンス(通称:ポップオフ)は、視聴者に興奮と刺激を与える文化であり、ファンの熱狂を生む要素の一つとなっている。
しかし現在、『Pokémon GO』の公式競技大会の決勝で優勝を決めた選手がポップオフを行ったところ、「スポーツマンシップに反する行為」とみなされ、優勝が剥奪されるという出来事が発生した。
これに対して、『Pokémon GO』のファンコミュニティは猛反発。現地時間の4月12日には、当事者であるFirestar73選手が公式にこの裁定に抗議し、処分の撤回を求める声明を公開した(外部リンク)。
ポケモン最大の世界大会の地域予選で疑惑の裁定
この出来事の舞台となったのは、現地時間4月5日に開催された「ポケットモンスター」シリーズの総合大会「Orlando Pokémon Regional Championships 2026」における『Pokémon GO』部門のグランドファイナル(決勝戦)。
本大会は、「ポケットモンスター」シリーズの競技大会の中で最も規模が大きく、権威のある世界大会「ポケモンワールドチャンピオンシップス2026(WCS)」への出場をかけた地域予選にあたる。
「WCS」の出場権を獲得するために、世界中から多くの強豪プレイヤーたちが集結する、注目の大会だ。
「Orlando Pokémon Regional Championships 2026」/画像はPokémon World Championships公式サイトより
決勝戦の対戦カードはNiteTimeClasher選手とFirestar73選手。激闘の末、Firestar73選手が勝利し優勝を果たした。
優勝を決めた瞬間、Firestar73選手は歓喜のあまり豪快にヘッドセットを外し、机の上に放るようなパフォーマンス(ポップオフ)を見せた。だが、この行為がジャッジから「スポーツマンシップに反する行為」と判断されてしまった。
これによりゲーム敗北が宣告され、セットの結果が覆る異例の事態に発展。その結果、Firestar73選手は掴み取ったはずのタイトルと、数千ドルにも及ぶ賞金を失ってしまった。
この判定とペナルティに対し、ファンやプロプレイヤーからも疑問の声が上がっている。
ポケモン公式はポップオフを推奨していた
今回Firestar73選手が発表した声明の中で、自身のポップオフが「コミュニティの歴史という文脈において、決してスポーツマンシップに反するものではなかった」と強調。
むしろそらの行為は、大会を運営する「Play! Pokémon」(The Pokémon Company International)がこれまで繰り返し推奨してきた種類のパフォーマンスであったと主張している。
たとえば、「2023 Pokémon North America International Championships(NAIC)」のグランドファイナルにおいて、WDAGE選手が優勝を決めた際、今回のFirestar73選手と同様にヘッドセットを投げ置くポップオフを行っている。
もちろんその時は一切ペナルティがなかった。さらに、2025年のミルウォーキー大会やアトランタ大会の放送において、大会前に視聴者の雰囲気を盛り上げるモンタージュ映像の一部として、前述したWDAGE選手のポップオフシーンが使用されていた。
この事例を見れば、「Play! Pokémon」がこうしたポップオフを許可し、さらには奨励しているものだと考えるのはごく自然なことだろう。
ガイドラインに照らし合わせても厳しすぎる裁定
また声明では、仮にFirestar73選手の行動がスポーツマンシップに反する一線を越えていたとしても、1試合の敗北処分となるような行為には該当しないはずだと主張している。
「ポケモンGOトーナメントハンドブック」のうち、ペナルティについて説明された第7.1項には、敗北処分について「ゲームの状態の完全性を著しく損なう場合」に適用されると記載されている(外部リンク)。
Firestar73選手は、自身のケースではすでにゲームは終了していたため、ポップオフはゲームに影響を与えていないはずだと強調。
さらに、「Play! Pokémon ペナルティガイドライン」の第5.3項にも言及し、過度な勝利時のパフォーマンスは「軽微な非スポーツマンシップ行為」に分類され、この際のペナルティは「警告」であると説明(外部リンク)。
また、ここでは相手プレイヤーを挑発した場合にのみ敗北処分のペナルティを受けるとされているが、Firestar73選手は明確に相手を挑発するような行動はとっていない。
処分撤回を願いつつ、コミュニティには理性的な対応を呼びかける
Firestar73選手は声明の中で「この決定に関わった誰に対しても、悪意を抱いていない」と明言している。
特に、配信に映っていた2人の審判が処分を下したわけではなく、はるか上位にいるトーナメント主催者のスタッフによる善意のミス(良かれと思っての誤った判断)であったと理解を示している。
そのため、この件に関わったいかなる人間に対しても「嫌がらせや脅迫、悪意を向けないでほしい」とファンに強く忠告を行った。
現在、Xでは「#JusticeForFirestar」というハッシュタグのもと、数多くのファンやプレイヤーが判定への異議とFirestar73選手へのサポートを表明。
Firestar73選手はすでにThe Pokémon Companyに対し、裁定の撤回を求めるサポートチケットを送信したとのこと。
eスポーツにおける感情表現の境界線と、競技運営の透明性が問われる本件。果たして公式からどのような回答が示されるのか、今後の動向に注目があつまる。
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