「POP YOURS 2025」レポート 故JJJが生前構想していた演出を可能な限り実現

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KAI-YOU編集部_ストリートカルチャー部門

PUNPEE「自分は優しいリスナーの方に恵まれている」

DAY2はMARZYさんのDJからスタート。前日と同じく、観客の大合唱が幕張メッセに響き渡っていた。

PUNPEEさんはJJJさんと一緒につくった「Step Into The Arena」を歌ったあと、古着屋でファンの店員に携帯を拾ってもらったエピソードを話して、「自分は優しいリスナーの方に恵まれている」と彼らしいウォーミングなステージを届けた。

PUNPEEさん/撮影:Yokoyama Masato

昨年DAY2のNEW COMER SHOT LIVE に出演していたswettylil soft tennisが今年はメインアクトに抜擢された。swettyさんは「cuz u just memories」などでフレッシュなエネルギーがほとばしるライブを、lil soft tennisさんは難しい時間を乗り越えて清々しいステージを見せてくれた。

ちなみに今年のNEW COMER SHOT LIVEは、去年観客だった5Leafさん、才気あふれるlilbesh ramkoさん、ラップ巧者のDABさん、ハイセンスなTade Dustさんが出演した。

Tade Dustさん/撮影:Daiki Miura

MIKADOさんは「言った remix」でTOFUさん、HARKAさんを呼び込んだ。ワードチョイスが独特で会場で一緒に歌っていると楽しい気持ちになった。

DADAさんはおなじみ「Satsutaba」でかまし、 「Dawn」などを歌った。

Bonberoさんは「レジェンドとつくった曲」と昨年の「POP YOURS」企画曲「YW」をアカペラでラップ。「Ringdidiringring」にSEEDAさん、「Oil Freestyle」にCampanellaさんを呼んで切れ味鋭くスピットした。

Elle Teresaは「エルいちばんかわいい」を体現

秀逸な言語感覚が魅力のElle Teresaさんは、今回、衣装、映像を含めて自身の世界観──「エルいちばんかわいい」を完全に表現してみせてくれた。彼女自身のライブにおける表現力も昨年より格段に上がっており、最初から最後まで完璧な内容だった。

続くNENEさんはkoshyさんと制作したアルバム『激アツ』を中心に選曲。「バナナボート」では再びElle Teresaさんが出て来て、MVの振り付けをド派手なダンサー軍団と一緒に踊った。二人の時間帯はずっと黄色い声援が飛び交っていた。

Elle Teresaさん/撮影Taio Konishi

Daichi Yamamotoさんは代表曲「Let It Be」をはじめとして熱のこもったパフォーマンスを披露。1曲目「Newtone」にはJJJさんのシャウト「Let’s Go Daichi!」が入っている。この日の観客はこのシーンもしっかり合いの手を入れた。

STUTS on the WAVEではなんと3つも新曲がお披露目された。そのうちの1曲の客演はCampanellaさん、鎮座DOPENESSさん、Candeeさんという異色の組み合わせ。プロデューサーの個性がミックスされたおもしろさを感じられた。その後、swettyさんとElle Teresaさんというこれまた異色のコンビによる「POP YOURS」企画曲「I JUST」が、サプライズ披露され、フェスを盛り上げた。

Daichi Yamamotoさん/撮影:Jun Yokoyama

今年の客演王といえる活躍をしたKohjiyaさん。どのステージでも大声援が送られていたので、待望の自身のステージに幕張は湧きに湧いた。Bonberoさんと制作した「Denied」や「Never Disappoint」などを歌うとどんどん熱気は高まっていった。あっという間にラストソング。リリースされたばかりの「99 Steps feat. Hana Hope」にはSTUTSさんも参加した。

唾奇「リスペクトを込めてヘッドライナーのJJJにつなぎます」

Kvi Babaさんの強みは、キャッチーで一緒に歌っていて気持ちがいい強力なフックだろう。G-k.i.dさんをフィーチャーした「Friends, Family & God」などさまざまな曲で気持ちの入ったシンガロングが響き渡っていた。

Jin Doggさんは今年も変わらぬハードさだった。「Prada feat. DADA」や「Death Note feat. Pxrge Trxxxper」はハードコアパンクのライブかと錯覚する勢い。ラストに客席まで行って「eam Tomodachi Dirty Kansai Remix」を歌った。

Jin Doggさん/撮影:Ray Otabe

「実は1回目から毎年なんらかの形で出演している」G-k.i.dさんのステージには、ドラマでおなじみ般若さんやJin Doggさんが客演(「MOGURA〜裸足のままで〜」)。ソウルのこもった「日本の歌」に多くの観客が聞き入っていた。

続くYo-Seaさんはギターとコーラス二人をサポートメンバーに迎えて登場。STUTSさんとの 「Flower」などを透き通る声で届けた。その後、GooDeeさんが参加した新曲も歌った。

唾奇さんは意外にも今年が初の「POP YOURS」。フェスオリジナルソング「PAGE ONE」にも参加した。唾奇とKohjiyaの特徴は声。言葉が二人の声に乗ると力を増す。この曲は常に自分と向き合い続けるラッパーたちの覚悟の歌。

唾奇さんとKohjiyaさんによる「PAGE ONE」/撮影:Taio Konishi

たくさんのラッパーたちのたくさんのライブを見た後に聴くと、華やかさの裏にある努力や葛藤を思い起こさせた。最後には「リスペクトを込めてヘッドライナーのJJJにつなぎます」と話してステージを降りた。

故・JJJが生前構想していた演出を可能な限り実現

JJJさんは2025年4月13日に35歳で亡くなった。昨年11月に日比谷野外音楽堂でのワンマンライブを成功させ、明けて1月に「POP YOURS 2025」の大トリに抜擢された。アーティストのレベルをワンランク上に引き上げる、実に「POP YOURS」らしい人選だと思った。初年度のBAD HOPも、昨年のTohjiさんやLEXさんも、今思えば順当だが当時としてはチャレンジングだった。

2023年に発表したアルバム『MAKTUB』は、JJJさんの実験精神、ポップセンス、散文詩のような繊細なリリック、そして唯一無二の声とフロウが、非常に高い濃度で結晶化した傑作だ。今回のステージは、同作収録曲を中心に、生前のJJJさんとスタッフが構想していた演出を可能な限りそのまま実現させた。

故・JJJのステージ/撮影:Yokoyama Masato

バックDJはAru-2さん。ライブは新曲「dali」からスタートした。JJJの生の声にはすさまじい力がある。その不在感こそあれ、彼の生み出した音楽の素晴らしさは色褪せるわけがない。爆音の「dali」は恐ろしいほどクールでかっこよかった。

「心」、「Find Away」には、それぞれオリジナルゲスト・STUTSさん、OMSBさん、Daichi Yamamotoさんに加え、岩見継吾さんがコントラバスで参加。楽曲の情感をさらに深化させた。

撮影:Daiki Miura

「Cyberpunk」にはBenjazzyさんが駆けつけた。ホログラムの幕を使って、JJJさんのシルエットや『MAKTUB』のアートワークを投写した。さまざまな曲で共演したCampanellaさんは「Something」で「今現在リリックに込める自分と自分のその後 2025.5.25」とラップした。

JJJさんとSTUTSさんにとっての代表曲「Changes」、そして最後にルーツである2013年のクラシック「Fla$hBackS」でライブを締め括った。

「POP YOURS」10月に初の大阪開催

「POP YOURS 2025」のラインナップはこれまで以上に多様になったが、観客はすべて受け入れていたことが最も印象的だった。どんなアーティストでも楽しもうとしていたし、もしかしたら予習をしているのかもしれない。

当初、「POP YOURS」というイベント名には、日本におけるヒップホップがポップカルチャーになって欲しいという願いが込められていた。その目的は徐々に達成されつつあるのかもしれない。そう感じさせられた4年目の『POP YOURS』だった。

なおDAY 1終了直後に、「POP YOURS OSAKA 2025」の開催が発表された。会場は大阪城ホール。日程は10月18日(土)。ラインナップ、チケット情報などは近日発表される。


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