漫画『かぐや様は告らせたい』完結に寄せて──“運命”とは決して絶対ではない

漫画『かぐや様は告らせたい』完結に寄せて──“運命”とは決して絶対ではない
漫画『かぐや様は告らせたい』完結に寄せて──“運命”とは決して絶対ではない

『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』最終回が掲載された『週刊ヤングジャンプ』書影/画像はAmazonより

赤坂アカさんの漫画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』が、11月2日(水)刊行の『週刊ヤングジャンプ』(集英社)で、約7年半続いた物語に幕を下ろした。

四宮かぐや白銀御行の主人公2人が、私立・秀知院学園生徒会で恋愛の駆け引きを繰り広げるというラブコメディーとして出発。単行本30巻近くにも渡り、彼らの青春が描かれてきた。

作者の赤坂アカさんは、「この作品は男女のディスコミュニケーションを描いた作品」と第22巻裏表紙のあとがきに残している。

その上で、筆者はこの作品に通底していたテーマは“運命の超克”だったように思う。

※この記事には、『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』のネタバレが含まれます。

天才と対等になろうとした“努力の天才”白銀御行

わかりやすいのは、主人公の1人である“努力の天才”白銀御行だ。

「学園模試は不動の1位」「全国でも頂点を競い天才たちと互角以上に渡り合う猛者」(第1巻)であり、勉学だけでその地位に上り詰めた生徒会長として登場する白銀御行。

しかし物語が進むにつれて、実は彼が絶望的なまでに不器用でセンスが悪く、実家も貧乏──“持たざる者”であることが明かされていく。
TVアニメ『かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-』第5話エンディング映像♪「My Nonfiction」
それでも白銀御行は、憧れの存在である四宮かぐやと対等になろうと血の滲むような努力をし続け、彼女の隣にいられるように思考を巡らせ続けた。

普通の少女になろうとした“天才令嬢”四宮かぐや

対するもう一人の主人公・副会長の四宮かぐやは、「正真正銘の令嬢」「正真正銘の『天才』」(第1巻)という“持てる者”である。

しかし彼女もまた、財閥の令嬢であるがゆえに、常に厳しい環境で理想的な結果を求められ、陰謀渦巻く政略が身近にあったため猜疑心が強く、人の輪にうまく馴染むことができず、誰とも親しくなれない孤独感に苛まれていた。

そんな彼女も、白銀御行をはじめとした登場人物たちに感化され、令嬢というしがらみを脱ぎ捨て、普通の女の子になろうと努力と思考を積み重ねていく。
TVアニメ『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』エンディング映像 ♪halca「センチメンタルクライシス」
全く真逆の2人ながら、物語を通して描かれてきたのは、生まれもった才能や与えられた環境、変えられない過去など、人が“運命”と呼ぶものに立ち向かう姿だった。

運命などと言われるものも決して絶対的なものではないと、赤坂アカさんは『かぐや様は告らせたい』で何度も描いてきた──時にはギャグ調で、時にはドラマティックに。

完結を含めた最終巻が出るのはもう少し先の12月19日(月)になるが、努力と思考で“運命を超克”した若者たちの青春を、ぜひその目に焼き付けてほしい。

『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』とは?

漫画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』は、2015年5月より増刊『ミラクルジャンプ』にて連載開始し、2016年3月に本誌『週刊ヤングジャンプ』に移籍して連載。

メディアミックスとしては、A-1 Picturesによってアニメ化され、第3期までがTV放送。また、橋本環奈さん、King & Prince平野紫耀さん主演で2度の実写映画化を果たした。

12月17日(土)には、アニメ第3期の続編となる『かぐや様は告らせたい-ファーストキッスは終わらない-』が、TV放送に先駆けて劇場公開される。
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