武蔵野美術大学が運営する東京・馬喰町のgallery αMは、新型コロナウイルスによる臨時休館を経て、8月からシリーズ「約束の凝集」を開催している。
インディペンデントキュレーターとして活躍する長谷川新さんをゲストキュレーターに迎えた展覧会シリーズで、曽根裕さん、永田康祐さん、黑田菜月さん、荒木悠さん、高橋大輔さんの5名がそれぞれ個展を開催する。
第一弾となるのは曽根裕「石器時代最後の夜」、会期は11月14日(土)まで。
曽根裕さんにとって東京では9年ぶりの個展となる本展は、3点の新作《The Last Night of the Stone Age》、《Birthday Party 1965-2020》、《Double Log(Washinoyamatuff)》から構成される。
幅広く素材を扱う曽根裕さんだが、その活動の中で石という素材はとても重要な位置を占めている。90年代中頃に大理石と出会って以来、石を使った数々の作品を、多くの石工たちと協力して生み出してきた。
「つまり、それが石器時代の最後の夜なんだ」
本展で石器時代の最後をそう定義づける曽根さんだが、それは単に、人類の技術が進歩した、その歴史的瞬間に感動したという話で終わらない。
毎日のように石と向き合い、砕いたり削ったりを繰り返す曽根の姿は、ある意味で石器時代をなぞらえた行為にも見える。
これはむしろ、そんな石器時代を生きる曽根さんの、いつか訪れる未来の視点なのかもしれない。 インスタレーション《The Last Night of the Stone Age》は、「約束の凝集」の参加作家の1人で、25歳年の離れたアーティストの永田康祐さんと「四半世紀」というユニットを結成し、それを機に制作された新作だ。
大理石を素材に最新の環境にも対応しうる水冷式のパソコンが展示される。その画面からは、石を砕き、削り、粉塵に塗れ、互いに異なる言語をぶつけ合って作品を制作する者たち、そして石器時代の時間そのものが映し出される。 《Birthday Party 1965-2020》は、1997年のミュンスター彫刻プロジェクトで曽根が出展した《Birthday Party》──毎日のように自分の「バースデーパーティー」を開き、その様子を映像にまとめた作品──に、その前後に断続的に行なわれてきた「バースデーパーティー」の映像をさらに加えた新作だ。 《Double Log (Washinoyama tuff)》は、曽根さんが現在スタジオを構えるべく奮闘している香川県の鷲ノ山の凝灰岩を使って制作した彫刻作品。スタジオ設立と同時進行で準備されたもので、現地で出会った大工の浦芳樹、石工の兎子尾大たちとの協働が刻まれている。
世に溢れたあらゆる「技術」は「妥協」の道具として用いられるべきではない。人は生まれていずれ死ぬ、アートなんて無意味だ──そんな虚無的な世界観からの帰還を促す、「帰還の技術」であるべきだと説いている。
それを前向きに捉え、むしろ未来へ開かれたキーワードとして「約束の凝集」と名付け提唱した。
石器時代の最後の夜が示す、曽根裕の「帰還の技術」はどんな未来を映すのだろうか。会期は11月14日まで。
インディペンデントキュレーターとして活躍する長谷川新さんをゲストキュレーターに迎えた展覧会シリーズで、曽根裕さん、永田康祐さん、黑田菜月さん、荒木悠さん、高橋大輔さんの5名がそれぞれ個展を開催する。
第一弾となるのは曽根裕「石器時代最後の夜」、会期は11月14日(土)まで。
石を重要な素材として活動してきた曽根裕
1965年生まれの曽根裕さんは、ベルギー、中国、メキシコ、日本に活動拠点を持ち、友人や観客を巻き込んだプロジェクト型の作品から、彫刻、絵画、ドローイング、写真、映像、パフォーマンスなど多様なメディアを用いて制作するアーティスト。曽根裕さんにとって東京では9年ぶりの個展となる本展は、3点の新作《The Last Night of the Stone Age》、《Birthday Party 1965-2020》、《Double Log(Washinoyamatuff)》から構成される。
幅広く素材を扱う曽根裕さんだが、その活動の中で石という素材はとても重要な位置を占めている。90年代中頃に大理石と出会って以来、石を使った数々の作品を、多くの石工たちと協力して生み出してきた。
石器時代の最後の夜とは?
はるか昔の石器時代末期に、自然銅を溶かそうと試みた人々がいたという。当時はまだ金属を高温で熱し続ける技術が確立しておらず、銅は不定形のまま凝固する。「つまり、それが石器時代の最後の夜なんだ」
本展で石器時代の最後をそう定義づける曽根さんだが、それは単に、人類の技術が進歩した、その歴史的瞬間に感動したという話で終わらない。
毎日のように石と向き合い、砕いたり削ったりを繰り返す曽根の姿は、ある意味で石器時代をなぞらえた行為にも見える。
これはむしろ、そんな石器時代を生きる曽根さんの、いつか訪れる未来の視点なのかもしれない。 インスタレーション《The Last Night of the Stone Age》は、「約束の凝集」の参加作家の1人で、25歳年の離れたアーティストの永田康祐さんと「四半世紀」というユニットを結成し、それを機に制作された新作だ。
大理石を素材に最新の環境にも対応しうる水冷式のパソコンが展示される。その画面からは、石を砕き、削り、粉塵に塗れ、互いに異なる言語をぶつけ合って作品を制作する者たち、そして石器時代の時間そのものが映し出される。 《Birthday Party 1965-2020》は、1997年のミュンスター彫刻プロジェクトで曽根が出展した《Birthday Party》──毎日のように自分の「バースデーパーティー」を開き、その様子を映像にまとめた作品──に、その前後に断続的に行なわれてきた「バースデーパーティー」の映像をさらに加えた新作だ。 《Double Log (Washinoyama tuff)》は、曽根さんが現在スタジオを構えるべく奮闘している香川県の鷲ノ山の凝灰岩を使って制作した彫刻作品。スタジオ設立と同時進行で準備されたもので、現地で出会った大工の浦芳樹、石工の兎子尾大たちとの協働が刻まれている。
「帰還の技術」が示すものとは
各位が培ってきた技術は、「妥協」のために、つまりは部分的であったり矮小化されて行使されるべきではない。
本展のキュレーターズノートにそう綴った長谷川新さん。妥協を「約束の凝集(Com-Promise)」として、途方もなく前向きに考える。それが妥協ではなく約束の凝集である限り、そこには未来の時間が含まれている。
世に溢れたあらゆる「技術」は「妥協」の道具として用いられるべきではない。人は生まれていずれ死ぬ、アートなんて無意味だ──そんな虚無的な世界観からの帰還を促す、「帰還の技術」であるべきだと説いている。
それを前向きに捉え、むしろ未来へ開かれたキーワードとして「約束の凝集」と名付け提唱した。
石器時代の最後の夜が示す、曽根裕の「帰還の技術」はどんな未来を映すのだろうか。会期は11月14日まで。
この記事どう思う?
0件のコメント