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ブラジル帰りの鬼才「Mika Pikazo」インタビュー 極彩色に血を通わす極意

創作に助けられたからこそ

──1枚のイラストを考えた場合、例えば小説やCD、ゲームといったコンテンツやキャラクターに付随するもので、イラスト単体では価値が見出されづらいという指摘が昔からありますが、Mikaさんとしてはどう感じてらっしゃいますか?

Mika Pikazo そもそも自分の欲望や好奇心的には、イラスト一枚だけの表現では描ききれないものがあると感じています。

ですが、たとえば江戸時代にあった浮世絵や、ルネサンス期のイタリア絵画のように一枚の絵がものすごい影響力を持っていて、時代を超えて愛されているものがたくさんあります。イラストレーションという表現にもまだまだ、今後もやれることはあるとも思うんです

ただ、私がやりたいことはイラストを極めることだけではなく、自分にとってのイラストレーションはあくまで表現の一つだと思っています。

──「イラストレーター」という肩書きに違和感があるのでしょうか?

Mika Pikazo 自分で自分のことをイラストレーターっぽくないなと思うこともあります。最近の仕事は3、4割はライブの演出コンセプトを考えたり、アパレルのデザインを考えたり、物語のお話や設定、世界観を考えたり。そういうことはアートディレクションなのかなって。私みたいな人をイラストレーターとは言わないんじゃないかとも思います。

イラストを描くことは大好きだし、幼少期から自然にやってることです。イラストへのこだわりや画力への執着もあるので、職人としてのイラストレーターの要素が半分あるような感覚です。これからもずっと絵が上手くなりたい、もっと描けるようになりたいという気持ちはあると思います。

──とはいえお仕事も増え、ご自身としてもイラストに対するモチベーションは高くなっているのでしょうか?

Mika Pikazo 今はかなり高いですね、平面的なイラストや、厚塗りや水彩のような塗り方とか、描いてみたいものがまだたくさんあります。いろんなジャンルの描き方を研究したいし会得していきたい。

自分がどこまでやれるか?という可能性に興味がありますし、どんなに大変な依頼がきても、挑戦の先でその絵を描ききった自分になれたら面白いと考えるんです。そもそも同じことをやり続けるのも飽きてしまうタイプなので、今はいろんな挑戦をしていきたいですね。

──スランプになってしまうこともありますか?

Mika Pikazo 自分の絵を見た時、「なんかもういいな」って飽きてしまうこともあります。でもスランプになっている時は、絵につまづいているというだけではなく、私生活ふくめ複合的な要因があってのこともあります。そうなったらもがくしかない。

この辛い気持ちや悲しい気持ちもいつか表現に活かそうと笑って思い直して、つまづきながらも目の前のことをやるしかないですね。どうなったって生きる、毎日を費やすしかないですから

時に、自分は人の予想を裏切りたいというか、次に何をやるかが分からないようにしたいんです。この人は次になにをするんだろうって楽しみに思っていてもらいたい。それは自分自身が作品を届けるエンターテインメントの役割があると思っているからです。

──輝夜月さんにインタビューした際に「闇がある方が光は輝くって言葉を大事にしてる」というお話をうかがったんですが、Mikaさんのお話からも、同じように辛いことがあっても酸いも甘いもかみわけて楽しくやろうぜ的なメンタリティを勝手に感じました。

Mika Pikazo 凄い、月ちゃんもそうだったんですね……そう言われてみると、そうかもしれません。

自分が辛い状況だと、周りが幸せそうに見えて、輝いてる人が輝いて見えて、それなのに自分"だけ"がどうしてこんなに、って思うときもありますよね。そして人間は不平等だから、本当に自分だけが辛い時期というのも存在する。でも、羨ましくみえる人も、どれだけ陽気にしてる人でも、辛いものは辛くて、見えない歴史がある。

自分は悲しみや苦悩が続いてどん底までいくとき、ある一線を越えると一周回ってポジティブになる、みたいなことがあると思うんです。

どん底だからこそやるしかないというか、できることが限られているからこそ、目の前のやるべきことを頑張るしかないと思ってパワーが湧いてくることがあって。私も月ちゃんももしかしたらそういうタイプなのかもしれません。

自分は、自分の過去の話とか、すごく仲の良い人、この人にだったら言ってもいいって人にしか話さなくて。その打ち明けた相手にも、「聞く分には面白いけど壮絶だね」って言われるような、決して穏やかな人生ではなかったというか。そういう経験がプラスに働くこともあれば、自分自身を今も苦しめるコンプレックスにもなっているんです。

でもだからこそ、「創作を通して誰かに元気になってもらいたい」という気持ちが第一にあります。生きていくことが辛いって思ったときに助けてくれたのは誰かがつくった音楽、アート、お話だったから。自分がどういう存在かを抜きにして無条件に背中を押してくれるのが創作だから。助けられたからこそ、それをするのも自分の仕事だと思っています。

自分自身が創作に助けられてきたから、私がつくるもので、いま辛い人や浮かばれない人の心が明るくなってくれたら、それが本当に嬉しい。だからどれだけ悩むことや苦しいことがあっても、それが作品をつくっていく糧になっているんじゃないかと。私が創作をする意味を見失うことはありません

都会では感じられない景色を 「Mika Pikazo展」全国ツアーに寄せて

──ありがとうございます。最後に、現在開催中の個展「Mika Pikazo展」についてうかがわせてください。

渋谷PARCOで開催されたMika Pikazo展のキービジュアル

2019年は、渋谷のSR6で個展も開催されました。見に来ているお客さんも幅広く、イラストレーターさんの個展として異質な印象でした。

Mika Pikazo 海外からきてくださった方もいて、若い人というか結構元気な人が多かったですね。夏だったので暑くて、渋谷には人があふれかえってて、会場の外も中もカオスだった思い出があります。

通りに面していたので外からどう見えるか考えて配置にこだわりましたし、渋谷という最先端の風景に溶け込みながらもちゃんと目立てていたのでよかったです。

──遂に、展覧会の全国ツアーが始まりました。

2月28日より開催中の名古屋での「Mika Pikazo展」の一部

Mika Pikazo 母親が海外に行くことが好きなので、すごーく昔にフランスやニューヨークに旅行にいった思い出はあるんですが、国内だと修学旅行での京都や広島、部活での新潟くらいしか行ったことがなくて、それも学業的な見学の部分が多かったので、そもそもあまり景色の思い出がなかったんです。

なので今回は自分自身が日本のいろんな場所を見て、生まれ育った日本という国を知る機会なんだと思いました。仙台でも感動的な景色に出会えましたし、これからいく場所にもどんな景色が広がってるんだろうと思うと楽しみです。 ──渋谷の個展と比べ、こだわったポイントはありますか?

Mika Pikazo 渋谷での個展は「自分を見せる」がテーマでした。一人の人間として此処に立っているよ、という。今回は日本に触れるというか、各地の文化に触れることがテーマになっています。アーティストやクリエイターに限らず、日本各地のいろんなところにいろんな人が住んでいて、それぞれの良さ、見てきた情景の記憶を持っている。

そんなイメージを、メインビジュアルで表現しようとしました。

Mika Pikazo展 2020 全国ツアーのキービジュアル

Mika Pikazo 東京にいると最先端とか、流行に触れることはできますが、それだけでは見えなくなるものがあると思うんです。インターネットを介するだけでは手に入らないその地方にある人やものの良さ、その景色をみて感じる心の叫びに寄り添いたい。

自分自身が10代だった頃を思い出しつつ、自分がそれぞれの場所で生きていたら何を考えて過ごしていただろうとイメージしながら、10代の頃に描きたかった「そういうもの」を正直にイラストで描いています。同じ思いで見にきてくれる人も多いのではないでしょうか。

──同時に、初音ミクと輝夜月のコラボイラストも公開されましたね。

『輝夜 月 LIVE@ZeppVR2』『初音ミクVR』のPSPlus会員向けディスカウントキャンペーン記念で、Mika Pikazoさんのコラボイラスト

Mika Pikazo 自分にとって「初音ミク」というものは、10代のときに多大に影響されたものとして記憶に残っていますし、今でも大好きな存在なので、「輝夜月」とのコラボイラストは本当に嬉しかったです。どちらもまた別の形で活躍している存在なので、そういうキャラクターを一緒に描かせていただくということは冥利に尽きます。

明るく楽しい、異なる色構成からなる二人が画面の前の誰かに向かって微笑みかけてほしいという思いで描きました。ただただ、描けて良かった、と思うばかりです。

──コラボイラストは、2月28日(金)から開催される名古屋PARCOでパネル展示もされるそうです。すでにここまで仙台、札幌で展覧会が行われましたが、これから展覧会を見に行くファンの方々へ一言お願いします。

Mika Pikazo 今しか見れない展示物もありますし、渋谷の個展をご覧いただいた方にも新しい発見をしてもらえると思います。

渋谷のような人が多い流行の発信地で見るのと、落ち着いて見て回るのでは印象が変わることもあると思うので、ぜひ足を運んでみてください!

インタビュー後編はKAI-YOU Premiumで

Mika Pikazoさんと、VTuber

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Mika Pikazo // ミカ ピカゾ

イラストレーター

2017年に誕生したバーチャルYouTuber「輝夜月」(2020年1月現在チャンネル登録者数100万)のキャラクターデザインをはじめ、2018年8月に開催された世界初のVRライブ「輝夜月LIVE@Zepp VR」のアートディレクション、同年10月に展開された輝夜月のオリジナルアパレルブランド”Beyond The Moon”のロゴデザイン・グッズデザイン、また同じくバーチャルYouTuberの「ピンキーポップヘップバーン」も手がける。
「Fate/Grand Order」のサーヴァントキャラクター「清少納言」のデザインや、VOCALOID「初音ミク」の総合的なライブ・展示イベントである「マジカルミライ2018」のメインビジュアル・衣装デザインなど幅広いジャンル、数々の作品でアートワークを担当。自身で原作・原案を手がけるプロジェクト「RE:BEL ROBOTICA | レベルロボチカ」など、多岐に活動している。また2019年8月には初の展示会「MikaPikaZo」を渋谷PARCO SR6にて10日間開催、来場者数1万人以上を突破する。

Twitter: https://twitter.com/MikaPikaZo
HP: https://www.mikapikazo.com

Mika Pikazo

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イベント情報

Mika Pikazo展2020 全国ツアー

Mika Pikazo展2020 全国ツアー -名古屋-
場所
名古屋PARCO 西館8F特設会場
開催日時
2月28日(金)~3月8日(日)10:00-21:00
Mika Pikazo展2020 全国ツアー -福岡-
場所
福岡PARCO 新館6F特設会場
開催日時
3月13日(金)~3月22日(日)10:00-20:30
Mika Pikazo展2020 全国ツアー -広島-
場所
広島PARCO 9F特設会場
開催日時
3月27日(金)~4月5日(日)10:00-20:30

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